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黒の帳 『一つ目の帳』
片桐編 事件 〔火曜日Ⅲ〕
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体育教師が現れた勢いで教室を飛び出してしまった俺は、もう学校を出ていた。こういうことがあるから、最近は鞄を持って逃げるのが癖になった。
鈴が天野と二人きりになるのは許せないけど、鈴と一緒にいたら出来ないことだから、仕方ない。
今からやることは勿論、鈴の誕生日プレゼント探しだ。
やっぱり、誕生日プレゼントはサンミオ関連の物を送るべきだろう。鈴がサンミオ好きということはあまり知られていないから、サンミオの物を送ればより印象に残る。勿論、鈴は俺に関することをたくさん覚えていてくれるから、そこまで心配しなくてもいいのかもしれない。
でも俺は、意識してもらいたいんだ。
意識してもらえるような物なら、普段使うような物だろうか。
鈴はよく勉強しているから、文房具なら常に目がいく。
可愛いシナノンがあるデザインの物を渡せば、鈴はどれだけ喜んでくれるだろう。学校で使わずとも、家でこっそり使ってくれるかもしれない。いや、勿体ないとか言って、ずっととっておいてくれるかもしれない!
そう期待しながら本屋に入ろうとしたが、俺は物の見事に財布を忘れていた。
家に置いてきたんだ。
…なんか、嫌な予感がする。
嫌な予感というのは、当たって欲しくない時ほどよく当たる。
財布を取りに帰宅した俺は、妹に絡まれることになった。
「お兄ちゃん、まだ学校あるでしょ」
「お前もだろ」
「今日テストだから早かったの。お兄ちゃんはまたサボり?」
「うっせ」
玄関の扉の音を聞きつけた彩は、真っ先に俺の元へ駆けてきた。両親は仕事で家を空けることが多いから、帰っても大丈夫だと思ったのに…。
「ちょっとー」
「んだよ」
無視して横をすり抜けようとするが、通せんぼされた。財布を取って早く出かけたいのに、一体何の用だ。どうせ彩のことだからくだらないことだろう。
「鈴ちゃんに言ってくれた?」
「何を」
「今週の日曜日、女子会しようねって話。ゴールデンウィークだから丁度いいかなーって」
「………あー」
そういえば、そんなことを言われた気がする。
彩は鈴のことをとても慕っている。それこそ、本当の家族のように。
そんな彩は俺の知らない間に鈴との約束を取り付けていたらしい。サンミオのぬいぐるみやグッズを持ち寄ってお喋り会、その日時を伝えろと言われたが、すっかり忘れていた。
俺が目を逸らすと、彩の機嫌は目に見えて悪くなった。
「もしかして、忘れたの?」
「わり」
「もう!朝あれだけ言ったのに!」
「うっせ。つーか俺財布取りに来ただけだから。退け」
「えっ、財布忘れたの?ぼーっとしすぎでしょ」
「うるせーーー!」
彩に構っているのは時間の無駄だ。鈴の誕生日はもう来週まで迫っている。鈴の誕生日は、ゴールデンウィーク中。それまでに良い物を見つけないと!
「ただいまー」
「…え」
後ろで響く扉の音。
聞きなれた、声量のでかい快活な声。
母さんだ。
「……龍牙ァ…?」
「…やっべ」
「あんたまた学校サボったの!!?」
その後は阿鼻叫喚だった。
俺が怒られるのは分かりきっていたが、彩まで怒られた。どうやらテストは三日間あったようで、一日目のテストの結果が見つかってしまい、それがゴミだったらしい。
二人して散々怒られ、俺たちはうんざりして次の日を迎えることとなった。くそう、出かけたかったのに。
_翌日、いつものように俺は鈴と天野と登校した。今日は紅陵先輩に出くわさなかったので、ただただ楽しい時間だった!
