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オアシス 後編①
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次の日になると、彼女らはすっかり元気を取り戻していた。
「ミーナさん! なんでそんな大事なこと私に言ってくれなかったんですか! そんなことだったら私、すぐに飛んで行きましたのに!」
ミーナは、昨日の食事でのことをフィリカに話していた。
「いいじゃない。あなたも疲れていたでしょう?」
「そうですけど。それをやらせて頂いたほうが疲れも飛びました!」
「なに言ってるの、よっ」
ミーナはフィリカのおでこを、パチンと指で弾く。彼女は「いたっ」と声を出し、そこを両手で押さえる。
「······ミーナさん最近、私の扱いひどくなりましたね。······悪い気はしないですけど」
「この間ので、やっとあなたの本性が見え始めただけよ」
「本性だなんて、まったく、何言ってるんですか?」
「それのこと言ってるのよ、この猫かぶり」
今度は彼女のほっぺを、ぎゅーっと両手で引っ張るミーナ。
「や、やみぇてくじゃしゃいよぉ······」
そういう割には、彼女はどこか嬉しそうである。
そんな彼女らの様子を、前を歩くスライが隣のジャックに話す。
「あの子ら仲いいね。いつもあんな感じなの?」
「俺が会った頃からあんな感じだよ。ただ、最近はなんか、より距離が近くなった気はするけど」
「ふーん」
スライは、携帯していた水筒の水を飲む。
道のりを四分の三ほど越える頃、食料も水も残りが少なくなったため、彼らはソリを砂漠に捨てて、水筒やリュックに小分けをしていた。
「でもちょっとフィリカちゃん、ミナっちのこと好きすぎじゃないか?」
水で喉を潤したスライは、隣を歩く彼に囁く。
ジャックは日差しを避けるためのフードを被り、下を見ながらそれに答える。
「元々あいつはミーナに憧れて、魔力を覚えて身に付けるほどなんだ。それほどだから、たまに出る、ミーナが好きすぎるゆえの愛情だよ」
もう一度彼は後ろを振り返る。
今度は、抱きつくフィリカを、彼女が引き剥がそうとしているところだった。
「······そうならいいけど。――んじゃあ、美味しいもん食った時に変な声出す、あれはなんだ?」
「あれはちょっと変態なだけだ」
「変態って······。お前らにとっちゃ、もうそれが当たり前なのね······」
スライは頭を脱力させる。
それから五分ほど歩いて、一つの小さな砂丘を超えると、さらにその向こうに大きな砂丘が姿を現した。
「······ようやく見えてきたな。あの大きい丘を越えればザバだ」
「長かったな······」
そこの頂上には、目印となる二本の旗が立っていた。
スライは、少し離れて歩く後ろの二人にも声をかける。
「そこを越えればザバだ。もう少し頑張ってくれ」
二人は手を挙げて返事をする。
砂の勾配。最後の最後で立ちはだかるそれを、彼らは一歩一歩踏みしめて歩く。
それから五分ほどして、頂上まであと少しという所で、突然ジャックは走り出し、スライより先にその丘の頂上へと向かった。
「うおおおおおー!!」
テッペンについた彼はそこからの光景に、思わず声を漏らす。
「おぉー、すげぇー!」
無数に転がった巨大な岩。カゴやら何かを持って、岩にはめられた木のドアを開け閉めする人。近くには子供もいる。岩の形こそバラバラではあったが、砂漠に無数に転がる巨大な岩の一つ一つは、紛れもなく人の家だった。
「ホントに人が住んでるんだなー」
そして、彼の目をもう一つひいたものは、大きな土の円を中心に、砂漠とは思えぬほど絶え間なく、周りに生えていた緑だった。その中心には、男と思われる影が複数いる。
ジャックはその街を、不思議なモノを見る目で眺めていた。
そこにスライも合流する。
だが彼は、そんなジャックとは違い、その光景を見て血相を変えた。
