SANGA(神々の戦い)

當宮秀樹

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6七人の使者-Ⅲ

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6七人の使者-Ⅲ

 悟り後のフウキは日常の価値判断が今までと180度変わり、一般の価値判断とのギャップに
苦しんでいたが、当初よりは上手に立ち回れるようになっていた。

ことあるごとに【この世は上手く出来ている】と実感していた。

東京から戻り半月が過ぎようとした頃。休憩中に先輩の納谷さんが「おう、フウキ今月は休まねえのかい?」 

「今の所、予定ありません。」 

普通ではあり得ない会話である。納谷は良き理解者でフウキの予定に合わせ仕事を組んでくれていた。
納谷のおかげで全国を移動できた。

フウキは見えない力で応援されている事に感謝していた。と同時に納谷の言葉から、もうじき次の指示が
来る事を予感していた。

ここは東北仙台は槻木にある農家。そこにマヤという名の女性が居た。マヤは不思議な夢で目が覚めた。  

その夢とは・・・槻木町のある友人宅の部屋から空を眺めていると、東の空に十二支の雲が並んで漂っていた。 

その雲をよく見ようと外に出て目を凝らした。すると黒いとてつもなく大きな黒い龍が上空を飛んでいた。 

マヤは金縛りにあった様に身動き出来ず只呆然と眺めていた。 

そしてマヤの目と龍の目が合った瞬間、龍は20メートル位の小さな白い龍に変わっていた。 

その龍は先程の異様までのリアルさは無く、荒削りの白い彫刻の様であり口に白い玉をくわえていた。 

そして龍はマヤを見つめ口を開いた。その瞬間ドーンという雷のような天にも轟く音が辺り一面に響いた。 

瞬間場面が変わり、今度は大きな野原にマヤは立っていた。 

遠くに、一人の体格のいい男が現れマヤに向かって歩み寄ってきた。その男は毛皮のベストを着た
熊祖のような猟師の出で立ち、男の左手には昔風の長い二本筒の銃を持ちマヤの方に笑顔で歩いてきた。

男はマヤの前に立ち持っていた銃を差し出した。その銃は二本の筒のうち片方にティッシュで栓がしてあった。
そしてティッシュを抜いてマヤに銃を渡した。 

「ありがとう」と礼を言って受け取りそこで夢は終わった。 
夢の解釈をネットで調べたが見当が付かずにそのままでいた。

フウキは仙台空港で遅めの昼食を取り、仙台駅近くにホテルにを予約した。部屋で小一時間ほど瞑想し
東一番丁通りをぶらついていた。見知らぬ仲間と出会う事を心のどこかで楽しみにしていた。

