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むかしむかし、から始まるお話
しおりを挟む昔、あるところにごうまんなアルファがいた。
らしい。
それは父と親しい友人の鮫島さんから聞いた話だ。そのアルファは横暴で差別的で自分が是と疑わない悪者で、オメガを下に見て傍若無人なことを繰り返していた。
そんなアルファはある日、運命の番に出会い、当たり前のように番った。だが、アルファの行い故、オメガは死にいたる。アルファはその後、大変後悔したらしい。
なんだそのアルファ。
僕はそのあまりにも愚かなアルファに言葉を失った。オメガを大切にしないアルファ。しかも、自分の番をみずみず死なせたなど情けなく、救いようがない。オメガは繊細なのだから、宝物のように扱いなさいと父は常々言っている。僕が父に教わったように、このアルファもそう教わらなかったのか。いや、教わらなくてもそんなの常識だ。馬鹿なアルファ。
僕はその愚かさを蔑むと同時に僕の父に思いを馳せる。
その傲慢なアルファと僕の父とは正反対だ。
父はアルファの中でも至上とも言える権力を持つ。誰もが父を敬い、父の指示を待ち受ける。悪いことをしようとしても誰も止められやしないだろう。だが、父は清廉潔白でいつも正しい行いをしている。
外での立場をしっかり終えると、母さんと僕のいる家に帰って一緒に過ごしてくれる。他人の前では怖いくらい冷たい雰囲気を放つ父が、母の前になると急に優しい顔つきになって嬉しそうにした。それは、父のよく言うオメガを大切にしなさいという教えそのものであり、大切にした結果を僕は毎日まざまざと見ている。
父は外ではその立場から恐れられることが多いらしいが、家では全く違う。父としてアルファとして畏怖してはいるけど、それ以上に尊敬が強く、父より凄い人は見たことがないし、きっとそんな人この世にいない。
家に帰ると、父は必ず母さんに抱きつき愛を囁く。母さんは照れくさそうにするけど、なんだかんだ凄く嬉しそうで数分その体勢で小さく言葉を交わしていたりした。母の周りの空気を全部吸い込むように深い深呼吸をした後、父は僕を見つけ頭を撫でてくれる。父の手は重く、偉大だ。
鮫島さんには君の方が後なんて酷いね、と言われたがとんでもない。アルファが番を大切にするのは当然のこと。母さんあってこその僕なのだ。父が僕のことを大切に思っていることが分かるだけで僕は嬉しい。僕もバース検査ではアルファだったから、母さんのような番が出来たらああやって毎日抱きしめるんだ。
夕飯は必ず家族揃って食べる。いつもは母さんが作ったご飯を食べるが、今日は違うみたいだ。父は家に人を入れながらないけど、最近は家政婦さんもよく見るし何かあったのだろうか。
食卓テーブルに並べられた食事が少し冷めていて、母さんが電子レンジで温めようとしたら父に止められている。父は母さんから皿を取ると、母さんと僕の分を持って温めてくれた。母さんは申し訳なさそうにしていて、慌てて僕も父の手伝いに行く。父は外で立派に働いているのだから家では僕がお手伝いをするのだ。
父の皿を持って行くと父は頭を撫でてくれ、母さんは偉いねと褒めてくれる。褒められると嬉しい。もっとしようと思えた。
父が戻り食事が始まると、なんだか違和感を感じた。母さんは父に嬉しそうに今日のことを話していて、父が愛おしそうにそれを聞く。それはいつものことだ。だが、今日はいつもにも増して過保護というか。母さんがちょっと身動きするだけで、父がそれを先回りして動いている。
僕が怪訝に感じていると、それが表情に出ていたのだろう。母さんが父を嗜めている。まさか母さんは何か病気にでもなってしまったのだろうか。それなら最近、家政婦さんがいることも父が母に過保護なのも合点がいく。
「母さん、体調悪いの?」
母さんはその言葉に動揺したのか、助けるように父を見た。父はそんな困ったような母さんの頰を撫でると、言っていいよと何かを許す。
