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第一章 勇者は親友、俺は平均魔法使い

第八話 ウルフとのバトル

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「うわあっ!?」

思わず横に転がるとその爪が地面に振り落とされ、突き刺さった。

「あっぶな~…」
「大丈夫か?」

ナナカが心配そうに俺を見る。
…普段なら嬉しいけどそんな場合じゃない。

「危ないナナカ!!」

ウルフがナナカに向かって来た。
とっさに闇魔法を放つが、視界が歪む。
だが、闇魔法は無事ウルフに当たり、ウルフがすっ飛んだ。

『タクヤ様!魔力の消費量が多すぎます!今すぐ水魔法に切り替えてください!』
「ええ!?」

さすがに無理だ。
なにもこう魔力の消費量の多い闇魔法を好きに考えなしにバカバカ使ってる訳ではない。
これ以外の攻撃魔法を知らないのだ。
ウルフは今体勢を立て直しているが、呪文を唱えている場合ではないのだ。
ウォーターボールは水を出す魔法だし、ホーリーキュアーは全てに万能な回復魔法らしいけど…
攻撃魔法じゃない!
取得は一回魔法を呪文詠唱すれば今後は呪文を唱えなくていいけど、残念ながら一回呪文とイメージを固めなくてはならない。

「っ…しゃらくせえ!風よ!圧縮しろ!エアガン!」

ナナカが、エアガンを放った。
エアガンとは風魔法を圧縮したもので、空気砲のようなもの。
相手を吹き飛ばすことが出来る。

「ギャインッ」

ウルフはエアガンに直撃するものの、すぐに立ち上がった。
そして…

「ウォォォォオオーン」
「!ガルル…」
「ワフッ!」

仲間を呼び寄せたらしく、気がつけばウルフたちが俺たちを取り囲んだ。

「くっ…!どうすれば!」

と、

『無詠唱で魔法を放ってください!そうすれば時間のロスは避けられます!』
「無詠唱!?」

なんじゃそのレベル高いのは!
ええと…確か…
俺は、村につく前に取得が言ってたことを思い出した。









あれは、追い出されて歩いていた時だ。

「なあ取得。この異世界でルールってあるか?」
『…魔法がありますね』
「魔法?」

マンガや小説で聞き慣れた言葉を、口の中で転がした。
魔法…
あのなんか、炎だしたり水出したりするやつ?

『そうです。魔法とは色々な属性があり、それによって使える範囲が広がります。タクヤ様は、「水」「光」「闇」「聖」の属性持ちですね』

あ。
そういえば…
あったっけ。

『魔法とは自分の才能も兼ねて放つものです。例えば…
炎は水に弱い。
これは分かりますね?』
「うん。草が炎に弱いとか?」
『そうです』

主にこうなるらしい。



水・・・炎に強く、森に弱い。
炎・・・森に強く、水に弱い。
森・・・水に強く、炎に弱い。
土・・・森、水に強く、炎に弱い。
光・・・弱点は闇。その他問題なし。
闇・・・弱点は光。その他問題なし。
聖・・・特になし。



「特になしって…」
『回復魔法ですから。ですが、なにかの呪いによって回復が阻まれることはあります』

ふ~ん。
魔法ってなんか深い。

『タクヤ様はいずれ無詠唱が出来るようになるかもしれませんね』
「むえいしょう?」
『…魔法とは、それぞれ呪文を唱える必要があります。ですが、無詠唱とは呪文を唱えずに魔法を発射することです。取得で一度唱えた魔法はイメージなしで発射可能ですが、無詠唱は普段より強力なイメージが必要ですよ。そのかわり、普段より魔法が強力になって魔族の軍隊なら一掃出来ますね』

…???

『まあ、いずれは分かります』

このときは、さっぱり分かんなかったっけ…









「えと…ナナカ。しばらくウルフ頼める?」
「ええ!?ま、まあ出来る限りやる」

ナナカがウルフを食い止めているうちに、早速やってみよう。
無詠唱はこの複数のウルフを倒すことが出来るだろう。

「えっと…」

まず。
血液が脳から血管を伝って流れていくのを想像する。
それから…
その血液を透明な、澄んでいる水に置き換えるイメージ。
そして水を手のひらへ…

『ほほう。面白そうなことをしとるな』

ふいに響いた声に振り返る。
姿は見えない。

「誰だ!?」
『どれ…水魔法を使うなら協力するぞ?』

なんか、助けてくれるらしい。

「お願いする!」
『では、我が名を唱えよ。我は青龍。この世の水を全て扱うもの』

青龍。
…どっかで聞いたような。
ええい!でも構ってられるか!

「青龍!!」

とたん、大量の水が滝のように俺の手のひらから溢れた。









「な…!な…!な…!」

ナナカがわなわなと体を震わせて俺を見る。
ううん、でも上手くよけたな~…
なぜかナナカだけをすり抜け、ウルフたちを一掃した自らの出した魔法の威力に感心する。
これでウルフが大人しくなり、話を聞いてもらえる。
が、
ナナカが叫び出す。

「呪文唱えないなんて、超高度な技術だぞ~!!?」

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