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02 ある男の英雄譚
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(1)
「あるところに、一人の冒険者がいました。その冒険者は小国、西の国では、剣術の達人よりもその剣は重く速く、超一流の魔法使いの技すらも打ち返す繊細な剣技、どんな武術家の攻撃もかわす身のこなし、千年生きた、愚者自称の大賢者よりも闘いの知識があったのです。彼はいつしか西の国、一番の剣士になっていました」
「彼は知らぬ間に、ある名で呼ばれるようになりました。西の国で最強の男、西強」
「彼はこの通り名が、悪くないと思った反面。俺は西で止まる男ではない。そう思い、国王から貰った西強に渡される剣、それ持ったままに、故郷の西の国を離れました。東南西北・中華、全土最強を目指して彼は旅を始めました」
「幾度となく自分より強者・強敵に遇い、手合わせを願い、負けました。その都度、心折れ挫折しました。そのたびに彼は、弱い少し前の自分を殺し、新しい自分を心に作りました」
「彼は自分に言い聞かせました。今しかないと」
「今しかないと、そう思い、ただひたすらに剣を振り、剣を振り、剣を振りました」
「東最強の武器使いを倒し、南最強の武術家を倒し、北最強の魔術師を倒し、残りは中華だけになりました」
「中華最強の龍使いは言いました」
「私の娘に勝ったら、仕合せしようと」
(2)
布団の上でこのガキの体は横になっていた。
木製の天井が茶色なのも分からない程に、部屋は真っ暗だった。
・・・・・・。
寝ていた。
話が退屈だった訳ではない。あまりに今日がハードだったのだ。
この体が俺の鍛錬にそぐわなかったのだ。
俺はアーシャが読み聞かせた内容を思い出すも、竜使いがどうとか、そんなところまでしか記憶にない。体が貧弱、それどころか頭、記憶容量までも貧弱。
今すぐに記憶容量を増やすことはできないか。
今だ、今なのだ。今すぐなのだ。
この軟弱でキュートな体及び頭脳を、屈強な漢の頭脳にするハードな修行はないのか。
導かれた結論。
それはシンプルだった。
「おい、起きろアーシャ」
父レイは、朝一番に声を上げた。
「何よレイ、もしかして私、寝坊でもしたのかしら」
「そんなことはない、まだ一番龍すら鳴いたばかりの時間だ。それよりアレンが、だ」
父親は驚愕した。
零歳の息子が、座禅をしたまま気絶、寝ていることを見て、驚愕した。
「あら、見事な座禅ね」
「見事じゃないだろ、偶然でもこんなポーズで寝るガキがいるか。うちは寺や教会じゃないんだぞ。もしかしたらこいつ、前世は修行僧かもしれんな」
「まぁそうね、でもなんか今日までの感じでそんな気もしてたのよ」
「そ、そうか? アーシャはアレンのことそう思ってたのか」
「違うわよ」
アーシャはアレンに近づくと、続けて、
「ふふ、座禅しながら漏らしてるじゃない」
「やっぱりただの赤ちゃんね」
と満足気に言うのであった。
「あるところに、一人の冒険者がいました。その冒険者は小国、西の国では、剣術の達人よりもその剣は重く速く、超一流の魔法使いの技すらも打ち返す繊細な剣技、どんな武術家の攻撃もかわす身のこなし、千年生きた、愚者自称の大賢者よりも闘いの知識があったのです。彼はいつしか西の国、一番の剣士になっていました」
「彼は知らぬ間に、ある名で呼ばれるようになりました。西の国で最強の男、西強」
「彼はこの通り名が、悪くないと思った反面。俺は西で止まる男ではない。そう思い、国王から貰った西強に渡される剣、それ持ったままに、故郷の西の国を離れました。東南西北・中華、全土最強を目指して彼は旅を始めました」
「幾度となく自分より強者・強敵に遇い、手合わせを願い、負けました。その都度、心折れ挫折しました。そのたびに彼は、弱い少し前の自分を殺し、新しい自分を心に作りました」
「彼は自分に言い聞かせました。今しかないと」
「今しかないと、そう思い、ただひたすらに剣を振り、剣を振り、剣を振りました」
「東最強の武器使いを倒し、南最強の武術家を倒し、北最強の魔術師を倒し、残りは中華だけになりました」
「中華最強の龍使いは言いました」
「私の娘に勝ったら、仕合せしようと」
(2)
布団の上でこのガキの体は横になっていた。
木製の天井が茶色なのも分からない程に、部屋は真っ暗だった。
・・・・・・。
寝ていた。
話が退屈だった訳ではない。あまりに今日がハードだったのだ。
この体が俺の鍛錬にそぐわなかったのだ。
俺はアーシャが読み聞かせた内容を思い出すも、竜使いがどうとか、そんなところまでしか記憶にない。体が貧弱、それどころか頭、記憶容量までも貧弱。
今すぐに記憶容量を増やすことはできないか。
今だ、今なのだ。今すぐなのだ。
この軟弱でキュートな体及び頭脳を、屈強な漢の頭脳にするハードな修行はないのか。
導かれた結論。
それはシンプルだった。
「おい、起きろアーシャ」
父レイは、朝一番に声を上げた。
「何よレイ、もしかして私、寝坊でもしたのかしら」
「そんなことはない、まだ一番龍すら鳴いたばかりの時間だ。それよりアレンが、だ」
父親は驚愕した。
零歳の息子が、座禅をしたまま気絶、寝ていることを見て、驚愕した。
「あら、見事な座禅ね」
「見事じゃないだろ、偶然でもこんなポーズで寝るガキがいるか。うちは寺や教会じゃないんだぞ。もしかしたらこいつ、前世は修行僧かもしれんな」
「まぁそうね、でもなんか今日までの感じでそんな気もしてたのよ」
「そ、そうか? アーシャはアレンのことそう思ってたのか」
「違うわよ」
アーシャはアレンに近づくと、続けて、
「ふふ、座禅しながら漏らしてるじゃない」
「やっぱりただの赤ちゃんね」
と満足気に言うのであった。
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