3 / 25
はじまりの町 3
しおりを挟む
スタンとリッカは、魔物に襲われるような事もなく森を抜け、無事に町の入口へと辿り着く事が出来た。
「ほら、ここがアタシ達の町だよ」
ムスッとした顔で、スタンへと告げるリッカ。
ここまで案内してくれたものの、道中一切しゃべる事もなく、その態度は頑ななままだった。
「ああ、助かったよ。ありがとうな」
苦笑しながらリッカへと礼を言うスタン。
そしてスタンはそのまま、町の様子を眺め始める。
それほど栄えている訳ではなさそうだが、建物などがそこそこ密集しており、一通りの店も揃っているようだ。
また、町の外れの方では、豊かに実っている畑が広がっており、その中でゆっくりと廻っている水車が、のどかな風景を作り出していた。
しかし、そんな風景とは裏腹に、スタンは妙な空気を感じていた。
まだ日が出ているというのに町を歩く人影が少なく、更にはその誰もが、スタンに対して警戒の眼差しを向けてくる。
「この町は、よそ者に厳しいのか?」
「よそ者というか、冒険者に対してだね」
スタンの質問に、リッカが素っ気ない答えを返す。
「何かあったのか?」
だが、続く質問に、リッカが答える事はなかった。
「悪い事は言わないよ。早く用を済ませて、この町を出るんだね」
そう言い残してリッカは、さっさと町の中へと入ってしまう。
「……手厳しいな」
一人残されたスタンは、これからどうするべきかを考え始めた。
当初の予定通りならば、この町の酒場などで情報を集め、仲間と落ち合うべきなのだが、
「どう考えても、面倒な事になりそうだよな……」
町の人々の様子。リッカの態度などから、この町に入れば、厄介な事に巻き込まれる可能性は高そうだった。
とは言え、仲間との連絡手段がない今の状態では、勝手に集合場所を変える訳にもいかない。
下手をすれば、行き違いになった仲間が面倒事に巻き込まれる可能性もある。
「ま、仕方ないよな」
結局スタンは、予定通り町へと入る事にした。
何かあれば、実力で跳ね除ければいいだけだ。
ただ一つ、心配事があるとすれば、
「あとであいつらに文句を言われないかどうかだよな……」
スタンが町の入口で考え事をしていた頃、森の中を一台の馬車が、ガタゴトと進んでいた。
馬車の上に見えるのは二人の少女の姿。
「なぁ、エル? 本当にこの道で合っているのか?」
手綱を操り馬車を進める少女が、隣に座る少女へと質問する。
その頭の上では犬のような耳が、そして腰のあたりでは、ふさふさの毛に包まれた尻尾が、そわそわと左右に揺れていた。
「大丈夫ですよ、セトナさん。この道を行けば、近くの町まで辿り着けるはずです!」
エルと呼ばれた少女が、地図を片手に元気よく答える。
「それならいいんだが……」
多少の不安を覚えながらも、セトナはエルの事を信じ、先を急ぐ事にした。
「早くあいつと合流しないとな」
はぐれた仲間の事を頭へと浮かべつつ、セトナは馬の足を速める。
「そうですよね、師匠の事だから大丈夫だとは思いますけど、やっぱり心配ですもんね」
「べ、別にあいつの心配なんかしていないぞ!」
エルの言葉に動揺した、セトナの尻尾が激しく揺れる。
「ただ……あいつは放っておくと色々と無茶をやるからな」
そう呟いたセトナの横顔は、憂いに満ちていた。
そんなセトナの横顔を、ニコニコと眺めるエル。
「……何だエル? 私の顔に何かついているか?」
「いえいえ、何でもありません」
エルの態度を不思議に思ったセトナだったが、それ以上追及する事はなかった。
仲間の事を心配する二人の少女を乗せ、馬車は森の中を進んで行く。
スタンのいる町とは、反対方向へと向けて……。
「ほら、ここがアタシ達の町だよ」
ムスッとした顔で、スタンへと告げるリッカ。
ここまで案内してくれたものの、道中一切しゃべる事もなく、その態度は頑ななままだった。
「ああ、助かったよ。ありがとうな」
苦笑しながらリッカへと礼を言うスタン。
そしてスタンはそのまま、町の様子を眺め始める。
それほど栄えている訳ではなさそうだが、建物などがそこそこ密集しており、一通りの店も揃っているようだ。
また、町の外れの方では、豊かに実っている畑が広がっており、その中でゆっくりと廻っている水車が、のどかな風景を作り出していた。
しかし、そんな風景とは裏腹に、スタンは妙な空気を感じていた。
まだ日が出ているというのに町を歩く人影が少なく、更にはその誰もが、スタンに対して警戒の眼差しを向けてくる。
「この町は、よそ者に厳しいのか?」
「よそ者というか、冒険者に対してだね」
スタンの質問に、リッカが素っ気ない答えを返す。
「何かあったのか?」
だが、続く質問に、リッカが答える事はなかった。
「悪い事は言わないよ。早く用を済ませて、この町を出るんだね」
そう言い残してリッカは、さっさと町の中へと入ってしまう。
「……手厳しいな」
一人残されたスタンは、これからどうするべきかを考え始めた。
当初の予定通りならば、この町の酒場などで情報を集め、仲間と落ち合うべきなのだが、
「どう考えても、面倒な事になりそうだよな……」
町の人々の様子。リッカの態度などから、この町に入れば、厄介な事に巻き込まれる可能性は高そうだった。
とは言え、仲間との連絡手段がない今の状態では、勝手に集合場所を変える訳にもいかない。
下手をすれば、行き違いになった仲間が面倒事に巻き込まれる可能性もある。
「ま、仕方ないよな」
結局スタンは、予定通り町へと入る事にした。
何かあれば、実力で跳ね除ければいいだけだ。
ただ一つ、心配事があるとすれば、
「あとであいつらに文句を言われないかどうかだよな……」
スタンが町の入口で考え事をしていた頃、森の中を一台の馬車が、ガタゴトと進んでいた。
馬車の上に見えるのは二人の少女の姿。
「なぁ、エル? 本当にこの道で合っているのか?」
手綱を操り馬車を進める少女が、隣に座る少女へと質問する。
その頭の上では犬のような耳が、そして腰のあたりでは、ふさふさの毛に包まれた尻尾が、そわそわと左右に揺れていた。
「大丈夫ですよ、セトナさん。この道を行けば、近くの町まで辿り着けるはずです!」
エルと呼ばれた少女が、地図を片手に元気よく答える。
「それならいいんだが……」
多少の不安を覚えながらも、セトナはエルの事を信じ、先を急ぐ事にした。
「早くあいつと合流しないとな」
はぐれた仲間の事を頭へと浮かべつつ、セトナは馬の足を速める。
「そうですよね、師匠の事だから大丈夫だとは思いますけど、やっぱり心配ですもんね」
「べ、別にあいつの心配なんかしていないぞ!」
エルの言葉に動揺した、セトナの尻尾が激しく揺れる。
「ただ……あいつは放っておくと色々と無茶をやるからな」
そう呟いたセトナの横顔は、憂いに満ちていた。
そんなセトナの横顔を、ニコニコと眺めるエル。
「……何だエル? 私の顔に何かついているか?」
「いえいえ、何でもありません」
エルの態度を不思議に思ったセトナだったが、それ以上追及する事はなかった。
仲間の事を心配する二人の少女を乗せ、馬車は森の中を進んで行く。
スタンのいる町とは、反対方向へと向けて……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる