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再会の旅路 6
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アリカとサラサは、朝早くに宿場を出て、予定通りに渓谷地帯を進んでいた。
山と川と森と、昨夜、宿場で会った行商人が言っていたように、確かにこの場所は複雑な地形だった。
道には分岐点が多く、時折見かける道案内の立て札も、古くて文字が霞んでいたり、朽ち果てたりしていて、大して当てにはなりそうにない。
迂闊に山道へと入り、馬車が進めなくなるのを警戒したアリカ達は、川沿いを進む事にした。
多少時間が掛かったとしても、引き返すよりは早いだろうとの判断からだ。
その甲斐あって、途中で馬車が通れなくなるような場面は、今のところは無い。
だが、問題は別のところにあった。
それは、襲い掛かってくる魔物の数。
事前に警告されていた通り、この渓谷の魔物の数は多かったのだ。
アリカ達の前に最も多く現れたのは、人間とほとんど大きさの変わらぬ、蜂型の魔物。
それが空を飛び回り、二、三匹で、時にはそれ以上の群れとなって、アリカ達に何度も襲い掛かってくるのだ。
とはいえ、蜂型の魔物は、魔術を使えるアリカにとってそこまでの脅威ではなかった。
「炎よ、我が敵を打ち払え! 火炎球!」
空中を飛びまわる魔物を、炎の魔術で次々と撃ち落としていくアリカ。
運よくそれを避けた一匹が、馬車へと近寄ろうとするが、
「させません」
アリカの脇へと控えていたサラサが、すかさず何本ものナイフを飛ばす。
身体に何本ものナイフを突きたてられ、動きが鈍った魔物は、そのまま炎の直撃を受けて地面へと転がる事になった。
襲ってきた魔物が全滅したのを確認したアリカが、全身の力を抜く。
「魔物が多いとは聞いていたけど……まさかここまでとはね」
襲われるのはもうこれで何度目になるだろうか。
今のところはそこまで苦戦する事もないが、ずっと戦闘が続くと、さすがに少々堪えてくる。
「それに、何か変じゃないかしら?」
「何がでしょうか、お嬢様?」
サラサの疑問に対し、アリカが少し考える素振りを見せる。
「これだけ倒せば、普通は逃げ出すし、怯えて近寄ってこないはずでしょ? なのにここの魔物は逃げ出そうとしないのよね」
そう言って、アリカは馬車の周りを見回した。
周囲に落ちているのは数多くの魔物の死骸。
途中で逃げ出すような魔物は一匹もいなかったのだ。
「この魔物の特徴でしょうか?」
地面へと転がっている魔物の死骸を確認するサラサ。
この蜂型の魔物は、自分達の国では見た事がない。
それ故に、この魔物の習性などは詳しく知らないのだ。
「それだったら良いんだけど……いえ、厄介な事には変わりないわね」
アリカは軽く首を振ると、気を取り直すように前を見据える。
「とにかく、気を付けて先へと進む事にしましょうか」
「かしこまりました、お嬢様」
二人は再び馬車へと乗ると、さらに奥へと向かい進んで行くのであった。
「ここか」
馬に鞭を入れ、馬車を急がせたスタン達は、アリカ達からだいぶ遅れはしたものの、渓谷地帯へと辿り着く事ができた。
「匂いで分かるか?」
スタンは到着して早々に、荷台にいるセトナへと確認をとる。
「無茶を言うな。こんな広い場所ではそう簡単に分かる訳がないだろう。近くにいるならば話は違うが」
無茶な注文に対し、苦笑するセトナ。
それを見てスタンは、少々気が急いていたようだと、内心反省する。
「そうか。だけど、セトナの感覚は俺達よりも優れているからな。頼りにしているぞ」
「……まぁ、出来る限りの事はするつもりだ」
素っ気ない答えを、スタンへと返すセトナ。
だが、その後ろで尻尾が嬉しそうに揺れているのを、エルは見逃さなかった。
「さて、こうも地形が複雑だと大変だが……とりあえずは高い所から捜してみる事にしよう」
