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Chapter 11
対決 ⑩ ♡
しおりを挟むブラウスのボウタイが、しゅるるっと解かれる。ブラウスのボタンが手慣れた指で外されていく。
「ちょ…ちょっと、自分でできるから出てってよ……」
稍が「抗議」するが、その声は弱々しい。
智史は構わずにボタンを外し終わったブラウスを剥きはがすように脱がせる。
そして、しゃがんで立膝をつき、稍のグレンチェックのワイドパンツをずりっと下ろした。
さらに、キャミソールの左右のストラップから稍の腕を引き抜き、ずりっとして、下まですとんと落とす。中から淡いブルーのレースのブラが現れた。
智史はじっとそれを見つめながら、後ろのホックをぷつっと外して、めくるようにブラを脱がせると、稍の上を向いた形のよい乳房がぽろんとまろび出た。
「ちょ…ちょっと……智くんっ⁉︎」
稍はあわてて両手を交差させて両胸を隠す。すかさず、ブラとお揃いのショーツがパンストと一緒に引き下ろされた。
「ぅわぁーーっ⁉︎」
恥ずかしさのあまりしゃがみこもうとする稍の腕を取って立ち上がった智史が、
「今度はおまえがおれを脱がせろ」
と言って、首をくいっと突き出す。
ネクタイはすでに取られていて、ワイシャツのボタンは上の二つが外されていた。
稍は渋々、その下からのボタンを外していく。
智史は稍からぎこちない手でゆっくりと衣服を脱がされながら、自由になった自らの手は稍の乳房をすっぽり包み、親指でその突端を自在に弄んでいた。
稍の手がぎこちなくなるのはそのためでもある。
しかも、自分は真っ裸のまま相手を脱がさなければならないのだ。
やがて、すっかり生まれたままの姿になった二人はバスルームへなだれ込んだ。
今までつき合ったどの男とも、稍は一緒に入ったことがなかった。
だから、稍は今までに味わったことのないほどの羞恥心を湛えた表情で、智史を見上げることになった。
その瞬間、智史の理性がぶっ飛んだ。
稍はこのあと、これまた、今までしたことのない体位で智史を迎え挿れることになり……
わんわんと反響するバスルームの中で声をあらん限りに啼き叫ぶことになる。
「天誅」は——果たせなかった。
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
おでこに冷◯ピタを貼られた稍は寝室のベッドで寝かされていた。
しこたま強い酒を呑んだあとに、バスルームで「あんなこと」をさせられたのだ。のぼせないわけがない。
「稍……悪い。ごめんな」
さすがの智史も「反省」して謝った。身体中を火照らせて、熱い息を吐く稍を腕枕して、その髪を優しくやさしく、撫でている。
稍は先刻から、なにやら譫言のようにつぶやいている。
智史は稍の口元に耳を寄せた。
「……す…き……やや……さとくんの…こと……だいすき……」
智史の切れ長の目が見開かれる。
「……やや……さとくんの…ため…やったら……なんでも……する……」
智史の鉄仮面と呼ばれる無機質な表情が、跡形もなく完全に崩れた。
「稍……実は、神戸でな……」
そう言いかけて、やっぱり稍にちゃんと意識があるときに言おう、と思い直した。
そして、智史は自身の左手で稍の左手をそっと握った。
二人の薬指には、互いにつけ合って「誓いのキス」をしたあの日からずっと、ティ◯ァニーのハーモニーがあった。
夢なのか、現なのか……わからない中で、稍は思う。
麻琴に、子どもの頃の「神戸でのこと」を言いたくなかったのは……
あれは「ややとさとくん」だけの……「たいせつなたいせつな想い出」だからだ。
特に……智くんと……身体をつなげたことのある女には……
絶対に——教えたくなかったからだ。
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