小説家HisaeとSizu 全10作

當宮秀樹

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2「Sizuちゃん」

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2「Sizuちゃん」

  Hisaeは久々に渋谷の街に出た。 
いつ来ても渋谷って若者のパワーが凄いところなだね。 
ここも日本か……嗚呼、田舎が懐かしいな~ 何故か渋谷に来るといつも思い出す。 

Hisaeは北海道は羊蹄山の麓、倶知安街という田舎で生まれ育った。 
東京に憧れ上京したのが十八歳。 東京の街は全てが新鮮だった。 
なんで、なんで? 
わたしって今だ独身なわけ? 私って変? 
渋谷に来るたびに毎回同じ思いが頭を過ぎる。 
スペイン坂の辺りを歩いていると、前から来た女性と軽く手が接触した。

「あっ、すいません」三十歳前後くらいの女性だった。

「いえ」Hisaeはそのまま立ち去ろうとした。

「チョット待って下さい」その若い女性らしき?ひとが話しかけてきた。

Hisaeは怪訝な顔で「なにさ?」

「あなた『いえ』って、ひとにぶつかっておいてそれだけなの?」

Hisaeはその女性を凝視して言った「……なにが?」

その女は「なに?このオバハン」

禁句の言葉をいってしまった。

「今なんていった?」

「オバハンっていったの。 それが何か? ふんだ!」

「オバハンって誰のこと?」 

「あなたでぇ~す」

「……なにさ、変なオカマ」
 
「なにそれ! 頭にきた。 誰がオカマよ!」

「誰がって、あんた以外ここにオカマいないけど?」

「そんなこといってるから彼氏出来ないのよ……」

「オカマにいわれたくない」

「だから今だHisae姉さんは独身なのよ」

「要らぬお世話だよ! あんただって今だに片乳だろうが。 片乳のエバさんよ」

そう、二人は知り合いであった。

「Hisae姉さん久しぶり~」

「エバ久しぶりだね~相変らず片乳なのかい?」

「そう片乳で~す。たぶんこの先もずっとカタチチの予定、ヤダ~なに言わせるの」

「何年ぶりだいネ?」

「私が池袋店に移った頃だから五年ぶりかしら?」

Hisaeはスナックオネェの髭の常連だった。 
エバが池袋店に移るまで二人は毎週六本木で朝まで飲み明かす仲。 
二人は喫茶店に入って話し始めた。

「姉さん元気してたの?」

「あったりまえよ。 誰だと思ってるの?」

「あ~変わってな~い。 受ける~」

「なんだい、そのコギャルみたいな話し方は?」

「コギャルだって~。 久々に聞いたっていうかそれ何十年前の言葉なの?」

「うるせっ! それより急にどうした?」

「姉さん、私より男臭い」

「エバてめぇわたしゃ帰るぞ」

「メンゴ~ メンゴ」

「エバ、お前もじゅうぶん古いけど……」

なかなか話しが先に進まない二人である。

エバが「実はね、店の客なんだけどチョット変わったタイプの女の子がいるのよ。 
私との何気ない会話の中で、その娘が急に『私、目標にしてる人がいて、
その人は小説を書いてる』っていうのよ、ね。 そしてこうもいったのよ。 
『その人はHisaeっていう人なの』って。 
それを聞いた時、正直ビックリしてフリーズしたわ…… 
Hisaeさんは私の知り合いよっていいたかったけど少しこらえたの。

何処がいいの? て聞いたら『わからないけど、いい』って言うの。 
当然、なんでそう思うの? てまた聞いたのね。 
『私、分るんです』って答えたので思わずその娘を透視してみたの。 
そしたらその娘のガイドが黙ってうなずいたのよ。 
で、Hisae姉さんを紹介しようかどうか迷って、気が付いたら電話してたの。 
以上…… どう思う?」

「べつに紹介したっていんじゃない?」

「いいの?」

「だって、金貸せとかわたしに恨みがあるとか、
そんな事じゃないんだからべつにかまわないでしょが……」

「えっ本当に? 良かった! 実は今日、連れて来てるの。 紹介するね」

エバは言い終わるか終わらないうちにメールを打ち始めた。   

「あんたねぇ、そういう事は早くいいなよ」

五分ほどで女の子がやってきた。 現代ではチョットこころなしかお地味なというか
、個性的などちらかというと昭和のファッションという感じの娘だった。

「わたしSizuなのだ……」

「こんにちわ、わたしエバの友達のHisaeです」

「エバさんに知り合いだって聞いてびっくりしたのだ。 
Sizuに会わせて下さいって言った。 夢が叶いました。 
会ってくれてありがとうございます。 なのだ、じゃぁ、さようならなのだ……」

そのまま席を立って歩き出した。 Hisaeはコーヒーカップを持ち上げた手が途中で
固まってしまった。 そ

して、エバに目線を向けた。 エバは笑顔で手を振りSizuを見送っていた。

「エバ…… 今、なにかあった?」

「ごめんなさい、姉さん。説明が足らなかった」

「足らないっていうよりも今のなに? なにがあったの?」

「Sizuはサバン症候群なの。 でも全然軽度の障害で普通に
印刷会社にお勤めしてるOLさんなのよ」

「なんで? エバの店にSizuちゃんが出入りするのよ?」

「最初は会社の飲み会で連れてこられたのよ。 
その時、どういう訳か私と話が合ったっていうか同調したっていうか
姉さんならわかるでしょ? その後、何度か会社の飲み会に
彼女も参加するようになったらしいの、私に会いたい一心で」

