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4 古代ギリシャで謎といったらスフィンクス!
(9)しつこいスフィンクス
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スフィンクスの叫びで、人々は顔を見合わせた。
「そうだ。ヘクトルが兄さんって聞いて嬉しくなって忘れてたけど、スフィンクスさんから謎を出されてたんだ」
「おいパリス。そう決まったわけじゃないだろ。この旅人が勘違いしているだけかもしれない」
「いや、そう言われてみれば、二人ともよく似ているぞ」
また除け者にされたスフィンクスが、大声を出した。
「こらあ! もう一度問題を出すぞ。いいな? アゴラに5組の家族が集まってきた。家族構成はバラバラじゃ。赤子がいる者もいれば……」
「そうだ。えーと、5組の家族かあ」
謎解きモードに引き戻されたパリスは、地面に向き直った。
「ストーップ! 親父!」
怪物の息子らしい旅人が割り込んだ。
「パリスさんよ。親父のトラップに騙されるな。家族が5組とかはどーでもいい。重要なのは後半部分だぜ」
赤子は4本足、大人は2本足、老人は3本足じゃ。
アゴラには全部で15人。
人の足の数は全部で40本。
足の中には、杖が4本含まれておる。
赤子と大人と老人は、それぞれ何人じゃ?
懸命な読者の方は前話でとっくに答えを出しているだろうから、飛ばしていただいて構わない。
「ああ、なるほど! で、でも……足の数と人数はわかっても……」
「杖が4本ってことは、老人の人数は決定だよな?」
「そうか! 杖の数と老人の数は一緒……じゃあ老人は4人で決定! あとは赤ちゃんと大人が11人」
「そうだ。足の数も絞られるよな?」
「うん! つまりこういうことだね」
パリスは地面に木の枝で記した。
大人と赤子の足の数
= 40本 - 老人一人の足3本 × 老人の人数4人
= 28本
相変わらず、ヘクトルとナウシカは、呆然としている。
「そうだ。お前さん、察しがいいじゃねえか」
「えーと、赤ちゃんは10人以下……いや足の数が28本に絞られたから……28÷4=7人以下だね。うーんと……」
「こういうことだろ?」
中年男は、地面に書き加えた。
赤ん坊の数 + 大人の数 = 11
4本 × 赤ん坊の数 + 2本 × 大人の数 = 28
「そうか! 待って、この続きは僕に任せて」
パリスは、生き生きと木の枝を動かす。
4本 × 赤ん坊の数 + 2本 ×(11-赤ん坊の数)= 28
だから 2本 × 赤ん坊の数 =6本
「できたよ! 赤ちゃんは3人。大人は8人。お年寄りは4人だ!」
赤子は3人、大人は8人、老人は4人──
パリスの答えにスフィンクスは大きく頷く。正解のようだ。
怪物は中年男に向き直った。
「息子よ。お主、少しはできるようじゃの?」
「親父、言ってただろ? こんなの簡単な一次方程式だって」
謎の男も笑った。
「ふはははは。まだまだこれも導入問題じゃ。さて、次は神殿の謎じゃ」
さきほどから全く活躍していないリーダーが前に進む。
「おい! パリスは謎を解いたじゃないか! いい加減に道を通せ」
「そうだとも、卑怯ではないか! お前は誇り高い守護者ではなかったのか?」
計算はいまひとつだが、攻撃力の高いメンバー二人が剣を構えて、怪物に食って掛かる。
が、スフィンクスの前に、中年男が立ちはだかった。
「わるい! どうか、しばらく親父のわがままにつきあってくれねーか?」
「そこを退くのだ、旅人よ。我らの旅に、怪物と戯れる暇はない」
剣を構えたヘクトルは、王子モードに変身して男に迫る。
「ヘクトルの言うとおりだ! 私たちは三つも謎に付き合った」
ナウシカは通常モードで、正義を訴える。
が、この緊張感を田舎の狩人が破った。
「おじさん、わかった。僕、なんか楽しくなってきた。もう少し、スフィンクスさんに付き合うよ」
中年男は、顔をほころばせた。
「へー、パリスさん、あんた、いい人だ。見直したよ。女に惑わされて戦争を引き起こしたロクでもないお坊ちゃんって思ってたけどさ」
場の空気が凍り付いた。
──パリスが、女に惑わされ戦争を起こす?
