リコの栄光

紫蘇ジュースの達人

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リコの秘密

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噴水公園では、犬の散歩をする人、読書をする人、チェロの練習をする大学生、様々な人たちが、思い思いに過ごしていた。

夕焼けが空を包み、噴水の水面はゆらゆらとオレンジ色に染まっていく。

モモとサッチは茂みに隠れながら、リコを探した。

「いたわ。」

「えっ、どこ?」

「噴水の向こう。」

噴水の淵に本を片手に座っているリコがいた。

「あいつ、読書なんかしたっけ。」

しばらくすると、リコは立ち上がった。大きな犬が噴水の向こう側から走ってきて、尻尾を振りながらリコに近づいて来るのが見える。リコは笑いながら両手で犬の長い毛並みをを整えるように撫でた。

すぐに犬の飼い主と思われる女性がやってきて、リコと親しそうに話を始めた。

「あの美人は誰だろう。」

「なるほどね、、最近付き合いが悪いと思ったら。そういうことですか。」

「サッチ、帰るわよ。」

モモはそう言いうと、駅に向かって足早に歩き出した。

「えっ、ちょっと待ってよ。夕飯は?おなかすいちゃったよ。」

「本日の夕飯は各自とします。以上解散。」

モモは歩くのをやめずにそう言うと、駅に向かって一人で行ってしまった。
「モモ、なんか怒ってる?」

夕暮れ時の噴水公園で一人、サッチは肩をすくめた。

「うーん。あの人、どこかで見たような・・そんなことより、夕ご飯、夕ご飯。」

サッチは明かりが灯り始めた繁華街のほうに歩き出した。
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