「それって怖いもの見たさからかい?」

「おい、Hisae、こら…… で、一次会など他の店ではほとんど無言なんだって。 
私の店に来たら私とは沢山話しするのに。 去年の忘年会の二次会、
うちの店じゃなかったのね。 そしたら翌日、会社を無断で休んだらしいのよ。 
オネェの髭に来られない事で彼女ひねくれたらしいの」

「ふふ、そうなんだ。で、なんで私の事を知ってるの?」

「ネットで妖怪を調べていてリンクしたらしいのよ。 
それで姉さんのブログが彼女の目に止まり是非会いたい。 
エバ知ってるっていう具合なの」

「なるほど、で、なんで妖怪からHisaeにリンクするわけ?」

「妖怪と共通する何かを姉さんのブログが持ってるのよきっと」

「なるほど納得したわ。 するか馬鹿野郎、エバ表に出ろオラ! 
でも、会った瞬間帰るってどういう事?」

「たぶん一瞬で姉さんの事、見抜いたか、姉さんに会う事だけが目的だったと思う」

「私の何をどう見抜くっていうのよ?」

「そこがSizuちゃんなの。 私達凡人には理解出来ない世界かも」

「なにが凡人よ。 エバは凡人というより奇人。 で、私は天才Hisae」

「奇人? 相変らず姉さんと会話してると面白い」

「私もSizuちゃんに興味持ったかもしんない。 
ねぇ、もう一度電話してここに呼びなよ。 なんかこのまま別れるのはもったいないよ……」

「そうね、私も姉さんとSizuちゃんの会話を見てみたい」


 そして三人は場所をカラオケBOXに移し酒を飲んだ。

Hisaeが切り出した「Sizuちゃんはなんで私に興味を持ったの?」

「ブログが綺麗だったから…… なのだ」

「あっ、そうありがとうね。 で、どういうところが?」

「形なのだ」

「あっお姉さん、言い忘れたけど彼女、私達と似たような能力を持ってるの。 
Sizuちゃんは意識の形が視えるの。 
たぶん、ブログから姉さんの持ってる意識の形が視えたんだと思うよ」

「なるほど、あんたも片乳なのかい?」

「おいHisaeこらっ!」

「そう言うことか。へえ、面白い能力持ってるのね」

「……」

「それと、Sizuちゃんは質問には答えるけど、
自分から他人に質問しないから。 ねぇSizuちゃん」

「なのだ」

「へぇ~~ブログが綺麗か初めていわれたよ」

「私なんか初対面の時にオネェさん? お兄さん? どっち? って聞かれたのね。 
だからお姉さんですって少し強めにいったのよ。 
そしたら『半分なのだ』って笑い出したのよ。 失礼でしょ? 
でもSizuちゃんは気持ちに裏表が無いから好きなのよ」エバは笑顔で言った。

「Sizuちゃんには目には映らない感覚が視えるのね、Hisaeもファンになりそう」

「でしょ? 私もすぐSizuちゃんのファンになったのよね。 
そんなSizuちゃんの口からHisaeっていう名前が出た時は本当に驚いたわ。 
二度ビックリよ、これって絶対何かの運命って感じたの。 早く姉さんに会わせたかった」

Sizuは二人の会話を楽しそうに聞いていた。 そしていきなり「二人、仲良くやれよ。なのだ……」

Hisaeとエバはコケた。 そして大笑い。

その時いきなりスピーカーが鳴りだした。 
誰も曲をセットしてなかったのに、スピカーからイントロが流れ出した。 
ベートーベンの第九交響曲合唱。 エバが曲を止めようとリモコンに手を伸ばした瞬間、
Hisaeがその手を制止させ、Sizuを見ろと目配せをした。

視線の先にはマイクを持ったSizuの姿があった。 
Sizuは淡々と歌い始めた。 しかも流暢なドイツ語で。 
Sizuのカラオケを聴いた事が無かったエバは、
ただ呆気にとられ目にはうっすらと涙まで浮かばせていた。

歌い終えたSizuに二人は大きな拍手を送った。

エバが「あんた、どこでその曲、覚えてきたのよ? 店では一度も歌った事無いのに凄いよ……」

「CD聞いたのだ」

Hisaeが「Sizuちゃん、他にも何か歌ってよ」

Sizuは気を良くしたのか続けて三曲アニソンを熱唱したが調子が外れていた。 つまり音痴。 
聞いていた二人は何故第九だけが上手に歌えたのかその時は知るよしも無かった。

それから数日が過ぎ、Hisaeのもとにエバからメールが届いた。

「姉さん、先日はご馳走様でした。 あの後Sizuからメールが来て、
またHisaeさんに会いたいと書いてありました。 
この前は本当に楽しかったみたい」

「OK、私のPCメルアド教えてあげてちょうだいよろしく。 Hisae」

数日後、PCにSizuからメールが届いた。

「Hisaeへカラオケ楽しかった。 また行こうなのだ」

か~~色気もなににもねえSizuちゃんらしい文章。

「OK!また行こうね Hisae」

返事が来た「いつ行きますか? なのだ」

「そのうち行こう」

「そのうちって、いつなのだ?」

勘弁してけろ~~~
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