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黒の帳 『一つ目の帳』
探し人
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「あの、俺、…ずっと、貴方のこと、探してたんです。あの時のお礼が…言いたくて」
目の前で、天野君が興奮気味に話している。
クラスの頭を狙おうとして、龍牙を痛めつけようとして、クリミツに沈められた、天野君。自分を介抱してくれた(いや、起こしただけなんだけど)お礼が言いたいからその人を探す天野君。等価交換だけど、私を助けてくれた天野君。お前は度胸があるなと笑った天野君。
乱暴だけど、根っからの悪人ではない。だから、仲良くしたいんだ。
でも、今朝の龍牙と天野君の会話を思い出す。
『礼とか言って~、本当は口説くチャンス狙ってるだけだろ』
『ばっ、違っ、ちげーよチビ!!』
あの時の天野君の顔は、真っ赤だった。
うん、バラさない方が、いい。
ここでバレたら不味い、非常に不味い。
いつかバレるだろうけれど、そのタイミングは明らかに今じゃないだろう。
だとすればこの状況をどう打開しようか。
天野君はトイレの出入口に立っているから、出ようとすれば恐らく塞がれてしまう。
「こんな不良の俺を助けてくれるなんて、…なんて、優しい人なんだって、そう、思ったんです。見た目で判断しない人って、その、とても、素敵、です」
そ、そうなんだね。君は思いっきり外見で判断して根暗根暗って私の事呼ぶよね。
「あの、名前を教えてもらえませんか。俺は天野優人と言います。…貴方は俺の事、知ってましたよね。その、俺と貴方って、どこかで会ったこと、ありますか?」
会ったというより胸倉を掴んできたよね、殴る寸前までいったよね。
というか、顔を隠した私には根暗根暗と呼びかけていたのに、その態度は何なんだろうか。好きな人の前だから?好きな人の前では、誰だっていい顔をしたいが、それにしたってこの変わりようはないだろう。
私は声を出すわけにはいかない。声でバレてしまうだろうから。
黙っている私を見て、天野君が俯いた。
「……すみません、やっぱり、俺みたいな奴は怖いですよね。きゅ、急に質問攻めとか、キモイ事してすみま…、え?」
ふるふると首を振る。
怖いわけないよ。ちょっと奇抜なだけだから。
黙って何もしなければいいとは分かっていた。諦めて立ち去ってくれるなら絶対そちらの方がいいだろう。
でも、寂しそうな顔で、俺みたいな奴、なんて言われては否定したくなってしまう。
「お、俺の事、怖くないんですか?」
うんうんと頷いた。
「じゃあ、何で…名前を教えてくれないんですか?」
それは言えない、というか、そもそも話せない。
「ねえ、お願いします…、俺、貴方に会いたくて、学校中探し回って、そ、それでも見つからなくて…。貴方からしたら、気味が悪いかもしれないけど、や、やっと、見つけたんです、お願いしますっ…」
真っ赤になっている天野君の顔には汗が滲んでいる。本当に緊張しているんだろう。ここまで必死になられると、困ってしまう。頭を下げてまでお願いされ、とうとう私は、根負けしてしまった。
『りん』
スマホのメモアプリで文字を打ち、天野君に画面を見せた。
「な、名前…ですか?」
天野君の言葉に頷いてみせた。
リンとは鈴の音読みだ。幼い頃のあだ名でもある。
「……素敵な名前ですね、リンさん。俺、リンさんにお礼がしたいんです。あの、都合のいい日を教えてもらえませんか?…あ、Mineってやってますか、友達登録してもらえば…」
気づけば、段々と距離を詰められていた。随分近くなった天野君はまだ、じりじりとその足を進めている。君は獲物でも狙ってるの?
