半世紀生きて、やっと小説完成しました

さんかく ひかる

文字の大きさ
38 / 94

三人称は難しい

しおりを挟む
 小説投稿にまつわるモヤモヤエッセイ、始めます。
 
 前回は「一人称と三人称」というタイトルの癖に、通販番組に騙された?悔しさを冒頭で吐露したため、一人称だけ語って終わりとなりました。
 今回は、三人称について語りながら、また小説を宣伝します。二つ目の長編『「日本人」最後の花嫁』のあとがきでも話が重なります。


 私の小説のほとんどは一人称小説です。三人称小説は、パロディ中編と二つ目の長編の二つだけです。
 一人称小説ばかり書いてきた私が、なぜ二つ目の長編を敬遠していた三人称で書いたか?
 一つ目の長編は、元々三人称で書いていましたが、一人称の方が書きやすいことに気がつき、書き直しました。
 二つ目も同じパターンです。最初は一人称で書いていましたが、一人称での記述に行き詰まり、三人称に変えたのです。

 二つ目の長編小説『「日本人」最後の花嫁』は、二十二世紀後半の日本が舞台の近未来SFです。文明から隔絶された先住民族の少女が連れ出され、文明社会で生きる話です。

 この設定は単に趣味で採用したのですが、近未来SFを書くのになかなか便利です。

 未来社会を描くとき、未来人の視点で記述すると、現代人には理解できない代物となります。ネット・スマホ・人工衛星……私たちには説明不要な物体でも、明治の人には単語だけでは理解できません。解説が必要です。
 それと同じ問題が、近未来SFでも発生します。この問題、語り手となるヒロインが現代の私たちと同じ文化で育ったことにすれば、解決します。

 異世界転生物語と同じ理屈です。現代人が観察した異世界を語ることで、私たちも抵抗なく異世界で遊べるわけです。


 そこでヒロイン視点で小説を書き始めたのですが、あっさり挫折しました。

 ヒロインは開始時、十三歳です。文明から隔絶された少女の視点で文明社会を描く……いいアイディアと思ったのですが、書き出したら、かなりの筆力が要求されることに気がつきました。

 ヒロインが現代社会に生きる大人なら、現代の私たちにわかりやすく未来社会を説明できたでしょう。しかし、今回のヒロインは子供です。隔離された先住民族の視点で文明社会を書いてみたのですが……ものすごく不自然になりました。およそ子供らしくない文章になったのです。
 
 ということで、一人称から三人称に切り替えました。


 三人称に切り替えたことで、未来社会の記述はスムーズになりました。しかも三人称では、主人公サイドだけではなく、相手役サイド、サブキャラサイド、いろんな視点で描けます。
 調子に乗って、あの人の話、この人の話、と書き出したら楽しくなり、どんどん世界が広がりました。

 が、調子に乗りすぎて収集つかなくなり、前にも後ろにも進めず袋小路に追い込まれました。
 それ以前に、この場面では何を書くべきか? どのような文体で書くべきか、といった基本的なことがわからなくなりました。

 一人称小説では、主人公の知らないことは書けません。この縛りのおかげで書くべきポイントが、意識しなくても絞られます。主人公が一番訴えたいことにフォーカスすればいいのです。ですから、さほど迷子にならずに話を進められます。

 しかし制限が緩い三人称では、どこにフォーカスすればいいのでしょう? 一人称だろうが三人称だろうが、主人公にフォーカスすればいいのでしょうが、三人称という自由度の高い形式に幻惑され、ピントがずれてきました。
 ピンボケ甚だしく、誰が主人公か、何を書きたい物語か、根本からグラグラ揺れてきました。

 一人称なら主役の気分で書きます、書けます。でも三人称は「誰」の気分で書けばいいのでしょう? そもそも三人称は、全てを知る神の視点で書く形式です。
 となると「全てを知る神」の気分で書けばいいのでしょうか? しかし私は、毎朝布団から出るのが苦痛で仕方ない、ただの人間です。全てを知る神の気持ちなど分かりません。

 以上が、三人称は難しい、と思った次第です。


 このままでは小説が書けない。かといって私は「神」にはなれない。
 そこで思いついたのが次の技です。

 私は、この小説を、主人公について書かれた伝記、と設定しました。私は神ではなく、伝記作家という人間になって主人公の物語を綴ることにしたのです。
 小説の「まえがき」で「『主人公』について記す」と述べました。小説が架空の伝記であることを示すためです。

 この技で、私は迷いが吹っ切れました。
「自分は主人公の伝記作家だ。伝記作家としてどう書けばいい? 何を書けばいい?」と言い聞かせることで、袋小路から抜け出せたのです。


 小説指南サイトでは、一人称や三人称について詳しく書かれています。特に、視点が大事で、視点はブレてはいけない、と言われます。
 実は私、「視点」というのが、よくわかっていません。二つ目の長編、視点がブレブレです、多分。
 いわゆる視点キャラをカウントしてみたら、主要キャラで三人、プラスサブキャラ三人の合計六人でした。
 この小説は群像劇ではありません。主役のヒロインと相手役のヒーローの関係を、ストーリーの基本にしています。
 ヒロインはシンプルな性格ですが、ヒーローはクセがあります。クセのあるヒーローをさまざまな視点で描き、多面性を表現したかったのですが、六人はちょっと多かったかな。
 視点については、ただいま勉強中です。
 

 三人称小説は、主人公のいちファンになって、彼、彼女の魅力を伝えるために書く、という方法が、今の私には、しっくりきます。
 国や世界の運命、神々の戦いといったスケールの大きい話が書きたくなったら? まあ、その時に考えますわ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...