「なんだよ······これ······」
彼は言葉を失っていた。
「どうしたんだよスライ。ここがザバだろ? すごいトコじゃないか」
「あ、あぁ······。でも······ないんだ······」
「えっ?」
「泉がないんだ、枯れて······」
そこに遅れてきた彼女らが合流をする。
「わぁ、すごいですね」
「ほんと。こんな急に現れるのね」
最初は驚いていた二人だが、彼らの表情を見て、様子を変える。
「なに、どうしたの?」
「泉――オアシスがないんだ······」
「どういうこと? ここでなにかあったの?」
「いや、俺にも分からない······。ただ本当なら、あの中心に水が広がってるはずなんだ······」
スライは、円の中心にいる男たちを指差す。
「······泉って、ザバには欠かせないものよね?」
「あぁ······」
「あの、それはつまり······ザバの生活に必要な水、全てがないってことですか?」
スライは小さく「あぁ」と言う。
それを聞いて、三人も言葉を失う。
ザバの水がない。それはつまり、彼ら自身にも飲める水がないという事に繋がる。そして、その先にあるのは······。
彼らが同じ事を考え、重い空気が漂う中、ジャックが最初に口火を切った。
「と、とりあえず行ってみようぜ。何が起きたかぐらい知っておきたいだろ?」
「······そうね。ここで指をくわえて見てても何も変わらないものね」
ミーナは気を取り直して、その泉のことを考える。
「でも、泉がなくなるなんて······そんなことあるのかしら? ······まぁいいわ。とりあえず行きましょう」
そうして僅かな希望を探して、三人は集落へと歩き出す。
だが、スライはまだ、ひとり立ち尽くしていた。昔、ここに水があることも知って、過ごしていたことのある彼にとってこの光景は、やはり、相当なものだった。
「······い、おい! スライ、行くぞ!」
彼は、ジャックの声で我へと返る。
「あ、あぁ······」
茫然自失ながら彼は、重い足で三人の後を追いかけた。
「ミーナさん! なんでそんな大事なこと私に言ってくれなかったんですか! そんなことだったら私、すぐに飛んで行きましたのに!」
ミーナは、昨日の食事でのことをフィリカに話していた。
「いいじゃない。あなたも疲れていたでしょう?」
「そうですけど。それをやらせて頂いたほうが疲れも飛びました!」
「なに言ってるの、よっ」
ミーナはフィリカのおでこを、パチンと指で弾く。彼女は「いたっ」と声を出し、そこを両手で押さえる。
「······ミーナさん最近、私の扱いひどくなりましたね。······悪い気はしないですけど」
「この間ので、やっとあなたの本性が見え始めただけよ」
「本性だなんて、まったく、何言ってるんですか?」
「それのこと言ってるのよ、この猫かぶり」
今度は彼女のほっぺを、ぎゅーっと両手で引っ張るミーナ。
「や、やみぇてくじゃしゃいよぉ······」
そういう割には、彼女はどこか嬉しそうである。
そんな彼女らの様子を、前を歩くスライが隣のジャックに話す。
「あの子ら仲いいね。いつもあんな感じなの?」
「俺が会った頃からあんな感じだよ。ただ、最近はなんか、より距離が近くなった気はするけど」
「ふーん」
スライは、携帯していた水筒の水を飲む。
道のりを四分の三ほど越える頃、食料も水も残りが少なくなったため、彼らはソリを砂漠に捨てて、水筒やリュックに小分けをしていた。
「でもちょっとフィリカちゃん、ミナっちのこと好きすぎじゃないか?」
水で喉を潤したスライは、隣を歩く彼に囁く。
ジャックは日差しを避けるためのフードを被り、下を見ながらそれに答える。
「元々あいつはミーナに憧れて、魔力を覚えて身に付けるほどなんだ。それほどだから、たまに出る、ミーナが好きすぎるゆえの愛情だよ」
もう一度彼は後ろを振り返る。
今度は、抱きつくフィリカを、彼女が引き剥がそうとしているところだった。