「さて、今日は何屋さんに飛び込もうか?」通りを歩いていると、
一件の書道具専門店が気になり店に入った。

書には別段、興味は無かったが店内の有名書家の作品に紛れて、色紙に書かれた一枚の作品が気になった。
 
  早春の朝日に遊ぶ
    黒龍の浅き夢ごころ 
              摩耶

フウキはその書から伝わるバイブレーションに興味を示した。 

「すみません。この書にある摩耶さんって書家の方ですか?」

「あっ、それね、それは地元の娘さんで詩と書を色紙に書いて、
路上販売してる女性で、当店のお客さんでもあるんです。 

お兄さんも是非見てやって下さい。即興でその人にあった詩と書体で書いて路上で商売してる若い娘さん
なんです。地元ではあれで結構有名なんです・・・」

「そうですか。で、何処に何時頃行けば会えますか?」

「うちの店の前で九時頃になったら来ますよ。見てやって下さい」

「はい。ありがとうございました」 

フウキは九時に出直した。 

そこには年の頃ならフウキと同じくらい、飾らない感じの女の子がいた。

「摩耶さんですか?」

「あっ、ハイ・・・?」

「僕はフウキと言いますが、先程この店の店主から君の色紙を
見せられて来ました。僕に合った詩を書でお願い出来ますか?」 

「あっ、はい、ありがとうございます。ではここにお座り下さい」 

摩耶は改めてフウキを見直した。一瞬目を疑った。仕事柄、人の顔と雰囲気を観察するのが不可欠であったが
摩耶は初めての体験をしていた。 

目に映ったフウキは半分透き通って見えたからだった。 
幽霊か宇宙人と出くわしたと思った。平静を装い口を開いた。 

「お客さんは何処から?何をやってる人なの?」摩耶の精一杯の言葉だった。 

「僕は、今日札幌から来たんです。仕事は大工・・・」 

「私が聞きたいのはそういう事ではありません。あなたは何者かって事です・・・
あっ・・・唐突ですみみません・・・」言い終わってからとっさに出た言葉を反省した。 

フウキは笑みを浮かべ言った「今、言ったように札幌から摩耶さんに会いに来た大工ですけど」 

「あっ、そうですか。・・・えっ?私???今、何て言いました?」 

「札幌から摩耶さんに会いに来た大工です」 

「新手のナンパか何かですか?そういうの私、興味無いので・・・ 
帰ってくれますか?」少しムッとした摩耶であった。 

「話し方を変えますね。摩耶さん、あなたは僕を視て身体が半分透けて見えましたよね。それは摩耶さんが
僕を霊視した結果なんです。気付いてると思いますがあなたはお客さんを霊視して作品を作っている。
それが的確に表現されているからお客さんの評判がいい」

