あの鐘がなる前に

夏川彩香

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3 電話

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夏希は、准との電話を切ってから結婚式のパンフレットに目を落とした。披露宴の会場はもう、吉川さん・・じゃない。翔太さんだ。会場は翔太さんと決めた。
翔太さんに、いつまでも名字だとややこしくなるから翔太でもいいよ、て言われたけど翔太なんて、気恥づかしいかしいから初めはさん付けで許してくれと頼んだ。
そしたら、じゃあ、呼び捨てになるのまってるよ夏希ちゃん、といきなり下の名前を呼ばれて顔が火照ったのを覚えている。
今まで、綾瀬さんだったのがいきなり夏希ちゃんだなんて。
挙句の果てには、夏希ちゃんが俺のこと呼び捨にしたら俺も夏希ちゃんのこと呼び捨てにするから、と言われた。
結婚式までは、さん付けで・・・。
そんなことを1人で考えていたら携帯が鳴った。
「もしもし?沙奈ー?」
「夏希っおめでとう!結婚するんでしょ?」
いきなり沙奈の声がした。
「あっ、うん。ありがとう」
「まさか、あたしの次が夏希だとは思はなかったよ。」
「うん、そうだ・・・てっ、どうゆうことよっ!?」
電話越しに、沙奈がコロコロと笑っている。
「冗談でもないけど、あたしの次は李美香と春樹かと思ってたから。」
「あー、てか冗談でもないのねっ!」
「あははは」
「でも言われてみたら。でも、あの2人付き合ってないよ」
「え?そうなの?てっきり付き合ってんのかと思ってた。あれ?高校卒業するくらいにつきあってなかった?」
「えー?聞いたことないけどー」
「そうだったのかな?あっ!そうだっ!ドレス選んだ?」
「ドレスさ、沙奈の時みたいに6人で選びたいなー、と思って」
「あたし参加決定ね!」
「オッケー!男子組は強制で連れていくし 笑」
「じゃあさ、日にち決まったらまた連絡してねっ!」
「はぁーい、じゃあね!」

勇太&准
夏希と電話が切れた後に、今日のビールはあんまり美味しく感じない。と思いながらちょびちょび飲んでいたら勇太から電話がかかってきた。
「もし・・・」
しゃべろうとしたら勇太に先を越された。
「結婚おめでとーー!」
はぁ?こいつなにいってんだ?
「夏希っ!よかったなっ!」
おいっ!電話番号間違えてんのか・・・
「もしもし、俺だけど。准。」
「はぁ?お前なんで夏希の電話に出るんだよっ!」
「お前が、夏希と俺の電話番号かけ間違えてんだよっ!」
しばらく、電話の向こうで空気の音がした。そして、ほんとだー!と勇太の声が聞こえた。
「ったく。わかっただろ。」
「うそ、間違えてたみたいなんで、じゃぁ」
態度がコロッと変わって勇太が電話を切ろうとした気配がした。
「あっ、おいっ!ちょっとまて、少し待て!」
「あーー、そうだ。」
てか、ほんとに適当な奴だな!
「さっき思いついたんだけど、夏希の結婚にサプライズで6人の思い出ビデオを春樹に作ってもらうていうのはどうだ?」
「・・・・・・いいんじゃね?」
「だろー!俺て天才?」
「お前はただのアホだろ。電話番号間違えるような。」
「うるせー!てことで、幼稚園から今までの6人が関係する写真全部持つてきてっ!」
「はぁ?どこに?」
「そりゃー、どこだ?」
「ったく、沙奈のカフェでいいんじゃねえか?」
「よしっ!それ名案っ!」
そういって、電話が切れた。
ほんと、調子のいいやつ。
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