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黒の帳 『一つ目の帳』
裏番には見えない
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「ちょいちょい紅陵先輩、近いすよ」
「クロちゃんが嫌がってないからいいの」
「龍牙、これ美味いぞ」
左右から色々な会話が聞こえてくる。光彦に至っては、龍牙が反応しないせいで壁打ちのような会話だ。
左からペッキーを差し出され、右からはカツサンドが出てくる。香りで頭が混乱するから止めて。
左を見れば紅陵さんと目が合い、にこっと笑いかけてくる。その距離と綺麗さに先程の出来事を思い出し、恥ずかしさで顔を背ける。
右を見れば龍牙がこちらを見ていて、無邪気な笑顔でカツサンドを差し出してくる。龍牙が肉好きなのは変わってないな。
龍牙の笑顔が見えているのかどうかは分からないが、龍牙の向こう側から物凄く怖い顔で光彦が睨みつけてくる。その目に息が止まりそうになった。
右は見られない。でも恥ずかしいので左を見るわけにもいかず、私は俯いてお弁当を食べる。そんな私を見た二人は渋々、手にした物をそれぞれ自分の口に入れていた。
結局あの後、気が削がれた龍牙は紅陵さんとの喧嘩を取り止めてくれた。紅陵さんもやる気がなかったみたいで、あの不穏な空気はあっさり消えた。
緩んだ空気を感じて、遠藤君や菊池君、クラスメイト達が押し寄せてきたけど、紅陵さんが一睨みすると、蜘蛛の子を散らすように散らばっていった。紅陵さんが凄い人なのか、皆が過剰に紅陵さんを怖がっているのか、どちらなんだろう。裏番という立場からして、前者の可能性が高そうだな。
そして、お昼は屋上で食べないかという紅陵さんのお誘いを、私は喜んで受けた。屋上なんていう良い場所で食べられるなんて。大空の元、街を見下ろして食べる卵焼きは絶対美味しい!
紅陵さんの睨みに耐えた光彦と龍牙の二人は、お昼を終えたにも関わらず、追加で買ってきたパンを手に私達に着いてきてくれた。紅陵さんは不満そうだったけど、私がお願いすると渋々といった様子で許してくれた。
紅陵さんと二人きりは危険だ。屋上は紅陵さんのシマらしいからそうそうの人でない限り、誰も近寄らない。もしかしたら、いや、もしかしなくても、キス以上のことをされる、絶対に。龍牙達に了承を出した時の舌打ちと、腰に手を回したことは忘れません。
結局、紅陵さんはお菓子、龍牙と光彦は購買のパン、私はお弁当という持ち物で屋上に集まった。因みに時間は五限目の真っ最中。私、もしかして不良に片足突っ込んでる…?
龍牙は、紅陵さんが私にキスをしたという事実が許せないみたいで、険悪さは一向に拭えない。紅陵さんは何処吹く風という様子で全く気にしていないけれど、間に挟まれた私のことを考えて欲しい。
私が龍牙から目を離すと、頭上で舌打ちが聞こえる。どちらのものかは分からない。だって左右から聞こえるから。
でも卵焼きは美味しかったので幸せだ。今日の調味料の配分は上手くいったみたい。やっぱり味の元は神の調味料である!何でも美味しくなるな。
嬉しくて笑うと、龍牙と紅陵さんが目敏く反応した。
「ほーら紅陵先輩笑われてますよ?」
「絶対違う。意地はってる片桐が面白くて笑ったんだ。な、クロちゃん」
「…何の話ですか?」
何か話していたんだろうか。全く聞いていなかった。そういえば、自己紹介わしていなかった!
