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はじまりの町 6
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翌朝、スタンは身支度を整え、泊まっていた部屋から出てきた。
通路のつき当りにある階段を下り、一階へと顔を出す。
そこには、すでに起きていたリッカ達の姿があった。
「おはようございます、スタンさん」
「……おはよう」
笑顔で挨拶をしてくる店主と、そっぽを向きながら挨拶をしてくるリッカ。
二人へと挨拶を返しつつ、スタンは昨夜、店主と交わした会話を思い出していた。
町の人達へと、スタンの仲間の事を聞いて回った店主だったが、昨日は結局、有力な情報は得られなかったのだ。
「お役に立てず、申し訳ありません」
その事を気にして、しきりに頭を下げる店主だったが、スタンは別に落胆する事はなかった。
「いや、まだこの町の周辺に来ていないだけだろうし、そんなに気にしないでくれ」
別に店主が悪い訳でも、失敗した訳でもない。
彼は善意でやってくれているのだし、それを責める気はスタンにはなかった。
「あいつらの事だから、この町で待っていれば必ず来るさ」
とはいえ、一日中何もせずに待つというのも退屈な話だ。
そこでスタンは、外へと出掛ける事にしたのだった。
「出掛けるのですか? 今の町の状況では、あまりお勧めできませんが……」
困ったような顔で、店主はスタンへと忠告する。
町の住人は今、よそから来た人間に対しての警戒心が高い。
そんな町中をスタンが歩き回り、トラブルに巻き込まれないか心配しているのだ。
「俺も町中を歩いて住人を刺激するつもりはないさ。ただ、町の周辺を散策するくらいは構わないだろ?」
町の周囲であれば、住民と出会う可能性は確かに少ないかもしれない。
今の町の状況を考えれば、用もなく外をうろつく人間など、そうはいないだろう。
「まぁ、そういう事であれば……」
渋々といった感じではあるが、店主はスタンの意見に納得した。
しかし、
「では、町の入口まで、私が付き添いましょう」
住人とのトラブルを余程警戒しているのか、それとも昨日役に立たなかった事を気にしているのかは分からないが、店主はそんな事を言ってきたのだ。
「いや、それは……」
店主の言葉に、スタンは苦笑してしまう。
子供ではないのだから、町中を歩くのに付き添いは必要ないだろうと思ったからだ。
「もう、父さんってば何を言っているんだよ!」
そんな時、今まで黙っていたリッカが口を開く。
「父さんの怪我は、まだ治りきってないんだよ? それなのに昨日から動き回って……また悪くなったらどうするのさ!」
リッカは、父がスタンに付いて行くのに反対のようだ。
スタンとしても、付き添いは遠慮したいと思っていたので、リッカの反対は大いに歓迎するものだった。
心の中で、リッカの事を応援するスタン。
「そうは言うがな、リッカ……」
だが、店主はなかなか引き下がろうとはしなかった。
そんな父の態度に、リッカは大袈裟に肩を竦める。
「分かったわよ。そんなに心配なら、私が付いて行くから。それでいいでしょ?」
仕方なさそうに、ため息をつくリッカ。
リッカの意外な言葉に、店主は驚きの表情になる。
「リッカ……いいのか?」
「父さんが無理して、また怪我を悪化させるよりはマシよ」
「リッカよ……」
そんな娘の気遣いに、店主は嬉しそうに微笑む。
嬉しそうに笑う父から、恥ずかしそうに顔を逸らし、リッカはスタンへと指を突きつける。
「そういう訳だから、町の外までは私が付き添うからね」
「どうしてそうなるんだか……」
望んでいた結果を得られず、スタンは内心で肩を落とす。
しかし、冒険者を嫌うリッカが、せっかく申し出てくれたのだ。
ここで断るのも、さすがに悪いだろう。
「……分かった。よろしく頼むよ」
諦めたような声で、スタンはリッカへと同行を頼んだ。
「仕方ないけど、まぁ頼まれてやるわよ」
そんなスタンに対し、リッカは快活に笑った。
太陽のような、明るいリッカの笑み。
