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番外編 ムーンストーン編集部

第4話

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 仕事、仕事。

 気が付けば、恋愛よりも仕事を優先していた。



 プライベートを大切にできそうになかった。

 家でも、書類仕事をしていた。

 しかも、この書類には、締め切りがある。

 締め切りが、早いものから取り掛かろうと思い、

 明日が締め切りの書類から終えて、

 明後日が締め切りの書類の順に終えることにした。

 明後日の次は、明々後日だ。



「つっきー」

 空気を読まないほっしーが、しゃべりだす。

「いつまで、仕事しているの?」

「もうすぐで終わるから」

「いつも、そればっかで、終わったことなんてある?」



 ない。

 ほっしーを、何日も待たせてばかりだった。



 仕事ばかりで申し訳ない。

 僕は自分のことばかり優先するようになっていた。

 自分が逆の立場なら、自分のことを優先してほしいとか思うはずなのに、どうして?



「ほっしー」

「どうしたしたの?」

「呼んでみただけ」

「何でだよ?」

「なんとなく」



 こんな仕事辞めてしまいたい。

 でも、辞めてどうする?

 現実から逃げたくなる自分がいた。

 いつも、いつも激務に追われると嫌気がさしてくる。



「ほっしー、こんな僕、嫌いかな?」

「なんで、そんなことを聞くの?」

「恋人失格なことしてるから、

仕事で忙しいとか、ほっしーのことが好きなのに、ほっしーを大事にしたないよな」

「そんなことないよ。仕事しているつっきーも、かっこいいよ」



 意外な返答だった。

 もっと違った答えが返ってくると思っていた。



「つっきーが仕事してくれるおかげで、

助けられる人がいるなら、

つっきーはだれがなんと言おうとヒーローだよ。



世の中、仕事してくれる人がいないと、成立しないんだよ。



工事とかだれがしてくれているの?

家で生活できるのは、どうして?



それはね、仕事してくれる人のおかげと思うことにしている。

だから、つっきーも仕事している自分に自信持ちなよ」



 ほっしーが、そんな発言をするとは思わなかった。

 そうだ、僕は自分を責めることではない。

 仕事を早く終わらせて、ほっしーにかまってやるんだ。

 ほっしーにかっこ悪いところ、見せたくないから。



 僕は仕事を終わらせて、普段使わないような有給を、ほっしーのために使うことにした。

 休みの日くらいは、ほっしーとの時間を作ってあげたいと思っていたから。



「俺、つっきーのことが好きだよ」

「僕も」



 ほっしーの表情が、前よりも明るくなってきた気がする。

 言動もポジティブに変わりつつある。

 ほっしーは、急にどうかしたのだろうか?



 月と星がひとつになれたらいいのにな。

 そしたら、無敵になれる気がする。
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