「紅陵さん、私の名前は紫川鈴と言います。お好きな呼び方で呼んで下さい!」
仲良くなるには基本中の基本だというのに、すっかり忘れていた。紅陵さんがクロちゃんクロちゃんと呼ぶから気づけた。危ない危ない。食べ終わった弁当箱を片付けながら話を続ける。
「おっけー、鈴ちゃんか。可愛い名前だ。じゃあよろしく、クロちゃん」
「…何でクロちゃんなんですか?」
「ここ不良校じゃん。染めてるやつ多くてさ。クロちゃんみたいな純粋な黒色はあんまり見ねえんだ。だからクロちゃん」
黒髪が珍しいから、あだ名として最適ということか。確かに金色とか青とか赤とかピンクとか、色々な色を見かけた。先の3色に至っては、あと銀色が揃えば信号機になってしまう。
「クロちゃんさ、何で顔隠してんの?美人だから?」
「…まとめるとそうですね」
怖いおじいちゃんと約束しました、なんて意味が分からないだろう。説明も面倒だ。
「美人は狙われるからね…、お、やっぱり美人」
気づけば視界が明るくなっていた。右上の方で、ぱちんと音がする。
「ピン持ってて良かった~、絶対こっちの方がいいぞ?」
「紅陵先輩、鈴に何して…ぅおお…」
「どうだ、可愛くないか?」
ピンで私の前髪を留めたようだ。大空がよく見える。雲一つない晴天だ!わあ綺麗だ!なんて見上げていたら右肩を小突かれた。
「龍牙?」
「アイツとの約束はいいのかよ」
「雅弘さん怖ぇだろ」
「…雅弘?」
雅弘さんには小学三年生の時に養護施設から引き取られたので、龍牙と光彦は雅弘さんのことを知っている。今日の朝、雅弘さんとの前髪の約束を伝えたら、二人とも苦笑いしていた。
極道の家に引き取られたことを知っても、二人は離れなかった。そんな二人が居たから、私は今でも明るく居られる。本当に、大親友だ。
紅陵さんが知りたそうにしているけど、ここらのシマの大親分だぜ!とは言えないので、濁しておこう。
「雅弘さんは私の保護者なんです。龍牙、ピンは帰る時に外すから大丈夫。紅陵さんありがとうございます、見えやすくなりました!」
「見えやすくするためじゃないんだよな…、いや、ある意味そうか」
チャイムが五限目の終わりを知らせる。わあ、私、完全に不良かもしれない。
「あ、鈴食べ終わったのか。んじゃあ帰るか」
「クロちゃん、明日もここに来いよ。今度はその二人が居ないといいんだけど…?」
「鈴、絶対俺らと食えよ」
「勿論」
「あーれフラれちまった、残念」
紅陵さんが、微塵も残念と思っていない様子でカラカラと笑う。そこには、雅弘さんが言っていた怖さは少しも感じられない。雅弘さんは心配性だなあ。
紅陵さんも帰るみたいで、鞄を手に私達に着いて来た。龍牙も光彦も鞄を持っている。私だけ鞄を教室に置いてきたので、皆には先に昇降口に行ってもらうことにした。
屋上に繋がる部屋に入ったところで、一つ疑問が湧いた。
「あ、そういえばここ扉無いんですね」
「ああ扉?一年の時俺がぶっ飛ばした。鍵壊そうと思ったらさあ、加減間違えたっぽくて。番長も笑ってたしこのままでいいかなーって」
「「「………」」」
「…龍牙ぁ…」
「クリミツって扉ぶっ飛ばせるか?」
「ボロかったら出来るかもしんねえけど、…全力だろ普通。加減の問題か…?」
前言撤回。
紅陵さんは怒らせない方が良さそうだ。
「クロちゃんが嫌がってないからいいの」
「龍牙、これ美味いぞ」
左右から色々な会話が聞こえてくる。光彦に至っては、龍牙が反応しないせいで壁打ちのような会話だ。
左からペッキーを差し出され、右からはカツサンドが出てくる。香りで頭が混乱するから止めて。
左を見れば紅陵さんと目が合い、にこっと笑いかけてくる。その距離と綺麗さに先程の出来事を思い出し、恥ずかしさで顔を背ける。
右を見れば龍牙がこちらを見ていて、無邪気な笑顔でカツサンドを差し出してくる。龍牙が肉好きなのは変わってないな。
龍牙の笑顔が見えているのかどうかは分からないが、龍牙の向こう側から物凄く怖い顔で光彦が睨みつけてくる。その目に息が止まりそうになった。
右は見られない。でも恥ずかしいので左を見るわけにもいかず、私は俯いてお弁当を食べる。そんな私を見た二人は渋々、手にした物をそれぞれ自分の口に入れていた。
結局あの後、気が削がれた龍牙は紅陵さんとの喧嘩を取り止めてくれた。紅陵さんもやる気がなかったみたいで、あの不穏な空気はあっさり消えた。
緩んだ空気を感じて、遠藤君や菊池君、クラスメイト達が押し寄せてきたけど、紅陵さんが一睨みすると、蜘蛛の子を散らすように散らばっていった。紅陵さんが凄い人なのか、皆が過剰に紅陵さんを怖がっているのか、どちらなんだろう。裏番という立場からして、前者の可能性が高そうだな。
そして、お昼は屋上で食べないかという紅陵さんのお誘いを、私は喜んで受けた。屋上なんていう良い場所で食べられるなんて。大空の元、街を見下ろして食べる卵焼きは絶対美味しい!
紅陵さんの睨みに耐えた光彦と龍牙の二人は、お昼を終えたにも関わらず、追加で買ってきたパンを手に私達に着いてきてくれた。紅陵さんは不満そうだったけど、私がお願いすると渋々といった様子で許してくれた。
紅陵さんと二人きりは危険だ。屋上は紅陵さんのシマらしいからそうそうの人でない限り、誰も近寄らない。もしかしたら、いや、もしかしなくても、キス以上のことをされる、絶対に。龍牙達に了承を出した時の舌打ちと、腰に手を回したことは忘れません。
結局、紅陵さんはお菓子、龍牙と光彦は購買のパン、私はお弁当という持ち物で屋上に集まった。因みに時間は五限目の真っ最中。私、もしかして不良に片足突っ込んでる…?
