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黒の帳 『一つ目の帳』
放課後
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皆と別れた後、私は思い出した。
そう、お昼ご飯が遅れた理由だ。でも気づいた時にはもうC組の教室の前まで来ていた。
私の素顔を知るあの人たちに会ったら、離してもらえないだろう。
…誰も居ませんようにっ!
願いながら、教室の後ろの扉を開ける。
五人居たけど、不良さん達じゃない。午前中に見かけた、大人しそうな人達だ。皆眼鏡をかけている。時間があれば話したかったけど、今は昇降口に皆を待たせている。教室で遠藤君と菊池君が騒いだ時、寄ってきたのは不良さん達だけだったから、眼鏡さん達は私の素顔の騒ぎを知らない。でも、今は私の方を見ることも無い。彼らは輪になって一つのスマホを覗き込んでいる。たまにフヒフヒと笑い声が上がる。楽しそうだ、動画でも見てるのかな。
それにしても、不良さん達がどこかに行っていてよかった。明日も大変だけど、明日は龍牙の傍に張り付いていれば大丈夫だろう。
通学鞄を手に取り、教室の前の扉に向かう。教室の後ろの方からは見えなかった教壇が視界に入る。
物凄くびっくりした。
青髪の人が倒れている。天野君だ。四限目で光彦に倒された体勢と変わっていない。あの時からずっとこのままだったんだろうか。
信じられなくて、眼鏡さん達の方を見る。眼鏡さん達はまだスマホに夢中だ。見て見ぬふりなのかもしれない。不良さんは逆ギレすることもあるから、関わりたくないんだろう。
皆、ほったらかしにしていたんだな。不良さん達でなくとも、見知らぬ人を助けるような人は少数派だ。天野君は誰にも助けられずここでずっと倒れていた、ということだろう。先生は…多分自習で来なかったんだろうな。
この人は最後に学校に来ていたし、まだ友達が出来ていないのかもしれない。一匹狼とかいう類の不良かもしれないけど、人と関わらずに生きられる人は居ない。人間は社会的動物なんだから。アリストテレスさんも言ってました、…いや、意味は違うかもしれない。
私は天野君を放っておけなかった。
光彦は一撃で沈めたけど、倒れた時に足を捻っていたら?一人で帰れないかもしれない。
「…天野君。天野くーん」
とんとんと肩を叩く。全く起きる気がしない。
「あーまーのーくん。起きてー、大丈夫ー?」
何度も名前を呼ぶ。そういえば下の名前知らないなあ、教えてくれるかな。ちょっと重いけど、寝返りを打つようにして天野君をひっくり返し、私の膝の上に頭を移動させる。頬に教壇の板の痕が残っていて、ちょっと面白い。思わず吹き出してしまう。
「ふふっ……、可愛い」
「…ぅ、ああ…?」
「あ、気がついた?天野君ずっと倒れてたんだよ。一人で帰れそうかな、足とか大丈夫?」
「………ぇ…?…おま……いや、あの、貴方…って…」
天野君は起きたばかりでぼんやりしていたけど、私と目が合った途端、表情を顔にはっきりと表した。その感情は、驚愕。どうしてそんなに、驚いているの?