「······そうならいいけど。――んじゃあ、美味しいもん食った時に変な声出す、あれはなんだ?」
「あれはちょっと変態なだけだ」
「変態って······。お前らにとっちゃ、もうそれが当たり前なのね······」
スライは頭を脱力させる。
それから五分ほど歩いて、一つの小さな砂丘を超えると、さらにその向こうに大きな砂丘が姿を現した。
「······ようやく見えてきたな。あの大きい丘を越えればザバだ」
「長かったな······」
そこの頂上には、目印となる二本の旗が立っていた。
スライは、少し離れて歩く後ろの二人にも声をかける。
「そこを越えればザバだ。もう少し頑張ってくれ」
二人は手を挙げて返事をする。
砂の勾配。最後の最後で立ちはだかるそれを、彼らは一歩一歩踏みしめて歩く。
それから五分ほどして、頂上まであと少しという所で、突然ジャックは走り出し、スライより先にその丘の頂上へと向かった。
「うおおおおおー!!」
テッペンについた彼はそこからの光景に、思わず声を漏らす。
「おぉー、すげぇー!」
無数に転がった巨大な岩。カゴやら何かを持って、岩にはめられた木のドアを開け閉めする人。近くには子供もいる。岩の形こそバラバラではあったが、砂漠に無数に転がる巨大な岩の一つ一つは、紛れもなく人の家だった。
「ホントに人が住んでるんだなー」
そして、彼の目をもう一つひいたものは、大きな土の円を中心に、砂漠とは思えぬほど絶え間なく、周りに生えていた緑だった。その中心には、男と思われる影が複数いる。
ジャックはその街を、不思議なモノを見る目で眺めていた。
そこにスライも合流する。
だが彼は、そんなジャックとは違い、その光景を見て血相を変えた。
「なんだよ······これ······」
彼は言葉を失っていた。
「どうしたんだよスライ。ここがザバだろ? すごいトコじゃないか」
「あ、あぁ······。でも······ないんだ······」
「えっ?」
「泉がないんだ、枯れて······」
そこに遅れてきた彼女らが合流をする。
「わぁ、すごいですね」
「ほんと。こんな急に現れるのね」
最初は驚いていた二人だが、彼らの表情を見て、様子を変える。
「なに、どうしたの?」
「泉――オアシスがないんだ······」
「どういうこと? ここでなにかあったの?」
「いや、俺にも分からない······。ただ本当なら、あの中心に水が広がってるはずなんだ······」
スライは、円の中心にいる男たちを指差す。
「······泉って、ザバには欠かせないものよね?」
「あぁ······」
「あの、それはつまり······ザバの生活に必要な水、全てがないってことですか?」
スライは小さく「あぁ」と言う。
それを聞いて、三人も言葉を失う。
ザバの水がない。それはつまり、彼ら自身にも飲める水がないという事に繋がる。そして、その先にあるのは······。
彼らが同じ事を考え、重い空気が漂う中、ジャックが最初に口火を切った。
「と、とりあえず行ってみようぜ。何が起きたかぐらい知っておきたいだろ?」
「······そうね。ここで指をくわえて見てても何も変わらないものね」
ミーナは気を取り直して、その泉のことを考える。
「でも、泉がなくなるなんて······そんなことあるのかしら? ······まぁいいわ。とりあえず行きましょう」
そうして僅かな希望を探して、三人は集落へと歩き出す。
だが、スライはまだ、ひとり立ち尽くしていた。昔、ここに水があることも知って、過ごしていたことのある彼にとってこの光景は、やはり、相当なものだった。
「······い、おい! スライ、行くぞ!」
彼は、ジャックの声で我へと返る。
「あ、あぁ······」
茫然自失ながら彼は、重い足で三人の後を追いかけた。
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