皆と仲良くしたい美青年の話

ねこりんご

文字の大きさ
27 / 153
黒の帳 『一つ目の帳』

意外な助け その二

しおりを挟む
「リンさんっ、待って!お願いリンさん、ごめんなさい!怖がらせたなら…謝りますから!!」
「……ぁ……はっ…」

全力疾走する私と、そんな私を追いかける天野君。
幸いにも天野君はそこまで足が速くないみたいだ。でも、とても速くないというだけだから、真っ直ぐ走り続けるだけでは追いつかれてしまうだろう。
天野君は叫びながら私を追いかけている。その悲痛な叫びに足を止めそうになるけど、そうやってさっきスマホを出して距離を詰められてしまったんだ。

思ったより近かったゲームセンターに逃げ込む。遊んでいる人達が、何だ何だとこちらを向いては、私の顔を見てギョッとする。もうその反応には慣れた。
ごめんなさい、こんな狭い通路で走って。
せめてぶつからないようにと、人の合間を縫って素早く人混みを抜ける。天野君は色々な人にぶつかっているみたいで、私との距離は縮まらずに済んでいる。

「まって、おねがい、まってリンさんっ…」
「ひっ……は、…ぅ…」

もう限界が近い。自分のペースで全力で走るのと、追いつかれないように必死に走るのでは体力の使い方が全く違う。

そしてクリミツに一向に会えない。
私の頭の中で、一つ仮説が浮かび上がった。そう、このショッピングモール、ゲームセンターが二つある。

もしかして、クリミツが居るのは、もう片方のゲームセンターかもしれない。

そうだとしたらもう終わりだ。このまま天野君に捕まって、Mineだかなんだかを交換してしまい、スマホから『りん』の正体がバレるんだろう。私の頭の中を諦めが支配していく。

だけど、そんな私に救いの手が差し伸べられた。

何回目かのゲーム機の角を曲がると、急に視界が回転し、暗くなった。

「しっ…、じっとしているでありますよ…」
「……?」
「リンさんっ、リンさんっ…」

誰かに腕を掴まれて、引っ張られたらしい。引っ張られた場所は、ライド型のゲーム機の中のようだ。暗くてよく見えないけど、私を掴んでいるのは三人の学ランを来た高校生に見える。こんなところに三人、しかも今私が入ってしまったから四人だ、少々狭い。

言われた通りにじっとしていると、天野君が通り過ぎていった。とりあえず、目の前の危険は通り過ぎた。
礼を言おうと後ろを振り向くと、ゲーム機の液晶の光に照らされ、三人の顔が見えた。

「…紫川氏…で合っておりますかな、無事でありますか?」
「え、あ、…沼津君、山口君に、黒宮君っ!?」
「ふふふふ僕らの名前を覚えているなんてね」「凄いよ紫川氏!」
「…どうやら、行ったようですな…。紫川氏…あの恐ろしい青髪に、目をつけられてしまったのですね?いやはや災難な…」

朝会った、眼鏡の五人組の内の三人だ。そうだ、黒宮君はゲームセンターに行くって言っていたっけ。ここで会えるなんて。

「…あ、黒宮氏、沼津氏。宇野氏からMineだよ!」
「はははあの青髪紫川氏が別のところに行ったと思ったらしい」
「ふむ、ではここは一先ず安全ですな。四人は窮屈ですから、ささ、速く外へ参りましょう」

黒宮君に促され、皆でゲーム機の外へ出る。うん、と伸びをして、皆の方へ振り向く。お礼を言わなくては。あんな所で誰か助けられるなんて思いもしなかった。だから、笑顔で皆にお礼を言った。

「ありがとう、黒宮君、沼津君、山口君っ!」

皆が固まってしまった。沼津君と山口君は顔が赤い。私に、何か変な物でもついているのだろうか。

「………え!?」「だだだだだ誰」
「…紫川氏……、その…御顔…」

私は本当に馬鹿だ。

天野君に追いかけられていたのもこのせいだというのに、すっかり忘れていた。さっき居たところでは、暗くて顔が見えなかったのだろう。

髪を留めるピンを外し、前髪を下ろす。

「…うん、紫川鈴で合ってるよ」
「嘘……嘘だ!」「うわああメカクレが本当は可愛いだなんて画面の向こうでしか有り得ないと思ってたのに」
「…お、…おお…、ふむ、ふむ、暫しシンキングタイムを頂いても?」
「うん、何か…ごめんね」

沼津君と山口君はジリジリと後ずさり、黒宮君は眼鏡の縁に指を当てたまま固まってしまった。
私の素顔を知っても、態度を変えないでいてくれるといいんだけど。…いい加減、無反応の人に会えないかなあ。
三人の混乱が収まるのを待っていると、後ろから嬉しそうな声が聞こえた。

「紫川氏~っ!」「僕達いい連携プレーできたよねっ」
「あっ、宇野君に今市君!ありがとう!」

残りの二人の眼鏡さん達だ。どうやら天野君がどこに行ったかを見ていて、それをMineで知らせてくれていたらしい。

「びっくりしたなあ。騒がしいなあーって思ってたら、急に黒宮氏が『あの後ろ姿、紫川氏でありますっ!』って叫んだんだよっ!」
「そうそう、助けなきゃって皆で協力してさ…。現実のステルスって結構簡単だねっ。ところで…三人はどうしたのっ?」
「……えーっとね…」

まあ、隠していても仕方がないか。
…ま、雅弘さんには…、後で…、いや、今は考えないようにしよう。
ピンは使わず、ささっと両手で前髪を退かす。顔を見ると二人も他の三人同様、固まってしまった。あーあ、どうしよう。

固まった五人のことを待っていたら、鞄に仕舞ってあるスマホが鳴っていることに気づいた。画面を見れみれば、『うーちゃん』との表示。ああ…心配してるだろうな。

「…もしも」
『鈴っ、鈴、今どこにいるんだよっ!!さっきから何回も電話かけてんのにっ』
「ごめん、本当にごめんね。二階のゲームセンターに居るよ、カフェに近い方のゲームセンター」
『分かった!すぐ行くから、ゲーセン出て待ってろよ!?』

電話に出た龍牙の声は、とても焦っていた。電話を切り、履歴を見てみると、三、四回も龍牙から着信があった。心配させてしまったな。

「…黒宮君達、私、もう行かなきゃいけないから。本当にありがとう、じゃあね」

反応が無いので手を振ってみると、黒宮君だけが呆然としながら振り返してくれた。

早く龍牙達と合流しなきゃ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

処理中です...