異世界勇者~それぞれの物語~

野うさぎ

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番外編 美属性兵隊

第2話

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 何故名前に雨がつくんだろう? 
 雨が降った日に生まれたかららしい。なら、もっとまともな漢字にしてよね。
 今日は雨かあ。雨は好きではない。雪とか、雷とか、晴れとか、その方がいいな。

 傘をさしながら歩いていると、
「美属性兵隊‥‥」
 と囁く声が聞こえた。
「美属性兵隊候補だな」
 どこから聞こえるかわからないし、学校帰りだから誰かがふざけて言っているのかも。
「無視するな。いるのはわかっている」
 なんかこわい。関わりたくない。
 関わらないのが一番だね。
 よし、お得意って程でもないけど、中学生がよくやる聞こえないふりをしよう。小学生でもよくやっていた気がするけどまあいいや。
「こうら、待たんかい」
 待たない。待つわけない。
 
「仕方ない。力ずくだ」
  次の瞬間、怪物らしきものが姿を現したら、すごく巨大で‥‥。
 アニメとか漫画なら恐ろしさのあまり「きゃああああ」と叫ぶかもしれないけど、ウチはあまりの恐ろしさに声すら出せなかった。
「ここで終わりや」
  こわい。とにかくこわい。
 「待つのよ」
  一人の和服を来た少々が現れた。
「デカデカと現れたわね」
「デカデカとは失礼な!貴様も皆殺しだ」
「させない!」
 というものの、和服の少女が怪物にやられそうだった。
 どうしよう?あの子じゃ勝ち目がなさそう‥‥。なら、ウチが素手で戦うとか?あんな格闘技術ないよ。
 そうだ、傘がある。傘なら‥‥。
 傘を怪物に振ろうとした瞬間、「ちょい待ち」という声が後ろから聞こえた。

「あいつに勝ちたいんかい?」
 なんだ、こいつ?
 筋肉質の子供がいる。
「どちら様でしょうか?」
「美属性兵隊を雇う者だ」
「美属性兵隊って‥‥?」
「美人たる兵隊。どんな人でも変身したら可愛くなれる」
「あの‥‥ウチも戦うの?」
「戦うしかないだろうな」
「勝てるのかな?」
「本人次第だ」
「あれ、強そうじゃない?」
「そんなんでもない。最弱な方と思われる」
「あの子、負けそうだよ」
「攻撃に向いてないタイプもいるからな」
「ウチは攻撃に向くの?」
「なってみなくてはわからない。
あの小娘の場合、戦うことに向いてなくても浄化を得意とするからな」

 ウチはどうしたらいい?
 戦ったとしても、強いなんて保証はない。無敵なんて辞書は、アニメだけしかない。
 戦う以外に方法はないの?
 そうだ‥‥!

「戦う以外に解決策はないの?」
「あるにゃある」
「どんな?」
「それは、人類が逃げ延びることだ」
「それ、解決策?」
「ひとつの解決策だ。
我々には戦うなんて一筋の選択肢なわけない。逃げることも、新しい対抗策を考えるのも、選択肢。
人類が戦争をしていた頃に、戦う以外の選択肢を見つけられたから今がある」

「もう、戦い終わっちゃとたよー」
 和服の少女がこっちにやってきた。
「もう?」 
 ウチは何もしてないのに‥‥。
「話長いわよねー。
決めるならちゃっちゃと決めてよ。
今回は良かったけど、最強のボスと戦うってなったら、じっくり話し込むことなんてできないからね」
「あの‥‥」
「助けようとしてくれたの?ありがとう。
だけど、これぐらいで負けたりなんかしないわ。
もし、本当に強いやつが現れたら今度こそ迷わないように。
あと、戦う気がないなら美属性兵隊の関係者にならないでよ。いるだけなのはごめんだから」
 気が強そうな感じがするな‥‥。
「君は‥‥助けてくれたんですか?」
「否定するつもりも肯定するつもりもないわ」
 どんな反応をすればいいんだか‥‥。
「じゃあね。いつかまた会えるといいわね」
 そう言って、和服の少女が高く跳んではどこかへ行ってしまった。

「自己紹介が遅れたな。
オイラは、そるだ。よろしくな」
「ウチは、雨瑚」
「雨瑚って漢字はなんて書く?」
「あは雨の方で‥‥」 
「雨かあ。美属性兵隊で、雪瑚《ゆきこ》、雷瑚《らいこ》とか晴瑚《はるこ》、曇瑚《くもこ》もいたもんだ」
「漢字は珊瑚の瑚の方?」
「そうだ。今度、連れて来ようか?
いきなり美属性兵隊なんて言われても何のことだかわからないだろうし、ここは経験者に聞くのが一番だな」
「うん。
さっきの和服の子は、名前なんて言うの?」
「オイラもわからないんだよな。
正体不明なんだ」
「そうなの?」

 これからどうなるんだろう?
 とにかく、今決めることはできそうにないよね。
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