「早くー!遅せぇぞー!!」
「あっ、待たせてたんだった!ごめん天野君、お大事にね。それじゃあっ!」
「ちょっ、待って、あのっ…」
鞄を取って帰るには時間がかかり過ぎだと判断したんだろう。廊下で龍牙が私を呼んでいる。
天野君はまだ体が本調子でないみたいだ。膝の上に乗せていた頭を、ぶつけないようにサッと下ろし、その手で鞄を持って駆け出す。後ろから呼び止める声がしたけど、応える訳にはいかない。絶対殴られるから。本来、光彦が居なかったら私はボコボコにされていたんだ。
廊下に居た龍牙と合流し、急ぎ足で昇降口に向かう。追いつかれたら大変だ。靴を履き替えながら後ろを振り向いたけど、そこには誰も居なかった。…やはり、悪いことをしてしまったかもしれない。私を呼び止めていたのに、追いかけてこないということは、走れるような状態じゃないんだろう。自分の保身で走ってきてしまったけど、天野君の怪我の具合を診るべきだった。
明日、会えるかなあ。会えたら、謝ろう。
皆と合流し、外に出る。光彦に遅いと怒られ、一瞬あの暗い瞳で睨まれた。
今日はずっと晴れてるなあ。外のお日様がいつもより眩しい。
「…なあ、鈴」
「何?」
「お前、それで行ったの?」
顔を指さされる。何か付いてるのかな。
「………あ!!!!」
髪留めのピン、外してなかった。
どうりで明るいわけだ。
幸い周りの人が気づいたり、騒いだりする様子はない。俯き、急いでピンを外す。
ということは、天野君は、美人だ美人だと評される私の素顔を見たわけで。
それならさっきの驚愕の表情も納得がいく。だって私の顔を見た人は大体そんな顔をする。大変だ。ややこしいことになるかもしれない。
悩む私を紅陵さんが心配そうに窺ってきたので、ピンを返しがてら一連の出来事を説明した。
光彦が歩き出し、私達もそれに着いて行く。
「フフッ、クロちゃん優しすぎ…」
「…鈴ぅ…お前やっちまったな」
「うん。でも、その…放っておけなくて」
「大丈夫。お前なら当然の流れだ。ただ明日が怖いな、阿賀野が突っかかってくるかもしれない。阿賀野は俺より強いし、アイツ倒せるのは…」
龍牙、阿賀野じゃなくて天野君。
龍牙が光彦にちら、と視線を向ける。光彦は何を言われるか察したらしく、呆れたようにふんと鼻を鳴らした。
「俺は頭がどれだけ強いか試しただけだからな。基本不干渉でいかせてもらう」
「じゃあ俺だな!いやあ早速恩を売れるとは…、お礼に何してもらおっかなー」
にまにま紅陵さんが笑う。猫のように細められた瞳は、私を捉えている。その視線が示す意味に感づき、一気に顔が熱くなる。
前髪で顔が見えないはずなのに、私の変化に目敏く気づいた紅陵さんが、素早く私の隣に付いて顔を覗き込んでくる。急に縮まった距離に、また顔の熱が上がる。
「…あれ、もしかしてクロちゃん、変な想像したァ?クロちゃん、俺とそういうことスる想像しちゃっ」
「紅陵先輩が出る幕じゃあないっすよ!裏番が一年の教室来たら大騒ぎになりますし、大袈裟です!!」
紅陵さんの手が私の頬に触れるその瞬間、龍牙が大声を上げながら私と紅陵さんの間に割って入ってくれた。危なかった…
「じゃあどうすんの。片桐ちゃん弱いんでしょ?」
「いざとなったら俺が代わりにボコられますよ!」
「ダメ!!」「駄目だ」
えっへんというように胸に手を当てる龍牙。龍牙には怪我をして欲しくない。龍牙が身代わりだなんて却下だ。
私達のやりとりを見て、紅陵さんが何かを思いついたらしく、にやにや笑いながら光彦を手招きした。紅陵さんは光彦の肩に腕を回し、何かコソコソ喋っている。
「紅陵先輩!脅すのは反則っすよー?」
「んなことしてねーから安心しな。んでさ、栗田は…」
龍牙が一声かけるが、まだコソコソ話している。光彦が百面相をしているな。その表情は、赤くなったり、青ざめたり、かと思えば怒ったりと様々だ。龍牙に教えたくて振り向くと、龍牙も気づいていたらしく、二人でクスクス笑った。
「…なあ鈴」
「なあに?」
「クリミツと、お前。何かあった?」
「いやあ何も?どうしたの、急に」
驚いた。急にそんな話題を振ってくるとは。
咄嗟に返事を返したが、間は短すぎなかっただろうか、声は震えていなかっただろうか。
こういう時だけはこの前髪がありがたい。
冷や汗と動悸に襲われる。
冷静になれ、平静を保て。
中学のイジメがバレたらどうなる?
親友の光彦が私を虐めていたと知れば、優しい彼は何を思う?
想像に難くない。
絶対に、バレてはいけない。
「いやさ、何か距離あるし。…クリミツがいつも以上にお前に素っ気ない。やっぱ思春期迎えて変わっちまった?」
「うん、そんなとこかな。友達と仲良しこよしなんて恥ずかしい、とか思ってる感じだね」
本当は、私にも分からない。
光彦が何故変わってしまったかなんて光彦本人にしか分からない。もしかしたら本人にも分からないのかも。
それくらいの理由じゃなきゃ、納得できない。だって、小学生の時はあんなに仲が良かったんだから。純粋に楽しかった三人での思い出が頭を過り、少しだけ、切なくなった。
そう、お昼ご飯が遅れた理由だ。でも気づいた時にはもうC組の教室の前まで来ていた。
私の素顔を知るあの人たちに会ったら、離してもらえないだろう。
…誰も居ませんようにっ!