謎の男の発言に、王子と王女は眦をつりあげた。
「ふざけんなよ!」「愚かなこと言うな!」
侮辱された当人は、青ざめて硬直する。
「パリスさん。わりいわりい。あんたは、俺たちが知ってるパリスとは別人だ」
中年男は慌ててフォローに走った。
田舎から出てきた狩人、そしてヒポクラテスから医術を学んだ見習い医師は、青ざめた顔をあげて、怪物に向き直った。
「スフィンクスさん、次の謎を!」
「そうだ。ヘクトルが兄さんって聞いて嬉しくなって忘れてたけど、スフィンクスさんから謎を出されてたんだ」
「おいパリス。そう決まったわけじゃないだろ。この旅人が勘違いしているだけかもしれない」
「いや、そう言われてみれば、二人ともよく似ているぞ」
また除け者にされたスフィンクスが、大声を出した。
「こらあ! もう一度問題を出すぞ。いいな? アゴラに5組の家族が集まってきた。家族構成はバラバラじゃ。赤子がいる者もいれば……」
「そうだ。えーと、5組の家族かあ」
謎解きモードに引き戻されたパリスは、地面に向き直った。
「ストーップ! 親父!」
怪物の息子らしい旅人が割り込んだ。
「パリスさんよ。親父のトラップに騙されるな。家族が5組とかはどーでもいい。重要なのは後半部分だぜ」
赤子は4本足、大人は2本足、老人は3本足じゃ。
アゴラには全部で15人。
人の足の数は全部で40本。
足の中には、杖が4本含まれておる。
赤子と大人と老人は、それぞれ何人じゃ?
懸命な読者の方は前話でとっくに答えを出しているだろうから、飛ばしていただいて構わない。
「ああ、なるほど! で、でも……足の数と人数はわかっても……」
「杖が4本ってことは、老人の人数は決定だよな?」
「そうか! 杖の数と老人の数は一緒……じゃあ老人は4人で決定! あとは赤ちゃんと大人が11人」
「そうだ。足の数も絞られるよな?」
「うん! つまりこういうことだね」
パリスは地面に木の枝で記した。
大人と赤子の足の数
= 40本 - 老人一人の足3本 × 老人の人数4人
= 28本
相変わらず、ヘクトルとナウシカは、呆然としている。
「そうだ。お前さん、察しがいいじゃねえか」
「えーと、赤ちゃんは10人以下……いや足の数が28本に絞られたから……28÷4=7人以下だね。うーんと……」
「こういうことだろ?」
中年男は、地面に書き加えた。
赤ん坊の数 + 大人の数 = 11
4本 × 赤ん坊の数 + 2本 × 大人の数 = 28
「そうか! 待って、この続きは僕に任せて」
パリスは、生き生きと木の枝を動かす。
4本 × 赤ん坊の数 + 2本 ×(11-赤ん坊の数)= 28
だから 2本 × 赤ん坊の数 =6本
「できたよ! 赤ちゃんは3人。大人は8人。お年寄りは4人だ!」
赤子は3人、大人は8人、老人は4人──
パリスの答えにスフィンクスは大きく頷く。正解のようだ。
怪物は中年男に向き直った。
「息子よ。お主、少しはできるようじゃの?」
「親父、言ってただろ? こんなの簡単な一次方程式だって」
謎の男も笑った。
「ふはははは。まだまだこれも導入問題じゃ。さて、次は神殿の謎じゃ」
さきほどから全く活躍していないリーダーが前に進む。
「おい! パリスは謎を解いたじゃないか! いい加減に道を通せ」
「そうだとも、卑怯ではないか! お前は誇り高い守護者ではなかったのか?」
計算はいまひとつだが、攻撃力の高いメンバー二人が剣を構えて、怪物に食って掛かる。
が、スフィンクスの前に、中年男が立ちはだかった。
「わるい! どうか、しばらく親父のわがままにつきあってくれねーか?」
「そこを退くのだ、旅人よ。我らの旅に、怪物と戯れる暇はない」
剣を構えたヘクトルは、王子モードに変身して男に迫る。
「ヘクトルの言うとおりだ! 私たちは三つも謎に付き合った」
ナウシカは通常モードで、正義を訴える。
が、この緊張感を田舎の狩人が破った。
「おじさん、わかった。僕、なんか楽しくなってきた。もう少し、スフィンクスさんに付き合うよ」
中年男は、顔をほころばせた。
「へー、パリスさん、あんた、いい人だ。見直したよ。女に惑わされて戦争を引き起こしたロクでもないお坊ちゃんって思ってたけどさ」
場の空気が凍り付いた。
──パリスが、女に惑わされ戦争を起こす?
謎の男の発言に、王子と王女は眦をつりあげた。
「ふざけんなよ!」「愚かなこと言うな!」
侮辱された当人は、青ざめて硬直する。
「パリスさん。わりいわりい。あんたは、俺たちが知ってるパリスとは別人だ」
中年男は慌ててフォローに走った。
田舎から出てきた狩人、そしてヒポクラテスから医術を学んだ見習い医師は、青ざめた顔をあげて、怪物に向き直った。
「スフィンクスさん、次の謎を!」
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