「実はね……」
なんと母さんは妊娠しているらしい。僕に新しい家族が出来るんだ。新しい命を宿した母さんは、今まで以上に大切にしないとならない。父は僕に言い聞かせるように言った。
「うん!!」
食事を終えると、母さんと父はどっちが片付けるかで揉めて最終的に母さんはソファで座ることとなった。父がさっと片付けて、あとは家政婦さんにやって貰うらしい。僕はお手伝いすることがなさそうと分かると、お風呂に入りに行った。
鮫島さんにごうまんなアルファの話を聞いた時、僕は馬鹿なやつだと感想を言ったが、鮫島さんはそれを聞いてニヤニヤと笑った。そしてとんでもないことを言う。
それって君のお父さんのことだよ、と。
なんて馬鹿な話だ。そんなことあるはずない。父はそんな人間じゃないし、父と母さんは大変仲睦まじい。当然、母さんも生きてるし、2人はあまり言わないけど運命の番という特別な番なのだ。
全くもって当てはまっていない。
冗談にしても下手過ぎる。僕が抗議すると、鮫島さんは色々あったんだよ、と思い出したように笑って僕の頭を撫でる。撫でられるのは好きだけど鮫島さんの手は軽く、なんか父とは違う気がした。
お風呂から出て、リビングに行くと父が母さんに覆い被さっていた。何、暴力ではない。あれは、鮫島さん曰くイチャイチャしているのだ。
母さんが僕に気付き、やんわり父を離すと父は大人しく母さんに従う。僕がいることに驚かないのだから、最初から気づいていたのだろう。父は母さんと違ってイチャイチャするのに人の目を気にしないから。
母さんは僕に気づくと、赤くなった顔を手で扇ぎながら僕を呼んでくれる。お風呂上がりに髪をかわかしてもらうのが僕の日課なのだ。
父の足の間に入った母さんが僕の頭を乾かす。暖かな風と母さんの優しい手つきは僕を微睡わせ、段々と眠くさせた。ふわふわの髪が出来上がったら、僕はもう就寝の時間だ。
眠い目を擦って、母さんの手を引こうとする。絵本の続きを読んでもらう約束だ。どんなに眠くても母さんとの約束なのだから読んでもらうのだ。
母さんは優しく笑って、立ちあがろうとしたが父に止められた。父が母さんの腰から手を引かないのだ。母さんが困惑していると父が母さんに何か耳打ちして、さらにグッと母さんを抱きしめる。
母さんはそれに顔を真っ赤にして、立ち上がるのをやめた。
「もう眠いんだろ?眠い時にちゃんと寝ないと大きくなれないぞ」
父はいまだ母の手を掴んでいる僕の手をしっかり離して言った。確かに大きくならないのは嫌だが、絵本の続きを知りたい。今日くらい寝るのが遅くなってもいいのではないか、そう葛藤するが父ははっきりとした性格だ。ごねてもきっと母さんを貸してはくれないだろう。
「ごめんね。明日はちゃんと読むから、今日は1人で寝れる?」
その上、母さんにまでこう言われれば引き下がるしかない。
「分かった。明日は絵本読んでね」
「うん。約束ね」
「約束」
母さんは父に抱きしめられて窮屈な体勢の中から、腕を出して指きりげんまんをしてくれた。本当はぎゅっと抱きしめて欲しいが、父が放しそうにないから諦めるしかない。
逃がさないように抱きしめるそれは、ちょっと苦しそうだが母さんもその窮屈が幸せそうでやっぱり番って良いなと思う。お互いが大事で大事で堪らない存在ってどんな感じなのか。僕が父と母さんに思う気持ちと、母さんと父が僕に思う気持ちは違うし、母さんと父へのお互いの気持ちは多分もっともっと違う。
今はまだ分からないが、僕も大事な番を腕の中に入れて幸せを感じる日が来るのだろう。
「おやすみなさい」
僕は誕生日にもらったテディベアを抱きしめながら眠った。いつかこの腕の中にテディベア以上の大切な誰かがいることを願って。
息子が自室に向かい、男はようやく腕の中のオメガを解放した。男はオメガを堪能したかった。例え、息子が相手でも譲るつもりはない。
