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本編
誕生日プレゼント
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「あ、そういえばね」
もう言ってしまおうかと心臓をばくばくと高鳴らせていると、千蔭さんがふいに鞄の中からひとつの小さな紙袋を取り出した。
「はい、これ。誕生日プレゼント」
「……たっ、え!? 覚えててくれたんですか」
「当然でしょ。ちょっとだけ遅くなっちゃったけど」
綺麗な包みに入れられたそれをちょっと照れくさそうに渡してくれる。まさか誕生日を覚えていてくれてるなんて思っていなくて、間の抜けた声をあげてしまった。
「十八歳、もう大人だね。おめでとう」
プレゼントまでくれて、そんな風にやさしく微笑みながら祝ってもらえるなんて夢にも思っていなかったから、嬉しすぎて思わず泣いてしまいそうだった。
今までは、いくつになったとしてもまだまだ子どもで、千蔭さんにそう思われるのが嫌で自分の誕生日や年齢の話はあまりしてこなかった。
歳を重ねるたびに千蔭さんとの差を思い知らされてもどかしくて、はやく大人になりたかった。
だから、その「もう大人」という言葉が何より嬉しかったのだ。
「ありがとうございます。俺、今までで一番幸せです」
「大げさだなあ」
大げさなんかじゃないんだけれど、そこで否定するのは少し重い気がして、笑って流した。
「これ、開けてもいいですか?」
「うん、もちろん」
小さな紙袋の中身はこれまた小さな、でも綺麗でちょっと高そうな白い箱。
「……あの、何あげたらいいかなーって悩んで…。その、ちょっと重い? とか思ったんだけど」
そう話す千蔭さんはほんのり頬を染めていて、恥ずかしそうにしている。
「……アクセサリーですか?」
ぱこ、と気持ちのいい音を立てて開いたその箱の中には、小ぶりでシンプルな、品のあるデザインのネックレスが入っていた。
「……きれい」
「最近夕陽くん、大人っぽくなってきたし。それ、たまたま見かけて……その、似合うだろうなーって思ったら、もうプレゼントそれしか考えられなくなっちゃって」
珍しく千蔭さんが言葉を探しながら話しているのが、本当にすごく恥ずかしいのに一生懸命話してくれているんだなとわかって、そのことも嬉しい。
「めちゃめちゃ嬉しいです……泣きそう……」
「そ、そんなに!? でも喜んでくれたならよかった」
安心したように笑う千蔭さんを見ていると、本当に目が熱くなってきて、泣いてしまいそうだった。
「千蔭さん」
「ん、なに?」
溢れそうになる涙の代わりに、そう名前を呼んだ。まだ少し赤い頬のまま、千蔭さんは優しくそう返してくれる。
ここで泣き出さないためには、もう言葉で気持ちを伝えるしか、方法がわからなかった。
テーブルのわずかな距離でさえもどかしい。周りに人だって居るし、でも止められないから、少し椅子から立ち上がって、耳打ちするみたいに言った。
「好きです」
たった一言、耳元で告げて。うわ、言ってしまった。そう思って少し身を引いたところで覗き込んでしまった千蔭さんの頬が、さっきよりももっとじわじわと赤くなっていくのが見えた。
「……っ、ちょ、顔…見ないで……」
「ご、ごめんなさい」
慌てて手で顔を隠されると、なんだかいけないものを見てしまったような気になって俺も慌てて席に座りなおした。
こんなに慌てた千蔭さんを、俺は初めて見た。そのリアクションはいったい、どっちなんだろう。
ちゃんと伝わったんだろうか。引かれちゃっただろうか。嫌われたりしたら、悲しいな。どうしよう。言ってしまってから、そんな想いがぐるぐると頭の中を巡っていた。
もう言ってしまおうかと心臓をばくばくと高鳴らせていると、千蔭さんがふいに鞄の中からひとつの小さな紙袋を取り出した。
「はい、これ。誕生日プレゼント」
「……たっ、え!? 覚えててくれたんですか」
「当然でしょ。ちょっとだけ遅くなっちゃったけど」
綺麗な包みに入れられたそれをちょっと照れくさそうに渡してくれる。まさか誕生日を覚えていてくれてるなんて思っていなくて、間の抜けた声をあげてしまった。
「十八歳、もう大人だね。おめでとう」
プレゼントまでくれて、そんな風にやさしく微笑みながら祝ってもらえるなんて夢にも思っていなかったから、嬉しすぎて思わず泣いてしまいそうだった。
今までは、いくつになったとしてもまだまだ子どもで、千蔭さんにそう思われるのが嫌で自分の誕生日や年齢の話はあまりしてこなかった。
歳を重ねるたびに千蔭さんとの差を思い知らされてもどかしくて、はやく大人になりたかった。
だから、その「もう大人」という言葉が何より嬉しかったのだ。
「ありがとうございます。俺、今までで一番幸せです」
「大げさだなあ」
大げさなんかじゃないんだけれど、そこで否定するのは少し重い気がして、笑って流した。
「これ、開けてもいいですか?」
「うん、もちろん」
小さな紙袋の中身はこれまた小さな、でも綺麗でちょっと高そうな白い箱。
「……あの、何あげたらいいかなーって悩んで…。その、ちょっと重い? とか思ったんだけど」
そう話す千蔭さんはほんのり頬を染めていて、恥ずかしそうにしている。
「……アクセサリーですか?」
ぱこ、と気持ちのいい音を立てて開いたその箱の中には、小ぶりでシンプルな、品のあるデザインのネックレスが入っていた。
「……きれい」
「最近夕陽くん、大人っぽくなってきたし。それ、たまたま見かけて……その、似合うだろうなーって思ったら、もうプレゼントそれしか考えられなくなっちゃって」
珍しく千蔭さんが言葉を探しながら話しているのが、本当にすごく恥ずかしいのに一生懸命話してくれているんだなとわかって、そのことも嬉しい。
「めちゃめちゃ嬉しいです……泣きそう……」
「そ、そんなに!? でも喜んでくれたならよかった」
安心したように笑う千蔭さんを見ていると、本当に目が熱くなってきて、泣いてしまいそうだった。
「千蔭さん」
「ん、なに?」
溢れそうになる涙の代わりに、そう名前を呼んだ。まだ少し赤い頬のまま、千蔭さんは優しくそう返してくれる。
ここで泣き出さないためには、もう言葉で気持ちを伝えるしか、方法がわからなかった。
テーブルのわずかな距離でさえもどかしい。周りに人だって居るし、でも止められないから、少し椅子から立ち上がって、耳打ちするみたいに言った。
「好きです」
たった一言、耳元で告げて。うわ、言ってしまった。そう思って少し身を引いたところで覗き込んでしまった千蔭さんの頬が、さっきよりももっとじわじわと赤くなっていくのが見えた。
「……っ、ちょ、顔…見ないで……」
「ご、ごめんなさい」
慌てて手で顔を隠されると、なんだかいけないものを見てしまったような気になって俺も慌てて席に座りなおした。
こんなに慌てた千蔭さんを、俺は初めて見た。そのリアクションはいったい、どっちなんだろう。
ちゃんと伝わったんだろうか。引かれちゃっただろうか。嫌われたりしたら、悲しいな。どうしよう。言ってしまってから、そんな想いがぐるぐると頭の中を巡っていた。
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