だが、付き添いを望んでいなかったスタンの目には、イタズラが成功した悪ガキの笑みのようにも見えるのだった。
通路のつき当りにある階段を下り、一階へと顔を出す。
そこには、すでに起きていたリッカ達の姿があった。
「おはようございます、スタンさん」
「……おはよう」
笑顔で挨拶をしてくる店主と、そっぽを向きながら挨拶をしてくるリッカ。
二人へと挨拶を返しつつ、スタンは昨夜、店主と交わした会話を思い出していた。
町の人達へと、スタンの仲間の事を聞いて回った店主だったが、昨日は結局、有力な情報は得られなかったのだ。
「お役に立てず、申し訳ありません」
その事を気にして、しきりに頭を下げる店主だったが、スタンは別に落胆する事はなかった。
「いや、まだこの町の周辺に来ていないだけだろうし、そんなに気にしないでくれ」
別に店主が悪い訳でも、失敗した訳でもない。
彼は善意でやってくれているのだし、それを責める気はスタンにはなかった。
「あいつらの事だから、この町で待っていれば必ず来るさ」
とはいえ、一日中何もせずに待つというのも退屈な話だ。
そこでスタンは、外へと出掛ける事にしたのだった。
「出掛けるのですか? 今の町の状況では、あまりお勧めできませんが……」
困ったような顔で、店主はスタンへと忠告する。
町の住人は今、よそから来た人間に対しての警戒心が高い。
そんな町中をスタンが歩き回り、トラブルに巻き込まれないか心配しているのだ。
「俺も町中を歩いて住人を刺激するつもりはないさ。ただ、町の周辺を散策するくらいは構わないだろ?」
町の周囲であれば、住民と出会う可能性は確かに少ないかもしれない。
今の町の状況を考えれば、用もなく外をうろつく人間など、そうはいないだろう。
「まぁ、そういう事であれば……」
渋々といった感じではあるが、店主はスタンの意見に納得した。
しかし、
「では、町の入口まで、私が付き添いましょう」
住人とのトラブルを余程警戒しているのか、それとも昨日役に立たなかった事を気にしているのかは分からないが、店主はそんな事を言ってきたのだ。
「いや、それは……」
店主の言葉に、スタンは苦笑してしまう。
子供ではないのだから、町中を歩くのに付き添いは必要ないだろうと思ったからだ。
「もう、父さんってば何を言っているんだよ!」
そんな時、今まで黙っていたリッカが口を開く。
「父さんの怪我は、まだ治りきってないんだよ? それなのに昨日から動き回って……また悪くなったらどうするのさ!」
リッカは、父がスタンに付いて行くのに反対のようだ。
スタンとしても、付き添いは遠慮したいと思っていたので、リッカの反対は大いに歓迎するものだった。
心の中で、リッカの事を応援するスタン。
「そうは言うがな、リッカ……」
だが、店主はなかなか引き下がろうとはしなかった。
そんな父の態度に、リッカは大袈裟に肩を竦める。
「分かったわよ。そんなに心配なら、私が付いて行くから。それでいいでしょ?」
仕方なさそうに、ため息をつくリッカ。
リッカの意外な言葉に、店主は驚きの表情になる。
「リッカ……いいのか?」
「父さんが無理して、また怪我を悪化させるよりはマシよ」
「リッカよ……」
そんな娘の気遣いに、店主は嬉しそうに微笑む。
嬉しそうに笑う父から、恥ずかしそうに顔を逸らし、リッカはスタンへと指を突きつける。
「そういう訳だから、町の外までは私が付き添うからね」
「どうしてそうなるんだか……」
望んでいた結果を得られず、スタンは内心で肩を落とす。
しかし、冒険者を嫌うリッカが、せっかく申し出てくれたのだ。
ここで断るのも、さすがに悪いだろう。
「……分かった。よろしく頼むよ」
諦めたような声で、スタンはリッカへと同行を頼んだ。
「仕方ないけど、まぁ頼まれてやるわよ」
そんなスタンに対し、リッカは快活に笑った。
太陽のような、明るいリッカの笑み。
だが、付き添いを望んでいなかったスタンの目には、イタズラが成功した悪ガキの笑みのようにも見えるのだった。
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