スマホを出したのは失敗だったかもしれない。天野君が悲しそうだったからと根負けした私が悪い。
ふと、今の状況を見返してみた。
天野君が出入口から離れている。今なら逃げられるんじゃないか。
ここからどこへ逃げよう。
カフェには紅陵さんが居る。でも龍牙も居る。今は姿をバラしたくないから、龍牙と『りん』の間に関係があると知られるのはよくない。
先程見かけた案内板を思い出す。確か近くに、ゲームセンターがあった。
クリミツがそこに居るはずだ!クリミツなら、もし何かあっても天野君に勝てるだろうし、喧嘩の理由も『ムカついたから』とかで済ませそうだから、適任だ。
よし、向かうはゲームセンターだ。
覚悟を決め、スマホを鞄に仕舞い、私は勢いよく走り出した。
「…リンさん?あっ、待って!!」
後ろから呼び止める声が聞こえるけど、知ったことか。不意をついたからか、天野君は走り出すのが遅れているみたいだ。
よし、振り切れなくてもいいから、とりあえずゲームセンターまで走ろう。
目の前で、天野君が興奮気味に話している。
クラスの頭を狙おうとして、龍牙を痛めつけようとして、クリミツに沈められた、天野君。自分を介抱してくれた(いや、起こしただけなんだけど)お礼が言いたいからその人を探す天野君。等価交換だけど、私を助けてくれた天野君。お前は度胸があるなと笑った天野君。
乱暴だけど、根っからの悪人ではない。だから、仲良くしたいんだ。
でも、今朝の龍牙と天野君の会話を思い出す。
『礼とか言って~、本当は口説くチャンス狙ってるだけだろ』
『ばっ、違っ、ちげーよチビ!!』
あの時の天野君の顔は、真っ赤だった。
うん、バラさない方が、いい。
ここでバレたら不味い、非常に不味い。
いつかバレるだろうけれど、そのタイミングは明らかに今じゃないだろう。
だとすればこの状況をどう打開しようか。
天野君はトイレの出入口に立っているから、出ようとすれば恐らく塞がれてしまう。
「こんな不良の俺を助けてくれるなんて、…なんて、優しい人なんだって、そう、思ったんです。見た目で判断しない人って、その、とても、素敵、です」
そ、そうなんだね。君は思いっきり外見で判断して根暗根暗って私の事呼ぶよね。
「あの、名前を教えてもらえませんか。俺は天野優人と言います。…貴方は俺の事、知ってましたよね。その、俺と貴方って、どこかで会ったこと、ありますか?」
会ったというより胸倉を掴んできたよね、殴る寸前までいったよね。
というか、顔を隠した私には根暗根暗と呼びかけていたのに、その態度は何なんだろうか。好きな人の前だから?好きな人の前では、誰だっていい顔をしたいが、それにしたってこの変わりようはないだろう。
私は声を出すわけにはいかない。声でバレてしまうだろうから。
黙っている私を見て、天野君が俯いた。
「……すみません、やっぱり、俺みたいな奴は怖いですよね。きゅ、急に質問攻めとか、キモイ事してすみま…、え?」
ふるふると首を振る。
怖いわけないよ。ちょっと奇抜なだけだから。
黙って何もしなければいいとは分かっていた。諦めて立ち去ってくれるなら絶対そちらの方がいいだろう。
でも、寂しそうな顔で、俺みたいな奴、なんて言われては否定したくなってしまう。
「お、俺の事、怖くないんですか?」
うんうんと頷いた。
「じゃあ、何で…名前を教えてくれないんですか?」
それは言えない、というか、そもそも話せない。
「ねえ、お願いします…、俺、貴方に会いたくて、学校中探し回って、そ、それでも見つからなくて…。貴方からしたら、気味が悪いかもしれないけど、や、やっと、見つけたんです、お願いしますっ…」
真っ赤になっている天野君の顔には汗が滲んでいる。本当に緊張しているんだろう。ここまで必死になられると、困ってしまう。頭を下げてまでお願いされ、とうとう私は、根負けしてしまった。
『りん』
スマホのメモアプリで文字を打ち、天野君に画面を見せた。
「な、名前…ですか?」
天野君の言葉に頷いてみせた。
リンとは鈴の音読みだ。幼い頃のあだ名でもある。
「……素敵な名前ですね、リンさん。俺、リンさんにお礼がしたいんです。あの、都合のいい日を教えてもらえませんか?…あ、Mineってやってますか、友達登録してもらえば…」
気づけば、段々と距離を詰められていた。随分近くなった天野君はまだ、じりじりとその足を進めている。君は獲物でも狙ってるの?
スマホを出したのは失敗だったかもしれない。天野君が悲しそうだったからと根負けした私が悪い。
ふと、今の状況を見返してみた。
天野君が出入口から離れている。今なら逃げられるんじゃないか。
ここからどこへ逃げよう。
カフェには紅陵さんが居る。でも龍牙も居る。今は姿をバラしたくないから、龍牙と『りん』の間に関係があると知られるのはよくない。
先程見かけた案内板を思い出す。確か近くに、ゲームセンターがあった。
クリミツがそこに居るはずだ!クリミツなら、もし何かあっても天野君に勝てるだろうし、喧嘩の理由も『ムカついたから』とかで済ませそうだから、適任だ。
よし、向かうはゲームセンターだ。
覚悟を決め、スマホを鞄に仕舞い、私は勢いよく走り出した。
「…リンさん?あっ、待って!!」
後ろから呼び止める声が聞こえるけど、知ったことか。不意をついたからか、天野君は走り出すのが遅れているみたいだ。
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