龍牙は、紅陵さんが私にキスをしたという事実が許せないみたいで、険悪さは一向に拭えない。紅陵さんは何処吹く風という様子で全く気にしていないけれど、間に挟まれた私のことを考えて欲しい。
私が龍牙から目を離すと、頭上で舌打ちが聞こえる。どちらのものかは分からない。だって左右から聞こえるから。
でも卵焼きは美味しかったので幸せだ。今日の調味料の配分は上手くいったみたい。やっぱり味の元は神の調味料である!何でも美味しくなるな。
嬉しくて笑うと、龍牙と紅陵さんが目敏く反応した。
「ほーら紅陵先輩笑われてますよ?」
「絶対違う。意地はってる片桐が面白くて笑ったんだ。な、クロちゃん」
「…何の話ですか?」
何か話していたんだろうか。全く聞いていなかった。そういえば、自己紹介わしていなかった!
「紅陵さん、私の名前は紫川鈴と言います。お好きな呼び方で呼んで下さい!」
仲良くなるには基本中の基本だというのに、すっかり忘れていた。紅陵さんがクロちゃんクロちゃんと呼ぶから気づけた。危ない危ない。食べ終わった弁当箱を片付けながら話を続ける。
「おっけー、鈴ちゃんか。可愛い名前だ。じゃあよろしく、クロちゃん」
「…何でクロちゃんなんですか?」
「ここ不良校じゃん。染めてるやつ多くてさ。クロちゃんみたいな純粋な黒色はあんまり見ねえんだ。だからクロちゃん」
黒髪が珍しいから、あだ名として最適ということか。確かに金色とか青とか赤とかピンクとか、色々な色を見かけた。先の3色に至っては、あと銀色が揃えば信号機になってしまう。
「クロちゃんさ、何で顔隠してんの?美人だから?」
「…まとめるとそうですね」
怖いおじいちゃんと約束しました、なんて意味が分からないだろう。説明も面倒だ。
「美人は狙われるからね…、お、やっぱり美人」
気づけば視界が明るくなっていた。右上の方で、ぱちんと音がする。
「ピン持ってて良かった~、絶対こっちの方がいいぞ?」
「紅陵先輩、鈴に何して…ぅおお…」
「どうだ、可愛くないか?」
ピンで私の前髪を留めたようだ。大空がよく見える。雲一つない晴天だ!わあ綺麗だ!なんて見上げていたら右肩を小突かれた。
「龍牙?」
「アイツとの約束はいいのかよ」
「雅弘さん怖ぇだろ」
「…雅弘?」
雅弘さんには小学三年生の時に養護施設から引き取られたので、龍牙と光彦は雅弘さんのことを知っている。今日の朝、雅弘さんとの前髪の約束を伝えたら、二人とも苦笑いしていた。
極道の家に引き取られたことを知っても、二人は離れなかった。そんな二人が居たから、私は今でも明るく居られる。本当に、大親友だ。
紅陵さんが知りたそうにしているけど、ここらのシマの大親分だぜ!とは言えないので、濁しておこう。
「雅弘さんは私の保護者なんです。龍牙、ピンは帰る時に外すから大丈夫。紅陵さんありがとうございます、見えやすくなりました!」
「見えやすくするためじゃないんだよな…、いや、ある意味そうか」
チャイムが五限目の終わりを知らせる。わあ、私、完全に不良かもしれない。
「あ、鈴食べ終わったのか。んじゃあ帰るか」
「クロちゃん、明日もここに来いよ。今度はその二人が居ないといいんだけど…?」
「鈴、絶対俺らと食えよ」
「勿論」
「あーれフラれちまった、残念」
紅陵さんが、微塵も残念と思っていない様子でカラカラと笑う。そこには、雅弘さんが言っていた怖さは少しも感じられない。雅弘さんは心配性だなあ。
紅陵さんも帰るみたいで、鞄を手に私達に着いて来た。龍牙も光彦も鞄を持っている。私だけ鞄を教室に置いてきたので、皆には先に昇降口に行ってもらうことにした。
屋上に繋がる部屋に入ったところで、一つ疑問が湧いた。
「あ、そういえばここ扉無いんですね」
「ああ扉?一年の時俺がぶっ飛ばした。鍵壊そうと思ったらさあ、加減間違えたっぽくて。番長も笑ってたしこのままでいいかなーって」
「「「………」」」
「…龍牙ぁ…」
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