そんな男の性質をオメガは分かりきっていたし、ここまで執心されていることに幸福感を覚えているのだから、2人は間違いなく幸せだ。きつい抱擁から添えるだけの抱き方に変わり、オメガは男に身体を持たせながらくすぐったそうに笑う。
「将臣さんったらどうしたんですか」
「今日からまた禁欲生活だ。少しでもなおを堪能したい」
男はオメガの首元に頭を置き、肺いっぱいに匂いを吸い込む。この甘い香りは男だけの、男のためだけのオメガの香りだ。腕の中の幸せをもう男は逃したりしない。一度は消え、もう一度刻まれた頸の歯形に男は何度もキスをする。
それと共にオメガの身体に手を這わすと、オメガは気持ちよさそうにうっとりと鳴いた。これからは挿入はなしだと言いながら、夫婦の寝室にオメガを運ぶ。
宝物を置くようにオメガをベッドに沈ませれば、オメガはもう発情しきっていた。普段は白い肌がほんのりピンクに色づき、より強いオメガの香りが解き放たれる。
細い胸板に似付かない大きくぷっくりと膨らんだ乳首は男が息子に嫉妬しながら開発したものだ。唾液をびっしょり塗りつけながら甘噛みすると、オメガの喘ぎ声は遠慮なく響き渡るようになってきた。男が傲慢でどうしようもないアルファだった頃、ちょっとした息継ぎさえ出さなかったオメガは今や普段の慎ましさを忘れて淫猥に踊るのだ。男がここまでオメガを可愛い生き物に変えた。男にとってオメガの喘ぎ声は淫靡で美しく世界で最も綺麗な音だし、男の中のオメガはいつもどんな踊り子よりいやらしく踊る。
オメガのことを心から愛しているし、男にとってこの時間はオメガをより心の底から味わえるお楽しみの時間だった。
快感でぐずぐずになったオメガのペニスを口に含み、柔く固くなったそれをしこる。まさかあの頃は自分が人に口淫するなんて考えもしなかったし、絶対にしなかっただろう。だが、オメガには積極的にしたい。何回も繰り返した口淫に遠慮しつつも、気持ち良くて涙目になるオメガは可愛くて仕方ないのだ。ぐっしょりと濡れたオメガの蕾も口と手で可愛がりつつ、オメガが2回ほど果てたら息も絶え絶えなオメガは男のペニスに手を添えた。
控えめなオメガが自分のペニスを愛しそうにしゃぶり、とろとろになっている姿は格別だ。男はオメガを良く出来ればそれで良かったが、それはオメガが許さなかった。自分で気持ち良いところを刺激しつつ、男の凶悪を小ぶりな口で必死に奉仕して、しかもそれは男の良いところを的確に突いてくるから非常に気持ちが良い。もうすぐ射精しそうだとオメガに口を離すよう促すと、オメガは涙目をきっと向けて口に出してとより吸い付いてくる。
そんな誘惑に男が抗えるはずがなかった。
体力を使い果たしたオメガの身体を濡れタオルで丁寧に拭き、二人で同じ布団を被る。
「将臣さん、大好きです」
オメガは寝ぼけながら幸せそうに呟く。
「私は愛してる」
愛おしそうにそう返す男にオメガは不服そうに口を窄め、ぎゅっと抱きついた。
「ずるい。僕だって愛してます」
むかしむかし、あるところにごうまんなアルファがいた。ごうまんなアルファは、本当の愛に気付いて自分を顧みて反省し、行動に移した。
今やもう、ごうまんなアルファはどこにもいない。
そこにいるのは幸せな家族だけだ。
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久しぶりの投稿が嬉しいです!
ありがとうございます!
このお話が大好きで繰り返し読ませて頂いてました。
その後日談が読めるなんて嬉しい!!
ありがとうございます(^^)
ありがとうございます!
第二子も生まれるので、時間があったらその子の話も書きます!
久しぶりの更新ありがとうございます。
こちらの作品は本当に大好きで、過去何度も拝見させていただきました。
これからの活躍も楽しみにしております。
ご感想ありがとうございます。
とても嬉しいお言葉を頂けて嬉しいです!
頑張ります(^^)