願いながら、教室の後ろの扉を開ける。
五人居たけど、不良さん達じゃない。午前中に見かけた、大人しそうな人達だ。皆眼鏡をかけている。時間があれば話したかったけど、今は昇降口に皆を待たせている。教室で遠藤君と菊池君が騒いだ時、寄ってきたのは不良さん達だけだったから、眼鏡さん達は私の素顔の騒ぎを知らない。でも、今は私の方を見ることも無い。彼らは輪になって一つのスマホを覗き込んでいる。たまにフヒフヒと笑い声が上がる。楽しそうだ、動画でも見てるのかな。
それにしても、不良さん達がどこかに行っていてよかった。明日も大変だけど、明日は龍牙の傍に張り付いていれば大丈夫だろう。
通学鞄を手に取り、教室の前の扉に向かう。教室の後ろの方からは見えなかった教壇が視界に入る。
物凄くびっくりした。
青髪の人が倒れている。天野君だ。四限目で光彦に倒された体勢と変わっていない。あの時からずっとこのままだったんだろうか。
信じられなくて、眼鏡さん達の方を見る。眼鏡さん達はまだスマホに夢中だ。見て見ぬふりなのかもしれない。不良さんは逆ギレすることもあるから、関わりたくないんだろう。
皆、ほったらかしにしていたんだな。不良さん達でなくとも、見知らぬ人を助けるような人は少数派だ。天野君は誰にも助けられずここでずっと倒れていた、ということだろう。先生は…多分自習で来なかったんだろうな。
この人は最後に学校に来ていたし、まだ友達が出来ていないのかもしれない。一匹狼とかいう類の不良かもしれないけど、人と関わらずに生きられる人は居ない。人間は社会的動物なんだから。アリストテレスさんも言ってました、…いや、意味は違うかもしれない。
私は天野君を放っておけなかった。
光彦は一撃で沈めたけど、倒れた時に足を捻っていたら?一人で帰れないかもしれない。
「…天野君。天野くーん」
とんとんと肩を叩く。全く起きる気がしない。
「あーまーのーくん。起きてー、大丈夫ー?」
何度も名前を呼ぶ。そういえば下の名前知らないなあ、教えてくれるかな。ちょっと重いけど、寝返りを打つようにして天野君をひっくり返し、私の膝の上に頭を移動させる。頬に教壇の板の痕が残っていて、ちょっと面白い。思わず吹き出してしまう。
「ふふっ……、可愛い」
「…ぅ、ああ…?」
「あ、気がついた?天野君ずっと倒れてたんだよ。一人で帰れそうかな、足とか大丈夫?」
「………ぇ…?…おま……いや、あの、貴方…って…」
天野君は起きたばかりでぼんやりしていたけど、私と目が合った途端、表情を顔にはっきりと表した。その感情は、驚愕。どうしてそんなに、驚いているの?
