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黒の帳 『一つ目の帳』
どこいったの
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また、一人ぼっちだ。
天野君も龍牙も、どこかへ行ってしまった。龍牙は体育の…武内先生のところへ行ったし、天野君に至ってはまたしても行き先を言わずに出ていってしまった。
「さきちゃん、はい、たまごサンド」
「もうお腹いっぱいだから大丈夫。遠藤君が食べて?」
「じゃあ俺にあーんってして!」
「自分で食べれるでしょっ」
昨日とは違い、遠藤君たちが話しかけてくれる。昨日はプレゼントがどうだとかでバタバタしていたから、今日は比較的ゆっくり出来ている気がする。プレゼントのことを諦めたらしい皆は、天野君と龍牙がいなくなったタイミングを見計らって、私に話しかけてきた。
やたらとあーんを強請られるが、全て断っている。あーんなんて龍牙や小さい子によくやっているから、恥ずかしいわけじゃない。ただ、一人にやったら全員に求められる。しかも何回も求められるかもしれない。
それはちょっぴり大変。断らせてもらわなきゃ。
「……し、しっ、し…」
突然、背後から引きつった「し」の連呼が聞こえ、不思議に思った私は振り向いた。
「あっ、先生。こんにちは」
「こっ、こん…こんにちは。実は話したいことが、あって、ですね。…あれ、片桐くんは…」
「龍牙は体育の武内先生に呼び出されたんですよ。体力テストサボってたんです」
苦笑を混じえて話すと、担任の如月先生は首を傾げた。
「……武内先生、今日はお休みですよ?」
「えっ?」
「体育の先生は他にもいますが…、恥ずかしながら、不良の片桐くんを呼び出せるような先生はいません」
「えっ、でも、確かにあの人は、体育の先生がって…」
天野君と龍牙が教室を出ていくきっかけになった、見知らぬ生徒。
あの人は、嘘をついたの?
でもどうして。あんな嘘をついたところで出来ることは、龍牙を、呼び出す、くらい……
「……あー、さきちゃん、言おうかどうか悩んでたんだけど」
「…何」
「片桐呼び出した人、学年章付けてなかったけど、三年で、同い年の渡来さんと超仲良い人なんだよね」
「何で早く言わないの!?」
三年の、渡来賢吾さん。
龍牙を見ていた目を、忘れるわけがない。値踏みをするようなあの視線も。
ばくばくと心臓がうるさくなった。
本当は、あの生徒が間違えただけかもしれない。もしかしたら、数秒して扉が開いて、龍牙がぷんぷんしながら帰ってくるかもしれない。今日先生休みだった、アイツ間違えてた、って。
でも、そうじゃ、なかったら?
焦りに焦った私ががたんと席を立つと、周りのクラスメイトがしんと黙った。まさか私がこんな態度をとるとは思わなかったらしい。
「ごっ、ごめん、急に怒って…っ、でもっ、龍牙が、龍牙が……」
きゅう、と、苦しくなる。きらきらした、龍牙、私よりずっと綺麗で、太陽みたいに明るい龍牙。
もし、龍牙に何かあったら?
龍牙が汚されたら?
自分のこと以上に、泣きそうになった。
勢いよく教室を出たのは、初めてのことかもしれない。
今までにも感情に任せて教室を出ていったことはあるけれど、こんなに全速力で出たことはない。
私は龍牙より弱いし、もし龍牙に何かあっても、私だけじゃ助けられない。それでも、心だけが先走ってしまう。
向かっている先は体育館だけど、相手が嘘をついていた以上それも確かじゃない。でも、龍牙を、探したくて、あの綺麗な長髪が目に入るまで、私は走り回りたかった。
誰かに助けを求めればいい。さっきの教室だって、周りに冷静に説明すればよかった。それでも、焦りの感情だけが私を支配していた。
体育館までたどり着いた私は、体育館裏まできっちり探し回った。体育館の中も覗いたけど、体力テストなんて行われそうな雰囲気は一切無かった。
やっぱり龍牙は騙されたんだ。
気づけば、私はぼろぼろと泣きながら歩いていた。
「ぅ、うーちゃ、うーちゃん、やだ、やだよ…、やだぁ……」
殴られるより、蹴られるより、体を暴かれる方がずっと怖い。自分の経験から、それは酷く痛感している。
龍牙が怖い目に遭う。
それは、自分が被害に遭うことよりも、何よりも、怖いことのように思えた。
「しっ、紫川氏っ、かっ、かようなところにおられましたかっ…」
「ひ、ぅ、くろっ、みや、くん…?」
後ろから声をかけられ、私はしゃくりあげながら返事をした。私に話しかけたのは、メガネをかけた五人組の一人…黒宮君だった。彼は一人で私の元へ来たらしく、ぜえぜえと肩で息をしながら話し始めた。
「じっ、実は、小生、片桐氏を、見かけ、ましてっ…それが、たっ、たっ、ただごと、ではなく…」
