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第五章 天使と勇者と相棒と

第六十五話 戸惑い、共闘する

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「え…拓也?何でここに?」
「司…?」
「何に気を取られている」

ゴッ!と吹き荒れる爆風で俺達は壁に叩きつけられた。

「ッテー…」
「おい!無事か!?」
「ああ!…何でここにいるかはすっげえ気になるけど、それは後で!」

キンッ、と音をたてて司は今まで持っていた剣を構え直した。

「今は、コイツを倒す!!」
「…ああ!」

喜んでいる暇は無い。
俺も、持っていた杖を構えた。

「人間がウジャウジャと…厄介な。ほほほほ…しかし、愉快な愉快な」
「何が愉快だ!!人をこんだけ傷つけといて…よくそんなことほざけるな!!」

柄にもかかわらず司は怒り狂っているらしい。
殺気立っている。
…最も、それが分かるのは長年の付き合いからと、その体から溢れる魔力からだけど。

「聖剣よ…我の意志に答えたまえ!」
「…それっぽいもん出してきたな」

キイイイィン…と輝き出した剣を握りしめ、立ち向かう司。
が、

「それは、我らにとって赤子も同然」
「なっ!?」

バシンッと聖剣が弾き飛んだ。
カイルの周りには、バリアが張られていた。

「我らは魔法は使えぬが、術は使えるのだよ」
「クソッ」
「おい!司!一回落ち着けよ!…当たらない武器振り回しても意味ねーだろ」
「…分かってる」

司は聖剣を拾い上げ、地面を蹴り上げて後ろに飛んだ。
…勇者になってから異様な程に身体能力が上がってるな。

「ライトマグナム!」
「!」

吹き出した俺の唱えた魔法をかわすカイル。

「ウェル・スビナ・マディール・カタドレル」
「何をブツブツと!」
「リャグ・リョウゴゥラ!」

バババッと光の槍が集結した。

「これでもくらってもらおうかのぅ」

手を無慈悲にも振り下ろした。

ドドドドドッ!

「…あっぶな」
「助かったぜ、司」
「なに…」

光の槍を司が聖剣で振り払ってくれた。

「オリャアアアアッ」
「効かぬわ!」
「今だ!拓也!」
「なにっ」
「ブラックホール!」

司が身を引いた瞬間に魔法を発動したが、避けられてしまった。
…が、これで分かった事がある。

「お前、魔法はそのバリアで防げないんだな」
「………」
「いちいち俺の魔法だけは避けてるからな」
「大した観察力じゃわい」

ホッホッホと笑うカイル。
俺の予想は当たっていたらしい。

「…でも、確かあの金髪緑眼の天使は加護持ちは攻撃出来ないって言ってたけど、お前は俺達に攻撃出来るんだな」
「それは、わし…我がまがい物だからじゃよ」
「まがい物?」
「お前ら相手じゃと少々面倒。…ここは退かせてもらおう」
「!待てっ!」
「さらば…」

最後の一言を残すと、カイルは霧のように消えてしまった。

「………消えちまったな」
「ああ」

カイルのいた場所を見つめ続けていてもどうにもならない。
俺達は向き合った。

「拓也…久しぶりだな。てか、城追い出されたって聞いたけど、大丈夫だったのか?」
「大丈夫だったって。村を救った」
「村…?」
「ああ」

俺達は、語り合った。
互いにどんな環境に置かれていたのかを。
司はーーー勇者として最近本格的に活動し始めたらしい。
で、なんか…伝説の装備を探してるだとか。

「この聖剣も伝説の装備の一つさ」

見せてくれた聖剣は、光り輝いていた。

「…すげぇな」
「ん?」
「お前、今立派な勇者だよ」
「ハハハ…」

窮屈そうに笑う司。
無理やりなったのにも関わらずにその義務を果たすなんて俺は絶対無理だ。
でも、コイツはあっさりやってしまう。

「…!こんな事やってる場合じゃないぞ」
「ああ。残りの天使を倒さないと」

行こう、と言われ走り出した。
再会は嬉しい。
けど、今は喜んでる暇は無いのだ。
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