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番外編 ベッドの上の花婿

第2話

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「あー、ヨミタンだ!」

「げっ‥‥」

 向こうから声が聞こえる。

 そして、ドタドタと大きい足音が聞こえた。

「人んち、勝手にがりこんでくるなって」

「人じゃなくて、人外のくせに」

 そして、「お邪魔しまーす」と俺がいる部屋に入ってきて

「うわあ、誰?何やってるの?」

「ちっ、見られちまったか」

「ヨミタン、こんな趣味があるの?
知らなかった‥‥」

「趣味じゃないわ!」

「助けて‥‥」

 今なんだ。助けを呼ぶのは。
 だけど‥‥この子‥‥

「助けるって何を?」

 きょとんとしていた。

「見たからには無事でいられると思うなよ」

「ヨミタン、弱いじゃん?
これで戦う気なの?」

「うるさいわ!今すぐ貴様を抹殺して‥‥」

 「危ないよ‥‥」

「危なくないって」

 ヨミタンが鎌を出した瞬間、女の子は鎌を蹴りで壊した。

「我の鎌があああああ」

「そんなに鎌脆いの?」

「脆くないわい。
貴様、どうしてくれる?」

「わー、弱っ!」

「腹正しいやつだ」

「あの‥‥助けてくれたんですか?」

「助ける?何を?」

 駄目だ、この子、天然なのかな?

「とにかく、この枷‥‥外してくんないかな?」

「枷?これね、いいよ」

 女の子は枷を外すどころかチョップで壊した。

 チョップで壊れるか?

 女の子はめちゃくちゃ巨乳だ‥‥。何カップぐらいあるんだろう?

 今こそ逃げる時だ。

「どこ行くの?守羽」

「どこでもいいよね?」

「守羽、我の花婿に‥‥」

「ならない」

「わー、ヨミタン、面白いね」

 俺は、いざという時頼りになりそうな女の子の腕を引っ張って逃げた。

「待たんかー」

 俺はどうにかして館を出た。

「君は、ヨミタンと戦えるの?」

「ううん、ヨミタンが弱いだけよ」

「君はだあれ?」

「わたくしは、雷呼《らいこ》」

「雷呼って言うの?
僕は、李《り》守羽《しゅばね》」

「どうして、君はヨミタンのところにいたの?」

「さらわれてたのよ。
そうゆう雷呼こそどうして‥‥?」

「わたくしは、兄が来ていると聞いて‥‥」

「兄?」

「そうよ。
多分、そろそろ来る頃かな」

そそくさと草むらから、一人の心の幼い男の子が現れた。

「お兄ちゃん」

「雷呼」

 だけど、お兄ちゃんと雷呼、だけど雷呼がお姉さんに見えた。

 何故なら、雷呼の方が明らかに背が高いから。

「紹介するわね。
お兄ちゃんの‥‥」

「炎《えん》トです」

 炎トは、物静かに答えた。

「李 守羽よ」

 何なんだ、この兄妹?
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