「早くー!遅せぇぞー!!」
「あっ、待たせてたんだった!ごめん天野君、お大事にね。それじゃあっ!」
「ちょっ、待って、あのっ…」
鞄を取って帰るには時間がかかり過ぎだと判断したんだろう。廊下で龍牙が私を呼んでいる。
天野君はまだ体が本調子でないみたいだ。膝の上に乗せていた頭を、ぶつけないようにサッと下ろし、その手で鞄を持って駆け出す。後ろから呼び止める声がしたけど、応える訳にはいかない。絶対殴られるから。本来、光彦が居なかったら私はボコボコにされていたんだ。
廊下に居た龍牙と合流し、急ぎ足で昇降口に向かう。追いつかれたら大変だ。靴を履き替えながら後ろを振り向いたけど、そこには誰も居なかった。…やはり、悪いことをしてしまったかもしれない。私を呼び止めていたのに、追いかけてこないということは、走れるような状態じゃないんだろう。自分の保身で走ってきてしまったけど、天野君の怪我の具合を診るべきだった。
明日、会えるかなあ。会えたら、謝ろう。
皆と合流し、外に出る。光彦に遅いと怒られ、一瞬あの暗い瞳で睨まれた。
今日はずっと晴れてるなあ。外のお日様がいつもより眩しい。
「…なあ、鈴」
「何?」
「お前、それで行ったの?」
顔を指さされる。何か付いてるのかな。
「………あ!!!!」
髪留めのピン、外してなかった。
どうりで明るいわけだ。
幸い周りの人が気づいたり、騒いだりする様子はない。俯き、急いでピンを外す。
ということは、天野君は、美人だ美人だと評される私の素顔を見たわけで。
それならさっきの驚愕の表情も納得がいく。だって私の顔を見た人は大体そんな顔をする。大変だ。ややこしいことになるかもしれない。
悩む私を紅陵さんが心配そうに窺ってきたので、ピンを返しがてら一連の出来事を説明した。
光彦が歩き出し、私達もそれに着いて行く。
「フフッ、クロちゃん優しすぎ…」
「…鈴ぅ…お前やっちまったな」
「うん。でも、その…放っておけなくて」
「大丈夫。お前なら当然の流れだ。ただ明日が怖いな、阿賀野が突っかかってくるかもしれない。阿賀野は俺より強いし、アイツ倒せるのは…」
龍牙、阿賀野じゃなくて天野君。
龍牙が光彦にちら、と視線を向ける。光彦は何を言われるか察したらしく、呆れたようにふんと鼻を鳴らした。
「俺は頭がどれだけ強いか試しただけだからな。基本不干渉でいかせてもらう」
「じゃあ俺だな!いやあ早速恩を売れるとは…、お礼に何してもらおっかなー」
にまにま紅陵さんが笑う。猫のように細められた瞳は、私を捉えている。その視線が示す意味に感づき、一気に顔が熱くなる。
前髪で顔が見えないはずなのに、私の変化に目敏く気づいた紅陵さんが、素早く私の隣に付いて顔を覗き込んでくる。急に縮まった距離に、また顔の熱が上がる。
「…あれ、もしかしてクロちゃん、変な想像したァ?クロちゃん、俺とそういうことスる想像しちゃっ」
「紅陵先輩が出る幕じゃあないっすよ!裏番が一年の教室来たら大騒ぎになりますし、大袈裟です!!」
紅陵さんの手が私の頬に触れるその瞬間、龍牙が大声を上げながら私と紅陵さんの間に割って入ってくれた。危なかった…
「じゃあどうすんの。片桐ちゃん弱いんでしょ?」
「いざとなったら俺が代わりにボコられますよ!」
「ダメ!!」「駄目だ」
えっへんというように胸に手を当てる龍牙。龍牙には怪我をして欲しくない。龍牙が身代わりだなんて却下だ。
私達のやりとりを見て、紅陵さんが何かを思いついたらしく、にやにや笑いながら光彦を手招きした。紅陵さんは光彦の肩に腕を回し、何かコソコソ喋っている。
「紅陵先輩!脅すのは反則っすよー?」
「んなことしてねーから安心しな。んでさ、栗田は…」
龍牙が一声かけるが、まだコソコソ話している。光彦が百面相をしているな。その表情は、赤くなったり、青ざめたり、かと思えば怒ったりと様々だ。龍牙に教えたくて振り向くと、龍牙も気づいていたらしく、二人でクスクス笑った。
「…なあ鈴」
「なあに?」
「クリミツと、お前。何かあった?」
「いやあ何も?どうしたの、急に」
驚いた。急にそんな話題を振ってくるとは。
咄嗟に返事を返したが、間は短すぎなかっただろうか、声は震えていなかっただろうか。
こういう時だけはこの前髪がありがたい。
冷や汗と動悸に襲われる。
冷静になれ、平静を保て。
中学のイジメがバレたらどうなる?
親友の光彦が私を虐めていたと知れば、優しい彼は何を思う?
想像に難くない。
絶対に、バレてはいけない。
「いやさ、何か距離あるし。…クリミツがいつも以上にお前に素っ気ない。やっぱ思春期迎えて変わっちまった?」
「うん、そんなとこかな。友達と仲良しこよしなんて恥ずかしい、とか思ってる感じだね」
本当は、私にも分からない。
光彦が何故変わってしまったかなんて光彦本人にしか分からない。もしかしたら本人にも分からないのかも。
それくらいの理由じゃなきゃ、納得できない。だって、小学生の時はあんなに仲が良かったんだから。純粋に楽しかった三人での思い出が頭を過り、少しだけ、切なくなった。
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