「りゅっ、が? っ、おしえてっ」
「あっ、怪しげな、車に、乗せられておりましたっ…、かっ、彼のい、意識は無く、はっ、犯罪、では、ないかとっ…」
「どっ、どこっ、どこ行ったか分かるっ!?」
片方は息を切らし、片方はしゃくりあげながら、とまともに会話出来ていないが、それでも言いたいことは伝わっていた。
「はっ、廃、工場、だと…、廃工場って、いうのは、おそらく、西柳のもの、だとおも、われっ…不良の、たっ、たっ、たまりば、として、有名、なのですよっ…げほっ、くっ、くるっ、車も、そちらの、方面へ…」
「にっ、し、柳…」
黒宮君、龍牙を見てたんだ。車で連れ去られるなんて、絶対危ない目に、怖い目に遭わされるだろう。
行き先は西柳の廃工場。
…そこなら、行ったことがある。
廃工場を遊び場にしていた養護施設の下の子を、何度も迎えに行っていた。今は不良のたまり場になっているのか。
「…くっ、ろ、みや、くん、これっ……」
「はいっ…これは?」
私はポケットに入っていた携帯を取り出し、ロックを解除して黒宮君に預けた。
「こ、これで、紅陵零王っていう人と、氷川涼っていう人に、れんらくしてっ…」
「えっ!?!?!?つ、つーとっぷ、不良ツートップ…ふぁ……」
「私、は、西柳に、行くからっ…」
そう言った途端、黒宮君の顔が青ざめたのは分かったけど、私には気にしている余裕が無かった。
落ち着いて仲間を集めればいい。私のことを好いてくれている人を、こういう時に頼らないでいつ頼るのか。紅陵さんや氷川さんに連絡して、じゃなくて、今すぐ会いに行って連れていけばいい。
冷静な自分がそう叫んでいたけど、感情的な自分の方が、ずっと、ずっと強かった。
「しっ、紫川氏、お待ちください、冷静になってくださいっ、漫画ならびんびんの死亡フラグですぞ!?」
「……ごめんっ…」
何か事件が起きた時、周りを顧みずに走り出す人が、理解出来なかった。ドラマや漫画で見たけれど、やっぱり理解が出来なかった。どうして冷静になれないの? ここでちゃんと行動すれば被害が防げるのに、と、何度考えたことだろう。
実際は、もう、それどころじゃない。
龍牙のことで頭がいっぱいだ。パニックになる寸前の状態で、目の前にあることだけを考えている。
今の私は自分が冷静でないことにさえ気付いていなかった。
何かしないとという焦りに駆られている自覚もなかった。
龍牙。
無事で、いて。
天野君も龍牙も、どこかへ行ってしまった。龍牙は体育の…武内先生のところへ行ったし、天野君に至ってはまたしても行き先を言わずに出ていってしまった。
「さきちゃん、はい、たまごサンド」
「もうお腹いっぱいだから大丈夫。遠藤君が食べて?」
「じゃあ俺にあーんってして!」
「自分で食べれるでしょっ」
昨日とは違い、遠藤君たちが話しかけてくれる。昨日はプレゼントがどうだとかでバタバタしていたから、今日は比較的ゆっくり出来ている気がする。プレゼントのことを諦めたらしい皆は、天野君と龍牙がいなくなったタイミングを見計らって、私に話しかけてきた。
やたらとあーんを強請られるが、全て断っている。あーんなんて龍牙や小さい子によくやっているから、恥ずかしいわけじゃない。ただ、一人にやったら全員に求められる。しかも何回も求められるかもしれない。
それはちょっぴり大変。断らせてもらわなきゃ。
「……し、しっ、し…」
突然、背後から引きつった「し」の連呼が聞こえ、不思議に思った私は振り向いた。
「あっ、先生。こんにちは」
「こっ、こん…こんにちは。実は話したいことが、あって、ですね。…あれ、片桐くんは…」
「龍牙は体育の武内先生に呼び出されたんですよ。体力テストサボってたんです」
苦笑を混じえて話すと、担任の如月先生は首を傾げた。
「……武内先生、今日はお休みですよ?」
「えっ?」
「体育の先生は他にもいますが…、恥ずかしながら、不良の片桐くんを呼び出せるような先生はいません」
「えっ、でも、確かにあの人は、体育の先生がって…」
天野君と龍牙が教室を出ていくきっかけになった、見知らぬ生徒。
あの人は、嘘をついたの?
でもどうして。あんな嘘をついたところで出来ることは、龍牙を、呼び出す、くらい……
「……あー、さきちゃん、言おうかどうか悩んでたんだけど」
「…何」
「片桐呼び出した人、学年章付けてなかったけど、三年で、同い年の渡来さんと超仲良い人なんだよね」
「何で早く言わないの!?」
三年の、渡来賢吾さん。
龍牙を見ていた目を、忘れるわけがない。値踏みをするようなあの視線も。
ばくばくと心臓がうるさくなった。
本当は、あの生徒が間違えただけかもしれない。もしかしたら、数秒して扉が開いて、龍牙がぷんぷんしながら帰ってくるかもしれない。今日先生休みだった、アイツ間違えてた、って。
でも、そうじゃ、なかったら?