そう言って、スタン達一行は山道へと進路をとり、アリカ達を捜し始めるのだった。
山と川と森と、昨夜、宿場で会った行商人が言っていたように、確かにこの場所は複雑な地形だった。
道には分岐点が多く、時折見かける道案内の立て札も、古くて文字が霞んでいたり、朽ち果てたりしていて、大して当てにはなりそうにない。
迂闊に山道へと入り、馬車が進めなくなるのを警戒したアリカ達は、川沿いを進む事にした。
多少時間が掛かったとしても、引き返すよりは早いだろうとの判断からだ。
その甲斐あって、途中で馬車が通れなくなるような場面は、今のところは無い。
だが、問題は別のところにあった。
それは、襲い掛かってくる魔物の数。
事前に警告されていた通り、この渓谷の魔物の数は多かったのだ。
アリカ達の前に最も多く現れたのは、人間とほとんど大きさの変わらぬ、蜂型の魔物。
それが空を飛び回り、二、三匹で、時にはそれ以上の群れとなって、アリカ達に何度も襲い掛かってくるのだ。
とはいえ、蜂型の魔物は、魔術を使えるアリカにとってそこまでの脅威ではなかった。
「炎よ、我が敵を打ち払え! 火炎球!」
空中を飛びまわる魔物を、炎の魔術で次々と撃ち落としていくアリカ。
運よくそれを避けた一匹が、馬車へと近寄ろうとするが、
「させません」
アリカの脇へと控えていたサラサが、すかさず何本ものナイフを飛ばす。
身体に何本ものナイフを突きたてられ、動きが鈍った魔物は、そのまま炎の直撃を受けて地面へと転がる事になった。
襲ってきた魔物が全滅したのを確認したアリカが、全身の力を抜く。
「魔物が多いとは聞いていたけど……まさかここまでとはね」
襲われるのはもうこれで何度目になるだろうか。
今のところはそこまで苦戦する事もないが、ずっと戦闘が続くと、さすがに少々堪えてくる。
「それに、何か変じゃないかしら?」
「何がでしょうか、お嬢様?」
サラサの疑問に対し、アリカが少し考える素振りを見せる。
「これだけ倒せば、普通は逃げ出すし、怯えて近寄ってこないはずでしょ? なのにここの魔物は逃げ出そうとしないのよね」
そう言って、アリカは馬車の周りを見回した。
周囲に落ちているのは数多くの魔物の死骸。
途中で逃げ出すような魔物は一匹もいなかったのだ。
「この魔物の特徴でしょうか?」
地面へと転がっている魔物の死骸を確認するサラサ。
この蜂型の魔物は、自分達の国では見た事がない。
それ故に、この魔物の習性などは詳しく知らないのだ。
「それだったら良いんだけど……いえ、厄介な事には変わりないわね」
アリカは軽く首を振ると、気を取り直すように前を見据える。
「とにかく、気を付けて先へと進む事にしましょうか」
「かしこまりました、お嬢様」
二人は再び馬車へと乗ると、さらに奥へと向かい進んで行くのであった。
「ここか」
馬に鞭を入れ、馬車を急がせたスタン達は、アリカ達からだいぶ遅れはしたものの、渓谷地帯へと辿り着く事ができた。
「匂いで分かるか?」
スタンは到着して早々に、荷台にいるセトナへと確認をとる。
「無茶を言うな。こんな広い場所ではそう簡単に分かる訳がないだろう。近くにいるならば話は違うが」
無茶な注文に対し、苦笑するセトナ。
それを見てスタンは、少々気が急いていたようだと、内心反省する。
「そうか。だけど、セトナの感覚は俺達よりも優れているからな。頼りにしているぞ」
「……まぁ、出来る限りの事はするつもりだ」
素っ気ない答えを、スタンへと返すセトナ。
だが、その後ろで尻尾が嬉しそうに揺れているのを、エルは見逃さなかった。
「さて、こうも地形が複雑だと大変だが……とりあえずは高い所から捜してみる事にしよう」
そう言って、スタン達一行は山道へと進路をとり、アリカ達を捜し始めるのだった。
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