引きこもりに異世界は難しい。

のあるみ缶

文字の大きさ
3 / 10

第3話 屋敷の主人

しおりを挟む
 外に出てはいけない。
 好奇心旺盛な彼女から出てくるような言葉ではない言葉が出てきた。
 それはつまり外はそれほどまでに危険という事か?
 もしくは何か厳しく躾けられているのだろうか。

 「なぁ、外に出てはいけないってどういうことなんだ?」
 「うーんとね……」

 またあの顔だ。
 少し悲しげで泣きそうに俯くエフィ。
 「クン……」
 アレックスも主人の感情を感じ取っているのだろう。

 「私ね、この……」
 エフィが話し始めようとしたその時。

 「エフィ」
 この場所に来てから聞いたことのない声。
 今まで聞いてきた少女の声とは正反対と言ってもいい年季の入った優しい声。
 彼がエフィの話を遮った。

 「エル爺!」
 「見てみて! なつめって言うの!」
 「お庭の芝生で倒れててね……! お外がダメな引きこもり? なんだって!」

 矢継ぎ早に語りかけるエフィの頭を撫でながら相槌を打つ優しいお爺さんだった。
 あと引きこもりの話はやめようね。

 「この人がエル爺……」
 俺はその2人の光景を邪魔しないつもりだったが、思わず声が漏れてしまったようだ。

 俺の言葉にエル爺は
 「やぁ少年、エフィとアレックスはお前さんを困らせていないかい」
 エル爺の言葉を聞いて少し怒るエフィ

 「もぅエル爺ったら! 私達そんな事しないもん! ねっ! アレックス!」
 「ワ、ワンワン! ワ、ワォーン……」

 困惑しつつもご主人に抗えない可哀想な生き物よ。
 目で俺に謝ってるのが分かるぞ、許そう。

 そうかそうかと笑みを溢すエル爺。
 エフィは機嫌が治ったようでまた色んな話をエル爺にしてるようだ。

 「で、お前さん名をなつめ……と言ったか」
 エル爺はエフィを撫でながら俺に問いかける。

 「はい、日高 夏目と言います。助けて頂いてありがとうございます」

 俺はこの屋敷の主人であろうエル爺に深く頭を下げる。
 なんたってこんな怪しい俺を迎え入れてくれる人だ。
 礼を尽くすのは当たり前だろう。

 「ひだかなつめ……変な名前じゃのう!」
 「つ、続けて読まないでもらって……」

 このやり取りさっきもしたな??
 やはりこの世界の人にとっては珍しいのか。
 まぁこの屋敷には2人と1匹しか居ないらしいしこのやり取りもこれで終わりなんだけどな。

 そんな事を思いつつ下げた頭を上げると……
 エル爺が輝いていた。
 え? なんでこの人光ってる?

 そういえば……ベッドで目を覚ました時にもあったような…
 「なんじゃ、ぽけーっとしおって。ワシに惚れたか! だが断る!」

 俺はびっくりしてエル爺を見つめ続けていたらしい。
 あと俺はフラれたらしい。意味わからん。

 「いや、すみませんなんかエル爺さんから光が……」
 俺はエル爺に挽回しようと思ったのだが、その言葉を聞いたエル爺の顔が脳裏に焼きついてしまった。

 「お前さん……もしや……」
 エル爺はハッとしたような、何か希望を見つけたような…いや悲しみもあるか…?
 そんな顔をした。
 一瞬困惑した俺を引き戻したのはエフィだった。

 「どーしたの? エル爺? なつめ?」
 見つめ合う2人を見てエフィは拗ねたような顔で叫ぶ。

 「私抜きでお話しないで!! 最初になつめに会ったのは私なんだからっ!」
 「なつめ! 私とお話しようよっ!」

 エル爺の顔を見たが、また優しい表情でエフィを見つめていた。
 さっきのはなんだったんだろう……。

 気にはなるが、とりあえずこの好奇心100%お嬢様とアレックスを剥がしてからだな…。
 左右の腕をエフィとアレックスに奪われながら俺は思った。

 「引きこもり生活に戻りたい……」
 そんな過去の贅沢ライフを思い出していると。

 「おぃ夏目! 後でワシの書斎に来てくれんか」

 なんだろう? 俺に?
 何かこの屋敷のルールとかがあるのかもしれない。
 それにさっきエフィが話そうとした事も気になる。

 「見せたいものがあるんじゃよ」
 エル爺は少し悲しげで、少し泣きそうな顔でそう言って去っていった。

 家族……? だよな。
 さっきの顔も似ていたし。
 とりあえず書斎に後で向かうか。
 この際、聞きたいこと全部聞いてやr――

 「なーーつーーめーーっ!!!」
 「ワンワンワンッ!!!」
 エフィとアレックスの雄叫びと共にブチっと音が聞こえた。

 引きこもりに異世界は難しい。つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...