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第1章 幼稚園から始まる悲劇

第13話 爆弾魔の正体

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 私は、ペングウィーの案内を頼りに、クライム地方に向かう。

「本当に行くのか?」

「ええ」

「正気か?」

「修行で鍛える時間を使うことの方が、正気かどうか疑うわ」

「どうして、そんなことを?」

「コレイトやサルヴァトーレ、私は今すぐに助けなくちゃいけないって思ったから。

修行までやっていたら、どうなっているかわからない」

 こうして話している間にも、爆弾の音が聞こえた。

「ここは、おそらく、クライム地方だ」

 私は背中に背負っていた槍を構えた。

「爆弾なんて、跳ね返せばいいのよ」

「無理だって。

爆弾なんて、一斉に跳ね上がるんだぞ?

まず、逃げ切れるかどうか」

 爆弾の音があっちこっちから聞こえる。

「きゃー」

 悲鳴のした方に走る。

 黒いものがいくつも転がっていた。

「間に合わなかったようね」

 ペングウィーは、なぜか震えていた。
 もしかして、こわがっている?

「ペングウィー、無理してついてこなくてもいいんだよ?

私一人でも、救いに行くからさ」

「セリオだけに任せておけない・・・・」

「ペングウィー、君は何もしなくてもいいわ。

危険だと思ったら、隠れてもいい。

逃げてもいいわ」

「君は、いつも無謀すぎる・・・・」

「あれえ、お嬢ちゃん?」

 振り返ってみると、知らない男の人がいた。
 手には空っぽのお酒のボトルを持っていた。

「こんな所で、何をしているんだ?」

「ある人と、精霊を探しているんです。

何か知りませんか?」

「そんなことより、俺と遊ばない?」

 こうして、私の左手を掴んだけれど、右手を使い、槍で振り払った。

 そしたら、男の人は吹っ飛んでしまった。

「私は、君なんかにかまっている時間はないの。

今すぐに、救いが必要な人がいるの。

遊んでいる暇があるなら、よそでやることね」

「セリオ、やっぱり君は強いよ。

クライム地方の酔っ払いを一撃で」

「私は、このまま行くわ。

これから、爆弾は落とされるのか、投げられるのか知らないけど、これからも何人も犠牲になると思う。

だから、これ以上、被害が出る前に元凶を突き止めて、倒すつもりなんだよ。

ペングウィーは、どうする?

強制はしないわ。

私と一緒にいたいならいればいいし、どうしても無理なら伯父さんの所に向かえばいい」

「おいらも行くよ・・・・・。

おいらは、セリオの相棒で、護衛を任されている。

ここで、放置するわけにはいかない・・・・」

 明らかに、頑張っている。
 仕方ない。
 ここは、ペングウィーを守りながら戦うことにするか。

「ペングウィー、君を巻き込まないように頑張るわ」

 私は、彼を安心させるためにそう囁いた。
 だけど、どういうわけだが、返事がなかった。

 クライム地方で爆弾の襲撃にあいそうになるところを、何度か槍で振り払った。

「ありがとうございます」

 その度にお礼を言われる。

「セリオ、君は才能の塊だ。

爆弾を跳ね返すなんて、逸材は聞いたことげあるけれど、実際に目にしたのは初めてだ。

これは、君の伯父に当たるスコーポも獲得していないんだ」

 これはほめているのか、嫌みなのかわからない。
 だから、どんな反応をしていいのかわからなかった。

「爆弾を跳ね返ることも、潰すことも、私には簡単なことなんだよ。

被害を少しでも増やしたくないと思えばね」

 こうして、私は数々の爆弾を跳ね返したり、それが難しい時は、爆弾を壊して、すぐに避けたりの繰り返しだった。

「ほう、爆弾が機能しないのは、こういうことか」

 手に爆弾を持つ男が現れた。

 その時には、ペングウィーはすでに瓦礫に身を隠していた。

「君は・・・・?」

「おらは、ボンバ。

爆弾専門の殺し屋だ。

もしかして、おらの策略を邪魔してないか?」

「策略・・・・?」

「おらは、爆弾で被害がでることが楽しいけれど、それを防いだりしてないかってことだ」

 ここは、正直なことを言うと、事を大きくしそうだ。
 だけど、嘘をついてもいけない気がした。

 ここは、事実を隠した上で話そう。

「どうなのかしらね。

爆弾の向かう先が、どうなっていったのかなんてわからないんじゃない?

それに、爆弾なんてそんな簡単に防ぐことなんて、できるのかしら?」

「それもそうだな」

「私は、そんな明確にできないようなことを語りに来たわけじゃないわ。

ここに、少年と精霊は来ていないかしら?」

「精霊?

少年?」

「そうよ。

君は何か知っていることはない?」

「ないな。

少年なんて言われても、そこらへんにいたし、どの子をさしているのやら。

精霊なんて、おらは見えないんだ」

「見えないなんてことあるの?」

 マイスターさんや伯父さんも見えたし、私も見えた。
 だから、だれでも精霊の存在は身近にあるものだと思っていた。
 見えないなんてこと、初めて聞いた。

「精霊の存在を認識できないんだ」

「認識できない?

そんなことなんてあるの?」

「何を言ってるんだが。

精霊は、全ての人に見えるわけじゃない。

存在を認識できるようになるために、条件があるみたいだが、おらはそこらへんは興味がないから知らん」

「ということは、いても気づかなかったということ・・・?」

「そうかもな。

おらは、精霊なんてどうでもいいし、人の死骸さえ見れれば満足だ」
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