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23話 メイド生活2日目の朝です

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「お嬢さまぁ! 何やっているのですか!!」

早朝の屋敷の庭でメイの声が響き渡った。

「何って、体操よ。毎朝これをすると目も覚めるし体にいいのよ。あなたもやってみるといいわ。」

「それよりもそのお姿はなんですか! あまりにもはしたないですわ!」

「ああ!これ? 動きやすい服装なのだから別にはしたなくはないわよ。夜にアレクの看病しながら作ったの。」

昨日、メイド服を買った店で伸縮性があって触り心地のいい生地も一緒に買っていたのだ。夜、アレクの氷枕を代えたりとか様子を見にいったりしていたのでその間にせっせと上下の服を作った。

「はぁ、なんだかお嬢様は家出をなされてから別人のようにお変わりになりましたわ。」

「そ、そう? まあ、あれね。心機一転、新しい自分に生まれ変わりたいと思ったからじゃないかしら。」

前世の話はまだメイには話していないのでそれとなく誤魔化した。

「はあ、そのようなものでございましょうか。」

メイは、納得したようなそうでないような顔で頷いていた。
それからも私が素振りをしだすとまた驚かれるといったやり取りを繰り広げた。



朝の鍛練を終えた後、朝食を作ってアレクの部屋へと向かう。

「アレク様、入りますね。」

ドアをノックして中へ入ると丁度目が覚めたらしく気だるげな目で私を見た。

「具合はどうですか? お熱は…… 下がっているようですね。」

おでこに手を乗せると昨夜よりも熱が下がっているようだ。

「おまえ、夜中も来ていただろう? ちゃんと寝たのか?」

夜中に様子を見に来たときは目を閉じていたのでてっきり寝ていると思っていたのだけど、どうやら気づいていたらしい。

「大丈夫ですよ。ちょっとした作業の合間に来て氷枕を代えていただけですから。それに私は若いので完徹かんてつなんてちょろいですわ。」

「かんてつ? ちょろい? お前のその言葉は前世の名残か何かなのか? まあ、いい。今日は昨日よりも良くなっているからお前はすぐに休め。いいな!?」

「はい、わかりました。それでは、朝食をお召し上がりになられたら昼食までは休ませていただきますね。」

「はあ~、本当にお前は働くのが好きなのだな。」

「もちろんですわ! 朝食をお持ちしましたのでお召し上がりください。」

トレイにのせた朝食を差し出す。

「これは…。どれも見たことのないものだが、なんの料理だ?」

「えっと、朝ですので消化にいいものと思いまして、お野菜のたっぷり入った雑炊と卵焼き、白菜の浅漬けです。お口に合うかわかりませんけど、お召し上がり頂けませんか?」

「いや、どれも美味しそうだな。この不思議な形の卵焼きは初めて見たぞ。」

「ああ、これは厚焼き玉子です。私の十八番おはこなのです。ではまずこれからお食べになります? はい、あーーーーん。」

「っ!! っとまった! 今日は俺一人でも食えるぞ。スプーンで食べられるものばかりだし利き手じゃなくても使える!」

フォークで卵焼きを食べやすい大きさに切ってアレクの口元へと持っていったのに阻まれた。

「チッ。」

「は? おまえ、今舌打ちしなかったか!?」

昨日、ご飯をアレクに食べさせているときに給餌しているみたいで母性本能がくすぐられてしまったのであわよくば今日もやってみたかったのに!

「気のせいですわ。では、トレイは私がそのまま持ちますのでゆっくりお召し上がりください。雑炊は熱いのでお気をつけてください。」

「お前、なんか怒ってないか? まあ、いいか。ではいただく。」

私から奪い取った卵焼きを口に入れた。

「……なんだ、このふわふわっ、そして少し甘くて優しい味!! こんなに美味しい卵焼きは初めてだ!」

目を輝かせて残りの卵焼きもぺろりと食べた。

「この『ゾウスイ』というのも美味しい。リゾットのようだがあっさりとしていて食べやすいぞ、この『アサヅケ』もなかなか…。お前は、前世はシェフでもしていたのか?」

「いえ、シェフではなかったですけどこれくらいは作れますよ。お口に合ったようでよかったですわ。」

美味いと連呼しながらぺろりと全部平らげてしまった。満足いただけたようだ。こうしておいしそうに食べてくれるのを見ると作ったかいがあったと私も嬉しい。



「あ、そういえば。お仕事はどうなされますか? お休みのご連絡をしなければならないのでは?」

アレクの今の状態で騎士団の勤務は無理だろう。休むのなら連絡をしないといけないのではないだろうか。

「それなのだが、お前のところの執事に自分にすべて任せてほしいと言われたのだ。明日、また来ると言っていた。」

「そうでしたの、わかりましたわ。」

セバスチャンのことだから何か考えがあっての事だろう。

それから、アレクに朝食後の薬を飲んでもらっていたら部屋をノックする音が聞こえた。
入室の許可を出すとメイが入ってきた。



「お嬢様…… 旦那様がお見えになっています。」


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