焦りに焦った私ががたんと席を立つと、周りのクラスメイトがしんと黙った。まさか私がこんな態度をとるとは思わなかったらしい。
「ごっ、ごめん、急に怒って…っ、でもっ、龍牙が、龍牙が……」
きゅう、と、苦しくなる。きらきらした、龍牙、私よりずっと綺麗で、太陽みたいに明るい龍牙。
もし、龍牙に何かあったら?
龍牙が汚されたら?
自分のこと以上に、泣きそうになった。
勢いよく教室を出たのは、初めてのことかもしれない。
今までにも感情に任せて教室を出ていったことはあるけれど、こんなに全速力で出たことはない。
私は龍牙より弱いし、もし龍牙に何かあっても、私だけじゃ助けられない。それでも、心だけが先走ってしまう。
向かっている先は体育館だけど、相手が嘘をついていた以上それも確かじゃない。でも、龍牙を、探したくて、あの綺麗な長髪が目に入るまで、私は走り回りたかった。
誰かに助けを求めればいい。さっきの教室だって、周りに冷静に説明すればよかった。それでも、焦りの感情だけが私を支配していた。
体育館までたどり着いた私は、体育館裏まできっちり探し回った。体育館の中も覗いたけど、体力テストなんて行われそうな雰囲気は一切無かった。
やっぱり龍牙は騙されたんだ。
気づけば、私はぼろぼろと泣きながら歩いていた。
「ぅ、うーちゃ、うーちゃん、やだ、やだよ…、やだぁ……」
殴られるより、蹴られるより、体を暴かれる方がずっと怖い。自分の経験から、それは酷く痛感している。
龍牙が怖い目に遭う。
それは、自分が被害に遭うことよりも、何よりも、怖いことのように思えた。
「しっ、紫川氏っ、かっ、かようなところにおられましたかっ…」
「ひ、ぅ、くろっ、みや、くん…?」
後ろから声をかけられ、私はしゃくりあげながら返事をした。私に話しかけたのは、メガネをかけた五人組の一人…黒宮君だった。彼は一人で私の元へ来たらしく、ぜえぜえと肩で息をしながら話し始めた。
「じっ、実は、小生、片桐氏を、見かけ、ましてっ…それが、たっ、たっ、ただごと、ではなく…」
「りゅっ、が? っ、おしえてっ」
「あっ、怪しげな、車に、乗せられておりましたっ…、かっ、彼のい、意識は無く、はっ、犯罪、では、ないかとっ…」
「どっ、どこっ、どこ行ったか分かるっ!?」
片方は息を切らし、片方はしゃくりあげながら、とまともに会話出来ていないが、それでも言いたいことは伝わっていた。
「はっ、廃、工場、だと…、廃工場って、いうのは、おそらく、西柳のもの、だとおも、われっ…不良の、たっ、たっ、たまりば、として、有名、なのですよっ…げほっ、くっ、くるっ、車も、そちらの、方面へ…」
「にっ、し、柳…」
黒宮君、龍牙を見てたんだ。車で連れ去られるなんて、絶対危ない目に、怖い目に遭わされるだろう。
行き先は西柳の廃工場。
…そこなら、行ったことがある。
廃工場を遊び場にしていた養護施設の下の子を、何度も迎えに行っていた。今は不良のたまり場になっているのか。
「…くっ、ろ、みや、くん、これっ……」
「はいっ…これは?」
私はポケットに入っていた携帯を取り出し、ロックを解除して黒宮君に預けた。
「こ、これで、紅陵零王っていう人と、氷川涼っていう人に、れんらくしてっ…」
「えっ!?!?!?つ、つーとっぷ、不良ツートップ…ふぁ……」
「私、は、西柳に、行くからっ…」
そう言った途端、黒宮君の顔が青ざめたのは分かったけど、私には気にしている余裕が無かった。
落ち着いて仲間を集めればいい。私のことを好いてくれている人を、こういう時に頼らないでいつ頼るのか。紅陵さんや氷川さんに連絡して、じゃなくて、今すぐ会いに行って連れていけばいい。
冷静な自分がそう叫んでいたけど、感情的な自分の方が、ずっと、ずっと強かった。
「しっ、紫川氏、お待ちください、冷静になってくださいっ、漫画ならびんびんの死亡フラグですぞ!?」
「……ごめんっ…」
何か事件が起きた時、周りを顧みずに走り出す人が、理解出来なかった。ドラマや漫画で見たけれど、やっぱり理解が出来なかった。どうして冷静になれないの? ここでちゃんと行動すれば被害が防げるのに、と、何度考えたことだろう。
実際は、もう、それどころじゃない。
龍牙のことで頭がいっぱいだ。パニックになる寸前の状態で、目の前にあることだけを考えている。
今の私は自分が冷静でないことにさえ気付いていなかった。
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