喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉

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070.接触

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「満腹~」
 昼休憩を先に済ませたリッキーとライルがオオカミ厩舎に戻ってきた。
 真っ赤な顔のヒナと大人しいオオカミ。
 甘い魔力。

「ちょ、ちょっとランディ、ナニコレ」
 ひーくんに何したの? とリッキーは駆け寄った。

「何もしてないよ。オオカミ達が悪戯しただけ」
 自分は何もしていないと微笑むランディ。

「えぇ? 本当?」
 疑うライルにヒナはこくこくと頷いた。

「さぁ、俺達もお昼に行こうか」
 手を差し伸べ柵からヒナを出すとオオカミ達は一斉に柵の前に並ぶ。
 尻尾がショボンと下がり、まるでヒナに行かないで! と言っているかのようだ。

「ひーくん、大人気」
 リッキーが急にお利口になってしまったオオカミ達を笑う。

「ご飯食べたら戻ってくるからね」
 ヒナが1匹のオオカミの頭をナデナデすると、オオカミはキャウと返事をした。

「あ、ジョシュがまだ食堂で食べているよ。奥の方の席」
 いってらっしゃいと手を振るライル。
 ランディとヒナはいつもの食堂へ向かった。

 今日は鮭のムニエルとクラムチャウダーを手に取った。
 小食なのにデザートのミカンゼリーを取るヒナをランディが笑う。

「ヒナ、ジョシュの近くに座って。でもジョシュには話しかけずに俺を待って」
 先に席へ行ってほしいというランディにヒナは頷いた。
 ランディはジョシュに何かを合図すると肉料理の方へ向かって行く。

 ヒナはジョシュの斜め前に座った。
 言われた通りジョシュには話しかけない。
 ジョシュもヒナを見ずに黙々と食事をしていた。

 ランディが来るまでお茶を飲んで待つ。
 ヒナは大きいお皿を取ったランディの姿を目で追った。

 なんだろう? あの料理。
 No.1ホストのような見た目なのに、やっぱり食べる量はすごい。
 斜め前のジョシュも肉料理を3皿も取っている。
 もうほとんど残っていないけれど。

「ねぇ、君」
 急に後ろから話しかけられたヒナの身体がビクッと揺れる。

「えっ?」
 ヒナは慌てて振り向いた。
 ゆっくり見上げると声の主はイワライだ。
 今は白衣を着ていない。

「もっと条件の良い所へ行く気はない?」
「条件……?」
 条件の良い所とは何の事だろうか?

「えっと、それはどういう……?」
 ヒナが聞き返すと、逃げるようにイワライは姿を消す。

「えっ? 待って?」
 ヒナが立ち上がりイワライを追いかけようとすると、ずっと黙っていたジョシュがヒナを止めた。

「ランディが歩いてきたから逃げた」
 何だアイツ? と逃げた方向を見る。
 もうイワライの姿はどこにもなかった。

「……接触してきたね」
 食堂に来る途中、後をつけていた白衣の男に気づいたランディはわざとヒナから離れ、ジョシュにヒナを任せた。
 頻繁にオオカミ厩舎を見ている彼がジョシュを武官と認識しているかどうかは賭けだったが。
 ヒナとジョシュが会話をしないので、無関係の人物だと思ったのだろう。

「後で話そう」
 何事もなかったように食事を済ませ、ジョシュが先に席を立つ。
 おそらくもうイワライは見ていないだろうが、ジョシュは関係ない人物だと思わせておいた方が今後も都合が良い。

 オオカミ厩舎に戻ったランディとヒナは、ジョシュとオオカミの柵の中で話をすることにした。
 ライルとリッキーを厩舎の入口2か所に立たせ、誰も入って来ないようにする。

「彼は何て?」
「もっと条件の良い所へ行く気はないかってさ」
 ランディの質問にジョシュが答える。

「……条件の良い所?」
 一体何の事なのか。
 ヒナも心当たりはないと首を横に振った。

「彼と面識は?」
「昔、アレクの家庭教師だったそうです。お兄様とも仲が良くて」
 中央公園で1回会ったのと、金曜にディーンに送ってもらったら鉢合わせした事が1回あるとヒナは答えた。

「話した事は?」
「挨拶程度……」
 中央公園はワンピース姿で自己紹介程度。
 文官はズボンに眼鏡で挨拶のみだ。

「もう少し隙を作り、接触させる」
「捕まえた方が早くないか?」
 ジョシュは危険に巻き込むくらいなら捕まえてしまえと言う。

「目的と後ろを探りたい」
 白衣の後ろにいるのは誰なのか、もしくはどこの国なのか。
 白衣を捕まえてもトカゲの尻尾切りをされては意味がない。

「リッキー、ライル、ノックスは今まで通りヒナと勤務。ジョシュは狼になってくれ。ヘンリーとヒースも狼で勤務させる」
 ヘンリーとヒースは茶色の狼。
 目立たず、オオカミの中に紛れる事ができるだろう。

 銀狼のランディは目立つため狼にはなれない。

「食堂は文官の方を利用し、ディーンを合流させる。数人の文官にも協力を頼もう」
 武官の顔はバレているが文官はおそらくバレていないだろう。

「ヒナ、彼の目的を探れるかい?」
「やってみます」
 イワライはアレクサンドロとユリウスの知人。
 環境局の方が働きやすいよという勧誘だったら良いけれど。

「アレクには?」
「知人を疑われたらイヤだろうね」
 もう少し目的を探れるまで黙っておこうと言うランディにヒナは頷いた。

「守るよ、絶対に」
 グレーの眼を細めて微笑むランディ。

「任せとけ」
 武官はあんなヒョロヒョロには負けないと笑うジョシュ。
 ミルクでベタベタの顔をヒナに見せに来るオオカミと、遊んでとボールを持ってくるオオカミ。

「ここより良い条件はなさそうです」
 ヒナが笑うとランディとジョシュはヒナの頭を撫でながら微笑んだ。
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