昨日は一緒にご飯食べたいとか言って絡んできたくせに、紅陵先輩は昼休みまで現れなかった。まあ、今日は学校をサボったのかもしれない。
「すーず」
「んー?」
「卵焼き美味しい?」
「うんっ! ぁ、じゃなくて、えっと…ぉ、美味しいよ、うん」
卵焼きを食べる時の鈴は本当に可愛い。小学生みたいな返事をして、それを恥ずかしがっている鈴なんか、こっちが笑顔を隠せない。
「さきちゃん天使~」
「………あーんさせて欲しい…される方でも、ふふ」
「じゃあ菊池くんがやってあげる。新村、あーん」
「止めろっ!!!」
「あはははっ!」
いつもの三人組の騒ぎを遠目に見ていると、ガラリと教室の扉が開いた。見覚えの無い生徒だ。襟元には学年章がついているはずだが、その生徒は何も付けていなかった。まあ、不良だし気にしなくていいな。
「…天野」
「………おう」
そいつが顎で天野を指すと、天野は俺たちに何も言わず教室を出ていった。
「天野君?」
「えっ、天野ー、おーい」
俺たちの声を完全に天野は無視していた。…まあいいか!元々無愛想な奴だ。
昼ご飯に戻ろうとすると、肩を叩かれた。
振り向けば、今入ってきた生徒が俺を見ていた。
「…片桐、龍牙だな?」
「ん、そうだけど」
「着いてこい、体育教師が呼んでるんだ。体力テストらしいぞ」
「俺行かねー」
「今日来なかったらもう親に連絡するってよ」
「う"ぇっ!?」
それはまずい。昨日散々怒られたのに、その上今日のサボりまで伝わったら終わる。
「それやべー……鈴、俺行ってくるわ」
「うん、頑張ってね」
鈴に別れを告げ、俺はのんびりその生徒に着いていった。
「あのセンセーだるくねー?体力テストなんかしなくったっていいし…」
「分かる。俺はだるいから授業中にやった。お前はサボったみたいだな」
校舎を抜け、体育館へ向かうはず…と思ったのだがなぜかその生徒は体育館裏の方へ向かった。
「体育館じゃねーの?」
「こっちの方に倉庫があるのは知ってるだろ?倉庫から物取ってこいだってよ」
「えーダリィ…」
「場所は分かってる。手伝ってやるから来い」
倉庫の方に着いていくが、俺はふと疑問に思った。コイツ一年なのにこの学校のこと結構知ってるな。俺が知らなさすぎるだけなのかもしれないけど。
「お前ってさ、何組?てかもしかして先輩?」
「……E組だ」
「へえ~」
「……三年の、な」
「えー先輩じゃないすかぁ、さーせん…ん?」
そういえば、どこかで聞いたことがある。
三年って、紅陵先輩たちとは対立している、渡来側が多いんだって。
「あの、渡来賢吾って知って」
ガン、と後頭部に強い衝撃。
あ、と思った時には遅かった。
「__もしもし賢吾。ああ、上手くいった。車は?…ああ」
あたまが、くらくらする。
俺は、騙されたのか。…誘い込まれたんだ。
「………なんで…ぇ…?」
「あ、寝ててくれ」
ぼんやりとした視界に、相手の足らしき物が見える。
あーやっべ、俺めっちゃ弱いじゃん、ははっ。
自嘲気味な考えを最後に、俺は気絶してしまった。
鈴が天野と二人きりになるのは許せないけど、鈴と一緒にいたら出来ないことだから、仕方ない。
今からやることは勿論、鈴の誕生日プレゼント探しだ。
やっぱり、誕生日プレゼントはサンミオ関連の物を送るべきだろう。鈴がサンミオ好きということはあまり知られていないから、サンミオの物を送ればより印象に残る。勿論、鈴は俺に関することをたくさん覚えていてくれるから、そこまで心配しなくてもいいのかもしれない。
でも俺は、意識してもらいたいんだ。
意識してもらえるような物なら、普段使うような物だろうか。
鈴はよく勉強しているから、文房具なら常に目がいく。
可愛いシナノンがあるデザインの物を渡せば、鈴はどれだけ喜んでくれるだろう。学校で使わずとも、家でこっそり使ってくれるかもしれない。いや、勿体ないとか言って、ずっととっておいてくれるかもしれない!
そう期待しながら本屋に入ろうとしたが、俺は物の見事に財布を忘れていた。
家に置いてきたんだ。
…なんか、嫌な予感がする。
嫌な予感というのは、当たって欲しくない時ほどよく当たる。
財布を取りに帰宅した俺は、妹に絡まれることになった。
「お兄ちゃん、まだ学校あるでしょ」
「お前もだろ」
「今日テストだから早かったの。お兄ちゃんはまたサボり?」
「うっせ」
玄関の扉の音を聞きつけた彩は、真っ先に俺の元へ駆けてきた。両親は仕事で家を空けることが多いから、帰っても大丈夫だと思ったのに…。
「ちょっとー」
「んだよ」
無視して横をすり抜けようとするが、通せんぼされた。財布を取って早く出かけたいのに、一体何の用だ。どうせ彩のことだからくだらないことだろう。
「鈴ちゃんに言ってくれた?」
「何を」
「今週の日曜日、女子会しようねって話。ゴールデンウィークだから丁度いいかなーって」
「………あー」
そういえば、そんなことを言われた気がする。
彩は鈴のことをとても慕っている。それこそ、本当の家族のように。
そんな彩は俺の知らない間に鈴との約束を取り付けていたらしい。サンミオのぬいぐるみやグッズを持ち寄ってお喋り会、その日時を伝えろと言われたが、すっかり忘れていた。
俺が目を逸らすと、彩の機嫌は目に見えて悪くなった。
「もしかして、忘れたの?」
「わり」
「もう!朝あれだけ言ったのに!」
「うっせ。つーか俺財布取りに来ただけだから。退け」
「えっ、財布忘れたの?ぼーっとしすぎでしょ」
「うるせーーー!」
彩に構っているのは時間の無駄だ。鈴の誕生日はもう来週まで迫っている。鈴の誕生日は、ゴールデンウィーク中。それまでに良い物を見つけないと!
