上 下
88 / 393
番外編 トパーズ編集部

第1話

しおりを挟む
 俺は、トパーズ編集部の麗《れい》。

 よく下の名前に間違われるが上の名前だ。

 11月生まれのいて座。

「潔癖」「社交的」と言われる。



 現在、俺に恋人はいない。

 恋人なんて考えられない。キスしたりなんて汚いというか生理的に受け付けない。

 俺はボディタッチとか嫌うし、性欲もない。女の子の裸にも水着特集にも興味がない。

 多分、世間で言うアセクシュアルなんだと思う。



 職場関係は悪くない。むしろ良好な方だ。

 新入社員に仕事を教える係も任されている。

 俺はベテランと言う程でもないけど、仕事を教えられる程のスキルはある。



 恋をしてみたいのはある。だけど、恋がどういったものか経験したことがない。

 俺の好きな人、か。

 好みのタイプもわからないしな。



 俺には言い寄ってくる人はいる。

 編集長(男)、

 新入社員の女の子、

 社長の娘、

 仕事をバリバリこなすキャリアウーマン、

 トパーズ業界で売上上位の売れっ子BL少女漫画家(男)、

「トパーズと言えばあの小説」と有名になるくらいベストセラーを果たした小説家(男)、

 などにモテている。

 女のみならず男からも‥‥、俺はどんな恋愛体質をしているのだろう?



 まともな奴いないんだろうか?

 今までに会ったことないような‥‥、今まで経験したことないような‥‥。

 俺が飽きたりしないような、呆れたりしないような恋愛があるかなって。

 イケメンとか顔で選ばなくて、表面的な性格にだまされなくて、欠点を含めた上で好きになってくれる人だよ。



 俺は、一人の男に恋してしまった。

 少年漫画編集部の戌乃《いぬの》さん。

 戌乃さんもモテ男なわけだから、俺なんか相手にしてくれるかな?

 戌乃さんは流石に男にモテたりはしないけど。



 戌乃さんのどこを好きになったかは、今までに会ったことない人だから。

 冷たいわけでもないけど、優しいわけでもない。

 爽やかで包容力があるところは、話してみただけでわかる。

 問題はそんな俺を好きになれるかって話なんだよ。



 戌乃さんと話す機会はある。
 
 俺は自他共に認める社交的だから、会話することに抵抗はない。

 ただ、戌乃さんは俺を意識してないかもしれない。

「麗さんは好きな人はいますか?」

 こんな質問投げかけて来ないでほしい。

 俺が好きなら「俺のこと好きですよね?」が常識な気がする。

「多分、いないです‥‥」

 俺は何を言っているんだ?

 好きなら言えばいいのに。 言わなきゃ伝わらない‥‥。 伝わらないはずだけど、口が違う方に動いた。

「そうですか。 もしかしたら、いずれ誰かを好きになるかもしれませんね」

 何を言いたいんだろう?

「そうだといいですね」

 きずけよ、俺は戌乃さんが好きなんだよ‥‥。



 この恋は片想いになるのかな?

 しょうがないよね。俺がはっきり言わないから、言わないのにわかれなんて無理があるよ。



 戌乃さん

 独身

 20代

 彼女はいないとのこと

 性格は天然、爽やか

 自分のことを「天然」とか言うか?
 俺は、心の中でそう呟いた。

 もしかしたら、天然を狙っているのかもしれないので、ここは何も言わないでおこう。


 これだけのことは聞くことができた。
しおりを挟む

処理中です...