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Last Chapter
土下座で愛の言葉を叫んでます ⑤
しおりを挟む「亜湖ちゃんから『ラ◯ン』とかいうのが来たらしいですよ」
「えっ、亜湖ちゃんからっ?」
——気のせいだろうか、松濤のおじいさまの声が上擦ったような……?
「読み上げてちょうだい」
松濤のおばあさまが、後ろを振り向いて言った。
「『おじいさま、彩乃さんのご結婚に反対されていると伺いました』」
ハウスキーパーらしき女性が、スマホを見ながら読み上げていく。
「『もし、このまま、反対をお続けになるようであれば』」
松濤のおじいさまが、ごくっ、と唾を飲んだような……?
「『わたしは、一生、おじいさまとは口をききません』」
松濤のおじいさまの顔が、ムンクの叫びになったような……?
——いや……なったのだ。
「す…すぐに、亜湖ちゃんに連絡を取ってくれっ!一刻も早く『誤解』を解きたいっ!!」
松濤のおじいさまは即座に立ち上がった。
「あ…彩乃っ、結婚するんだから、来年からの新年パーティには必ず、そこの富多の御曹司と来るんだぞっ、いいなっ!?」
そして、あわただしくハウスキーパーを従えて別室へと去って行った。
わたしと将吾は、まだ抱き合ったまま、ただ呆然としていた。
「……彩乃ちゃん、仲がいいわねぇ」
松濤のおばあさまが、ほほほ…と微笑まれた。そのやわらかな物腰は、慶人の母親である清香おばさまがよく似ていらっしゃる。
わたしたちは、あわてて互いの身を離した。
「大地が亜湖ちゃんを連れてきて以来、主人がすっかり気に入っちゃってねぇ。しょっちゅう亜湖ちゃんに電話するもんだから、大地が怒っちゃって……チャクシンなんとか?っていうのにしたんですって」
——わかった!
亜湖さんが、紗香おばさまによく似てるからだ。
つまり、松濤のおばあさまに似てる、ってことだけど……
「ねぇ、香子おばあちゃま、上條のおじさまが、松濤のおじいちゃまの恋敵にそっくりだったってほんと?」
慶人の結婚式のときに、大地が話していたのだ。
上條のおじさまを見てると、松濤のおばあさまを争った相手を思い出すから、今でもキツく当たるんだとか。亜湖さんのご両親から聞いたらしい。
同じテーブルで話を聞いていた将吾も肯いた。
「あら……どこでそういうお話になったのかしら?」
松濤のおばあさまは首を傾げた。
「むしろ、どちらかといえば……主人の方が真也さんに似てるわねぇ。相手の方は壮一郎さんに似ていたもの」
「真也」が大地の父親で、「壮一郎」が慶人の父親である。
「「ええぇーーっ!? 」」
「相手の方は元華族のお家柄よ。うちのおとうさまは、そちらと結婚してほしかったみたいなの。主人のことは『成金の株屋』って毛嫌いしていたもの」
——話がずいぶん違うじゃんよっ!
だったら、上條のおじさまを嫌うのは「近親憎悪」みたいなもんじゃん!
「……あの、クソじじい」
将吾が低い声で唸った。
どちらかといえば、将吾も「近親憎悪」される方のタイプだな。つまり、俺様ってことだ。
——それにしても、大地のヤツ、あの松濤のおじいさまを、ぎゃふん、って言わせてくれる相手をしっかり連れてきたな。
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