「ただいまー」
「…え」
後ろで響く扉の音。
聞きなれた、声量のでかい快活な声。
母さんだ。
「……龍牙ァ…?」
「…やっべ」
「あんたまた学校サボったの!!?」
その後は阿鼻叫喚だった。
俺が怒られるのは分かりきっていたが、彩まで怒られた。どうやらテストは三日間あったようで、一日目のテストの結果が見つかってしまい、それがゴミだったらしい。
二人して散々怒られ、俺たちはうんざりして次の日を迎えることとなった。くそう、出かけたかったのに。
_翌日、いつものように俺は鈴と天野と登校した。今日は紅陵先輩に出くわさなかったので、ただただ楽しい時間だった!
昨日は一緒にご飯食べたいとか言って絡んできたくせに、紅陵先輩は昼休みまで現れなかった。まあ、今日は学校をサボったのかもしれない。
「すーず」
「んー?」
「卵焼き美味しい?」
「うんっ! ぁ、じゃなくて、えっと…ぉ、美味しいよ、うん」
卵焼きを食べる時の鈴は本当に可愛い。小学生みたいな返事をして、それを恥ずかしがっている鈴なんか、こっちが笑顔を隠せない。
「さきちゃん天使~」
「………あーんさせて欲しい…される方でも、ふふ」
「じゃあ菊池くんがやってあげる。新村、あーん」
「止めろっ!!!」
「あはははっ!」
いつもの三人組の騒ぎを遠目に見ていると、ガラリと教室の扉が開いた。見覚えの無い生徒だ。襟元には学年章がついているはずだが、その生徒は何も付けていなかった。まあ、不良だし気にしなくていいな。
「…天野」
「………おう」
そいつが顎で天野を指すと、天野は俺たちに何も言わず教室を出ていった。
「天野君?」
「えっ、天野ー、おーい」
俺たちの声を完全に天野は無視していた。…まあいいか!元々無愛想な奴だ。
昼ご飯に戻ろうとすると、肩を叩かれた。
振り向けば、今入ってきた生徒が俺を見ていた。
「…片桐、龍牙だな?」
「ん、そうだけど」
「着いてこい、体育教師が呼んでるんだ。体力テストらしいぞ」
「俺行かねー」
「今日来なかったらもう親に連絡するってよ」
「う"ぇっ!?」
それはまずい。昨日散々怒られたのに、その上今日のサボりまで伝わったら終わる。
「それやべー……鈴、俺行ってくるわ」
「うん、頑張ってね」
鈴に別れを告げ、俺はのんびりその生徒に着いていった。
「あのセンセーだるくねー?体力テストなんかしなくったっていいし…」
「分かる。俺はだるいから授業中にやった。お前はサボったみたいだな」
校舎を抜け、体育館へ向かうはず…と思ったのだがなぜかその生徒は体育館裏の方へ向かった。
「体育館じゃねーの?」
「こっちの方に倉庫があるのは知ってるだろ?倉庫から物取ってこいだってよ」
「えーダリィ…」
「場所は分かってる。手伝ってやるから来い」
倉庫の方に着いていくが、俺はふと疑問に思った。コイツ一年なのにこの学校のこと結構知ってるな。俺が知らなさすぎるだけなのかもしれないけど。
「お前ってさ、何組?てかもしかして先輩?」
「……E組だ」
「へえ~」
「……三年の、な」
「えー先輩じゃないすかぁ、さーせん…ん?」
そういえば、どこかで聞いたことがある。
三年って、紅陵先輩たちとは対立している、渡来側が多いんだって。
「あの、渡来賢吾って知って」
ガン、と後頭部に強い衝撃。
あ、と思った時には遅かった。
「__もしもし賢吾。ああ、上手くいった。車は?…ああ」
あたまが、くらくらする。
俺は、騙されたのか。…誘い込まれたんだ。
「………なんで…ぇ…?」
「あ、寝ててくれ」
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※11/12に10話加筆しています。
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