殿下、今日こそは婚約破棄してくださいますよね!?

逢坂莉未

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プロローグ 『異世界転生キタ━━━(゚∀゚)━━━!!』

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「ごめんなさい…。神矢かみや君はいい人だと思うけど、付き合うとかそういう事は考えられなくて……」

「で~す~よ~ね~。いやさ~、梨花ちゃんとは話が会うからワンチャンあるかな~と思っただけ! 気にしなくていいよ!」

申し訳なさそうに言う女の子に落ち込んだ顔を見せるわけにはいかないのでわざとおどけて見せた。

「ふふふっ、神矢君は話してて面白いし楽しいけど、私、好きな人いるから……」

「それって、もしかして、琉生るいだったりする?」

琉生は俺の幼馴染でイケメン、成績優秀、スポーツ万能のうちの学校でナンバーワンの人気者だ。
そして俺は今更ながらに気づいた。俺と琉生が話している時にいつも彼女が会話に加わってきたことに。彼女はいつも最初に俺に話しかけてくるからてっきり俺に気があると思っていたがどうやらそうじゃなかったらしい。

「…うん。1年の時からずっと琉生君の事が好きなの」

「そっか~。それじゃあ仕方がないなあ」

絶賛、ハートブレイク中の俺は早くこの場から逃げ出したかった。
これで何度目だっけ、振られるの。そしていつも返ってくる答えは今と同じで女の子達はもれなく琉生の事が好きだという。

正直、泣きたい。

「あの…、こんなこと頼むの駄目だと思うけど、私、琉生君に告白したいと思うの。だから、琉生君と二人っきりになれるように協力してもらえないかな?」

「えっと、それは‥‥」

おいおい、今、振ったばかりの男に橋渡し役を頼むのか? 普通に考えてないだろ!!

「あ…、ごめん! 私ってバカだよね。神矢君にこんな事頼むなんて。でも、頼れるの神矢君しかいなくて……」

全力で断りたいが目に涙を浮かべながら俺を見上げる彼女に拒否することは俺にはできない!

「わ、わかったよ! 泣くな。俺から琉生に話しておく」

「ホント!? 神矢君、ありがとー!! じゃあ、明日の放課後に校舎裏で待っているって伝えてね!」

さっきまで泣きそうだったのが嘘のように笑顔を見せた梨花ちゃんは『バイバイ』と手を振って走って行った。

「くそっ、やっぱり梨花ちゃんはかわいいな!」


これも惚れた弱みという奴だ。仕方がない。
俺は携帯を取り出して琉生に電話をかけながら歩き出した。

『ほいほーい』

「俺だけど」

『オレオレ詐欺なら間に合ってまーす』

「おまえなあー、ディスプレイみたらわかるだろ! れいだよ」

『んで、どうだった? 振られたか?』

「なんで、振られた前提なんだよ!! 振られたけどさ!!!」

『やっぱりなあ~、俺は止めとけって言っただろう?』

「仕方ないだろ、好きなっちまったもん。…でさ、明日の放課後、お前暇か?」

『お、何? 久しぶりに俺んちに遊びに来るか?』

「いや…、梨花ちゃんがお前に話があるんだってさ」

『………はぁ~、おまえってバカだろ?』

心底、呆れたという雰囲気が電話越しでも伝わってくる。

「し、仕方ないだろっ。あんなかわいい子からお願いされたら断れないだろ」

横断歩道が青に点滅したの立ち止まる。

『おまえなあ……』

何やら言いたげな様子だ。


その時だった。

何か大きな物体がすごい勢いで近づいているのを目の端で気づいてその方向へ視線を向ける。

「あ…」

それが車だと気づいた瞬間、俺の視界は暗転した。







神矢かみやれいさ~ん、起きてください~」

妙に間延びした女の声が聞こえる。

「起きない場合は、強制的に天国行きになりますよ~」

「ん……」

俺が目を開けると真っ白い空間に白い衣装を着た女の人がいた。

「ここは…。あんたは誰?」

「えーっとですね。あなたはつい先ほど事故に合いまして、死にました」

「死んだ?」

「はい! そして私は女神です」

「めがみ…」

「そうです! 若い魂で亡くなった方には二つの選択が用意されています。天国に行ってもう一度、この世界で生まれ直すか。その場合は順番待ちになりますので、そうですねえ~、今からだと50年後になりますね!」

「50ねん…」

「しっかーし!! 今なら異世界に転生することもできます!3つまでならご要望に応えることもできますよ!どうします?」

「い…」

「い?」

「異世界転生キタ━━━(゚∀゚)━━━!!」


非モテの童貞の俺に女神様は微笑んでくださったのだ!!
これで勇者か冒険者になって俺TUEEEEEで女の子達とウハウハのハーレムを作ってやる!!

「急に元気になりましたね」

「女神様、要望は3つですよね!?」

「はい、そうですよ~」

「じゃあ、まずは顔は美形でお願いします!!」

「美形ですね」

女神はなにやら石板の様なものに書き始めた。

「あとは、能力はチートレベルに強くなりたいです」

「能力はチートっと」

「最後、これが一番重要なんですけど、異性にモテまくりたいですっ!!」

「モテたいっと。いやあ~、すがすがしいほどに俗物っぽいですね~」

「いやあ、非モテな人生を歩むとこうなりますって」

「ふむふむ、ああ!ちょうどいい体があります。そちらに転生していただきましょう」

「体って…、すでに生きている人間なんですか?その人の魂はどうなるんです?」

「あ~、そこんところは気にしないでください。また別の人生を歩んでもらいます。それに、あの魂はあまりよくないので清めないといけないですし……」

女神様が大丈夫っていうならいいんだけど、なんか気になるな。

「まあ、少し苦労すると思いますがそのための特典をお付けしているので頑張ってください! では、そろそろ新しい体に転生させますね」

そう言うと、女神様は俺の目の前に手をかざした。同時に俺の意識は暗闇に落ちて行った。







「レイラ! 目を覚ましておくれ」

誰かが俺の手を握り締めて必死に呼びかけている。
重たい瞼を開けると金髪のハンサムなおじさんが俺を見ていきなり泣き出した。

「お、とうさま…」

自然と口から言葉がでた。なるほどこれが転生した俺の親父になるのか。

「よかった、よかったっ。目を覚ましてくれて…」

「レイラお嬢様がお目覚めになられて、嬉しゅうございますっ!!」

メイドの格好をした女の人も泣きながら喜んでくれている。


ん?

今、なんか変な事言わなかったか?

おもむろに起き上がる俺を慌てて親父らしき人とメイドさんが止める。

「レイラ、急に起き上がるんじゃない!」

「そうですわ、お嬢様は病み上がりなのですから!!」

今、確かにお嬢様って言ったよな!?

「あの、鏡見せてもらえますか?」

「どうしたんだい?急に」

「お願いしますっ!!」

怪訝な顔をする二人に俺は強く言った。メイドさんがおずおずと俺に手鏡を渡した。


恐る恐る鏡を覗くと、そこにはどう見ても金髪の美少女が映っていた。


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