透明人間の見えない生活 - invisible life -

ウタ

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1年 1学期

第6話 透明人間の情報 - invisible information -

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 班が決まると中嶋は初めて会った時と同じ不敵な笑みを浮かべていた。

「取り敢えず、今日は班長を決めた後に合宿のスケジュールを班で確認してくれ。」

 先生が指示を出すとみんな移動して班で固まった。俺たちも同じように集まったが、なぜか中嶋だけ教室の隅にいる。

「あの、中嶋君。班長決めるからこっちに来て」

「俺に構わず進めてくれ」

 若田さんが親切に声をかけたにも関わらず中嶋はその誘いを蹴って携帯をいじっている。そんな中、佐々木さんが切り出した。

「取り敢えず5人で話を進めよう。と言っても誰が班長に向いてるとか分からないけどね。」

「そんなことないよ。私は紗江ちゃん(若田)がいいと思う。昔から一緒にいるけど中学とかでも生徒会に入ってたしさ」

「ちょっとやめてよマッコ(相沢)。そんなこと言わないでよ。あんな人がいるのにまとめられないよ。」

若田さんが中嶋の方に向かって指を差す。

「俺は若田さんで決まりでいいと思うよ。スケジュール確認したら班行動って1日目だけって感じだし、もっと言うと昼のBBQ以外はあんまり仕事ないからそんなに大変じゃないと思う」

「蔭野もうスケジュール見たのか?蔭野が言うなら俺も若田さんに一票」

高宮はテキトーに何でもいいやって感じだけど俺からすれば自分以外なら誰でもいい。俺が班長なんかすると絶対中嶋と揉めるからな。

「大変じゃないなら誰がやってもいいと思うけどそう言うなら私がやるわ。それじゃあ、みんなで旅程を確認しましょう。」

てな感じで話し合いはスムーズに進んだ。

—————————————————————

 生徒が班になって話し合っている間、谷内は職員室に呼び出された。緊急の職員会議が開かれるそうだ。職員室に入ると先生たちが厳しい目で見ている。

(心当たりはないが、何かしたかな?それともクラスの生徒が何か問題を起こしたのか?いや、それはないな)

などと考えていると教頭が口を開いた。

「谷内先生、1学期に入る前の職員会議で話し合ったことを覚えていますか?」

「て言うと先週の職員会議ですよね。入学式の段取りを確認しました。」

「それもそうだが、君にとってはもっと重要なことがあっただろう。蔭野君のことだ。」

「はい、その事については蔭野と昨日話しました。」

「ならなぜ君のクラスの多くの生徒が蔭野君の秘密を知っているんだ。君から話したんじゃないのかね。」

「いえ、私から蔭野にクラスのみんなに話すよう言いましたが、特に問題はないはずです。」

「問題大ありだ。前の職員会議でも言った通りそれは極秘事項だと言ったはずだ。蔭野君から話したとしてもこのことでイジメられでもしたら学校が責任を負わなくてはならない。」

「そうなった場合はもちろん自分が責任を取るつもりです。ですが、私のクラスの子たちはそのようなことをしません。私がさせません。」

「そうは言ってもこれは蔭野君のご両親と学校の約束だ。それに絶対にイジメが起きないと言えるのか。このご時世だ、イジメが発覚したら大問題だぞ。そこのところ分かっているのか君は。」

「そんなことを言ってしまえば、他の生徒とて同じことでしょう。」

「私が言っているのはそうではない。君が蔭野君を危険に晒したと言っているんだ。」

 結局議論は平行線で、会議というよりは教頭と谷内が言い争う形になった。

自分の教室に帰りながら谷内は考えた。

(俺のしたことは間違っているのだろうか。確かに蔭野のことは極秘事項だった。とはいえいつまでも隠し通せるようなことじゃないし、仮に発覚した時に困るのは蔭野だ。いや、でも約束した蔭野の両親とは合わせる顔がないな)

「谷内先生お困りのようですね。確かに蔭野君のことはデリケートな問題ですよね。」

後ろから1-Cの担任をしている紺野が声をかけてきた。紺野 歩美(こんの あゆみ)は谷内の大学のサークルの先輩だ。

「そうなんです。極秘って言われて最初は自分も従おうと思ったんですけど、中学の時の話を聞いてそのままのやり方じゃダメだと思って」

「昔からそうよね、谷内君ってさ。自分が正しいと思ったことは貫き通して、ダメだと思うことは真っ向から否定する」

「頑固なんですよ俺って。直さないとダメだと思うんですけど。」

「そう?私はいいことだと思うけど。また困ったことがあったら相談に乗るわ」

「ありがとうございます。それじゃあ。」

2人それぞれ自分たちが持つクラスに戻った。

「みんな、班長は決まったか?決まったところから休憩に入ってくれ。それと蔭野、ちょっと来てくれ」

先生に呼ばれて俺は席を立つ。

「蔭野なんかしたの?もしかしてのぞき?」

「してねぇよ何も。高宮じゃあるまいし」

教卓の前まで行くと先生が申し訳なさそうな顔で俺に話し始めた。

「蔭野すまん。さっき職員会議があって蔭野の秘密をバラしたことで話し合いになった」

「そうなんですか。何かまずいことでもあったんですか。」

「極秘にしてたことをバラしたんだ。そりゃ問題になる。ご両親に合わせる顔がないよ」

「何だそんなことですか。それは全然問題ないですよ。両親に話したら嬉しそうにしてましたし。」

と言いつつ俺はもう1つの問題のことを考えていた。

(中嶋のことどうするかな?それこそまだ問題が起きたわけじゃないし先生には言うべきじゃないか。と言うか先生は俺が中嶋と同じ学校だったことも把握してるのか?)

問題が解決しないままレクリエーション合宿の日を迎えることになった。


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