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Last Chapter
⑦
しおりを挟む有明テニスの森駅近くの、聳え立つタワーマンションの前に、恭介と麻琴はいた。
「ここって……もしかして……」
「そうだよ、僕の家」
——いやいやいや、そうじゃなくって……
まさか、こういうシチュエーションで「彼のマンション」に来るとは思わなかった。
あの頃、ここに住んでいることは知っていたが、最後まで招き入れられることはなかった場所だ。
——まぁ、だからと言って「彼の部屋」へ行くわけじゃないけれど……
「ここね……ややちゃんが住んでいるマンションなのよ」
かつて、麻琴が招ばれたかった部屋の主と一緒に住んでいる。
「あぁ……だって、青山さんに紹介してもらったからね」
なにも知らない恭介は、得意げに言う。
「帰国してしばらくは実家に住んでたんだけど、いろいろと家族が煩わしくてね。青山さんに『どこか良い物件はないか』って相談したら『セキュリティはもちろんのこと、コンシェルジュがしっかりしてて、良いマンションだから』って勧められたんだ。実際に住んでいる人がそう言うのなら、間違いないでしょ?」
恭介はそう言いながら、エントランスへ向かう。
エントランスを立ち塞ぐ巨大な自動ドアが、恭介の指紋認証で解除され、うぅぃーんと開いたと思ったら、そこにコンシェルジュが傅いていた。
「……お帰りなさいませ、松波様」
「ただいま、テンシくん」
松波はコンシェルジュに上機嫌で挨拶した。
——『テンシくん』って、「天使」ってこと?まぁ、「名は体を表す」って感じだけど。
ホテルのドアマンのような制服を着たコンシェルジュの彼が、まるで王子様のような雰囲気のイケメンだったからだ。
「恭介さん、今の僕は『業務中』なので……」
「テンシくん」と呼ばれたコンシェルジュが苦笑いする。
「じゃあ、君の『業務』にも関わることを。紹介しておくよ。僕の奥さんになる麻琴だ。青山さんと同じ会社に勤務してるんだ。彼の奥さんとも友だちだよ」
恭介が麻琴の腰を引き寄せ、紹介する。
「ええぇっ⁉︎ 恭介さん、とうとう結婚されるんですかっ⁉︎」
テンシくんがものすごく驚いている。
「いやぁ、てっきり一生独身のままかと思っていましたよー!もしかしたら、女性には興味ないんじゃないかと……」
と言ったところで、恭介からばしっ、と背中を叩かれる。思わず「痛てっ!」と顔を顰める。
「ちょ、ちょっと、恭介さんっ⁉︎」
麻琴があわてて間に入る。
「あぁ……彼ね、僕の妹の麗華の同級生で、ガキの頃から知ってるんだよ。ま、こいつがコンシェルジュの一人だっていうのも、ここに住むことにした理由の一つだけどね」
恭介がぎろり、とテンシくんを睨む。
「はじめまして、大橋 典士と申します。辞典の『典』に武士の『士』なので、子どもの頃から『テンシ』って呼ばれてます」
深々とお辞儀をしながら、典士は名乗った。確かに胸のネームプレートには【大橋 Ohashi】とある。
——あれ? 『おおはし のりあき』って名前、どこかで聞いたような……
「こいつね、こう見えてね。……大橋コーポレーションの御曹司なんだよ」
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