フウキがそこまで話すと摩耶の表情が柔和になり、心を開いていた。 

「私は小林摩耶と云います。あなたが言ったようなかたちで
路上で商売しております」 

「唐突でごめんなさい。僕は宮園風輝と申します・・・」

仙台に来た目的と今までの経緯を一通り話し摩耶の
顔色をうかがった。

「ご丁寧にありがとうございます。でも、私がそんな大役が務まると思いませんし、宮園さんのいうような
人間ではありませんけど・・・」 

「そうですか。僕は無理強いはしませんので、考えておいて下さい。明日札幌に帰ります。
唐突に変な事をいって本当に申し訳ないです。最後にひと言いいですか?」

「・・・ど、どうぞ」 

「干支の十二支はまず摩耶さんの気を引くため。次の黒龍はあなた自身のパワーを表わしてます。
白い龍は神の使命を表わします。 

次に出て来た猟師はあなたのガイドで、鉄砲の筒から紙を抜いたのは封印を解かれ、いつでも使用可能に
なったと伝えたかった。僕流の解釈はこうです・・・」 

摩耶は衝撃に打ちのめされた。 

「何故、私の夢の内容をフウキさんが事細かに知って
るんですか?・・・」 

「摩耶さん、あなたのガイドがそう伝えてほしいと言いました」 

しばらく二人の間に沈黙があった。 

摩耶は顔をゆっくりと上げた。目には涙がにじんでいた。

「お役に立てるかどうか解りませんがやってみます」 

フウキは微笑んで言った。 

「お近づきの印に今夜は飲みませんか。他の仲間の話も
聞かせます」 

摩耶は店を早仕舞いし居酒屋で話した。 

翌朝、ホテルで朝食を取ってると突然金色に輝く「鹿児島」という文字が頭に浮かんだ。
フウキは急遽仙台から東京経由で鹿児島に飛んだ。

飛行機を降りて市内に直行しホテルを取ってから町を探索した。時間は夕方になっていた。 

思い起こせばこれまでの五人の事は順調過ぎるくらい
上手く運んだ。 

サンガの計画は完璧だった。 

繁華街をぶらつき感じ入るものが無かったので夜の10時には
ホテルに戻りその日は終わった。

翌朝、ホテルの朝食を済ませ部屋に戻った瞬間頭の中で閃いた。

「10時05分羽田行き」 

フウキは早速チェックアウトし、羽田行きのチケットを購入し、
何とかその便に間に合い飛行機は鹿児島をあとにした。

フウキは自問自答していた「いったい鹿児島は何だったんだろう?」そういうこともあるか・・・

飛行機は離陸しシートベルト着用のサインが消えた。隣の席に
座っていた若い学生風の男性がフウキに声を掛けてきた。 

「あのう、すみません」

「はい?」フウキが応えた。

「お一人ですか?」 

「はい、一人です」ここでフウキには上からの啓示の意味が解った。少し楽しんでみようと思った。

「おたくさんも一人?」 

「はい」 

「東京へ?遊び?それとも旅行?」

「僕、今朝、夢を見たんです。それが金色の文字で(今日、東京へ!)という夢でした。
最初は無視したんですけど胸の奥で行かなくちゃという気がしてたまらなくなったんです。 

それで今日、学校を休んで飛行機に乗っちゃいました。
変ですよね。

自分でも解ってるんですが・・・でも、チョット不安で・・・
誰かに聞いて欲しくて、つい隣の席にいたお兄さんに声をかけてしまいました・・・ぼく変ですよね、
ごめんなさい・・・」

「話してくれてありがとう。僕は宮園風輝。札幌在住よろしく」 

「あ、はい僕は宮越羅取(ラトリ)です。鹿児島高校3年です」 

「ところでラトリくん君の話からすると東京での用事が決まってないようだし、僕と半日程つき合わない?」 

「はい、でも僕は宮園さんの事、何にも知らないからその・・・」 

「そうだよね。でも僕は君の事を知ってるよ。君には二つ上の姉さんが居てしかも双子のね。
君の彼女は髪が長くその香りはいつもレモンの様で君はとても気に入ってる。彼女が入っている
クラブは吹奏楽ってとこかな?他にも言う?」 

ラトリは耳を疑った。 

「どうしてそんな事まで知ってるんですか?宮園さんは
神様・・・?」 

「驚かしてごめん。君の情報は、今上から聞いたから知ってる」 

「上って何ですか?」 

「ガイドのことだよ。君の事をいつも見守っている縁の下の力持ち的存在をガイドと云うのさ。ある意味、
君の事を今の君以上に知ってる非物質の存在だよ」 

「それって守護霊の事ですか・・・?」 

「そうとも云う。僕は宗教的な意味合いが嫌いだから、ガイドって表現するけど。
もうひとつ付け加えると昨日、僕は急遽仙台からここ鹿児島に来たんだ。君に会う為にね。 

君が未成年だと云うのは今解った。だから昨日はいつもの癖で
夜の町を探してしまったよ。だから会えず終いさ・・・
 
でも、今こうして東京に僕と君が向かってると云う事は、たぶん東京で何かがあるんだ。だから僕は
半日つき合わないか?って聞いたのさ」 

「何だか解ったような解らないような感じです。でも話しかけたのは僕ですし東京で行きたい所も
無いからおつき合います」 

「了解!じゃあ、まず小説家のシバさんに会おうか?彼は僕より年上で小説家なんだ。
羽田に着いたら連絡してみるよ。その前にここまでの経緯を話すね。今、仲間は君と僕を含め全部で
7人いるんだ・・・」 

飛行中、一通りの流れをラトリにレクチャーした。浜松町から
シバに電話を入れ銀座で待ち合わせ、遅めの昼食をすませた。

シバが言った「近々7人で会って話しませんか?顔合わせもしたいし、皆の意思も確認したい」 

フウキは「そうだね。とりあえず鹿児島で会いましょうか? 
ラトリ君は高校生だから負担にならないようにみんなが鹿児島に集合しましょう。ラトリ君はまだ
自覚してないようだけど、君は動物と会話出来る能力と自然界の空気、又は波動を読む事に長けている。
自分を磨いておいて欲しい。コツは頭に頼らないで全身で感じて欲しい」

三人は再会を誓い銀座をあとにした。
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