とある鍛冶屋の放浪記

馬之屋 琢

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再会の旅路 2

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 祖父から許可を得られたアリカは、国境を越え、スタン達を追いかけていた。
 サラサと二人、街道を進む馬車の上で揺られ、今は北にある街を目指している。

「今、スタン達はどの辺りにいるのかしらね?」
「だいぶ追いついたとは思うのですが……」

 手綱を操りながらも、主人の質問に答えるサラサ。
 アリカ達は訪れる先々で、スタン達の情報を集めながら進んでいた。
 スタン達よりだいぶ遅れての出発だったが、急いでいる分、徐々にではあるが、その差を縮める事が出来ている。
 この分ならば、近いうちにスタン達と合流できるであろうと、サラサは考えていた。

「またこの辺りで話を聞ければ、スタン様達へ近付けると思うのですが」
「そうね、どこかに集落か何かだあれば良いのだけれど……」

 二人が今後のことを相談していると、視線の先、街道沿いに複数の建物が見えてきた。

「あれは……?」

 それぞれの建物には酒場や宿といった看板がついており、その脇にはうまやの姿も見える。
 建物の脇では行商人が地面へと商品を広げており、その商品を眺める旅人の姿も目に入った。
 この場所は街道を進む人々が利用する、宿場となっているようだ。

「丁度いいわ。そろそろ日も暮れるし、今夜はあそこで休んでいきましょう」
「そうですね」

 馬車を厩の脇へと停めたアリカ達は、世話係の人間へと硬貨を渡し、馬の世話を任せる。
 そして馬車の中から必要な荷物だけを取り出した二人は、まずは腹ごしらえの為、酒場へと入る事にした。



 酒場は小さな造りではあったが、内装はしっかりとしており、それぞれのテーブルでは旅人達が食事や酒を楽しみ、疲れを癒していた。
 食事に満足した吟遊詩人が楽器リュートを軽快に鳴らすと、酒に酔った男達がそれをはやしたて、他の者達は皆、楽しそうに眺めている。
 そんな賑やかな店内へと入っっていたアリカ達は、空いていた端の席へと腰を下ろす事にした。

「いらっしゃい。嬢ちゃん達だけかい?」

 ほどなく、店の男が注文を取りに来る。
 男がアリカ達に人数の確認をしたのは、少女達だけの旅人というのが珍しかったからだ。

「ええ、私達だけよ。とりあえず冷たい飲み物と、軽めの食事をお願いしようかしら? サラサもそれでいい?」

 サラサが頷いたのを確認したアリカは、店員の男と相談して手早く注文を済ませる。
 本来であればこうした事はメイドであるサラサがやるべき事なのではあるが、アリカはサラサに任せず、自分でやる事にしていた。
 仮にサラサに任せたとしても、メニューの決定権などは自分にあるので、直接頼んだ方が早いからだ。
 何度言っても頑として譲らない主の行動に、サラサももう諦めていた。
 その代わりというように、主からは別の事を頼まれている。

「じゃあ、すぐに用意してくるから、ちょっと待ってな」

 アリカが注文を終え、店員が食事を用意しに戻ると、サラサは主へと向かい、残念そうに首を振った。

「残念ですけど、ここにもスタン様達はいないようです」
「……そう」 

 アリカが注文をしている間に、サラサは店内を見回し、スタン達の姿を捜していたのだ。
 残念ながら、スタン達はこの店内に居なかった。
 あとは店員などに話を聞いてみるしかない。

「申し訳ありません、お嬢様」
「貴女が謝る必要はないわよ、サラサ。そう簡単に会えるものでもないでしょうし」

 仕方ないとばかりに、アリカは笑う。
 だが、その笑顔には幾分かの寂しさが混じっている事を、サラサは見逃さなかった。

「お嬢様……」
「へい、お待ち」

 サラサがアリカへと励ましの言葉を言おうとした時、タイミング悪く料理が運ばれてきてしまう。

「へぇ、美味しそうね」
「当たり前だよ、嬢ちゃん。ウチは不味い飯なんか出さないさ」

 豪快に笑った店員は、そのまま他の客席へと注文を取りに行ってしまう。

「今は忙しそうだし、またあとで聞いた方が良さそうね」
「そうですね」

 店員から話を聞く事を後回しにした二人は、運ばれてきた料理へと目を向ける。
 運ばれてきたのは温かなパンとスープ。そして大皿に盛られたサラダだった。
 目の前に置かれた料理に触発され、二人のお腹から可愛らしい音が響く。

「それじゃあ、まずは腹ごしらえといきましょうか。空腹じゃ何も出来ないからね」
「はい」

 クスリと笑い合った二人は、目の前の料理を、元気よく食べ始めるのだった。
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