皆と仲良くしたい美青年の話

ねこりんご

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黒の帳 『一つ目の帳』

+ 天野視点 最悪すぎる天災

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とぼとぼと帰路に就く。

今日は最高の出来事と最悪の出来事が同時に起きた。

美人…いや、好きな人の名前を知れた。
そして、その人を怖がらせた。

俺があそこであんなに詰め寄らなければ…でも、そうしなかったら名前は聞けなかったし…うーん。
何が正解だったんだろうか。リンさんに謝りたいな。俺は無害だと知ってもらいたい。

リンさん、リン…そうだ!

俺はクラス割りの表を写メっておいたから、確認しようと思っていたんだ。嬉嬉としてスマホの写真アプリを開く。リン、リン…。

暫く探して、リン、と読めそうな名前は二つ見つかった。
A組の横山凛と、C組の紫川鈴。
このどちらかが、俺の探し求めた、あの人なんだ。明日、絶対探し出すぞ。そして謝るんだ。

でも…
怖がられたら、どうしようなァ…

どんよりため息をついて歩いていると、携帯が鳴った。見てみれば、渡来先輩からの着信だ。

うわ…出たくねぇ…。

今の俺は落ち込んでるんだけどなあ…、でも、これに出なかったら、ブロック解除しなかったな?って言われるなあ。
落胆に落胆を重ねて暫し逡巡した俺は、鉛のように重い指を、応答に乗せた。

「…もしもし、天野です」
『おう。お前、昼に言った俺の弟覚えてんな?』

確か、渡来わたらい慎吾しんごだったか。先輩が可愛がっている弟。というか、先輩の声がめちゃめちゃ怖い。何か弟に良くないことが起こったんだろうか。

「はい、先輩の弟ですよね。どうかしたんですか?」
『…病院送りにされた。完治には一ヶ月以上かかるらしい。骨が何本も折れてる』
「えっ!?」

先輩の弟だ、弱いわけが無い。というか、先輩の許可を得てタイマンを張ったことがあるが、俺は負けた。先輩のような圧倒的な強さでは無いが、あまりダメージを与えられずに俺はやられた。そんな彼が、負けるどころか病院送り?何があったんだろう。

『やったのは、裏番だ』
「…わぁ…」

ちょっとだけ息が止まった。
マジすか、裏番すか。激怖じゃないすか。

というか、それで俺に電話かけてきたってことは…!!!

『なァ、可愛い弟がやられて、黙ってる俺じゃあない』
「…」
『天野、俺の言いたいことが分かるな?作戦を立てる。明日の放課後、あの廃工場に来い。場所は分かるな?』

やっぱりだ。裏番に、復讐する気だ。そしてそれに俺を巻き込む気だ。
一人でやれよと言いたいが、先輩は裏番に敵わない。何せ一撃で沈められたんだ、マトモにやり合っても勝負は見えている。だとすれば、先輩が何をするか。
卑怯な手だろうな。頭が悪い癖に、そういうことをしようとする。そうなると、被害を受けるのは先輩だけじゃない、その作戦に使われる俺たち後輩だって、無事じゃ済まない。

でも、俺に拒否権は無い。
だって渡来先輩には逆らえない。
俺は、弱い。

「はい、放課後すぐに向かいます」

ああ、俺情けねえ。


あの人に、会いたいな。
明日、会いに行こう。


そしたら、こんな理不尽な先輩の元でも、挫けず頑張れるだろうから。
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