最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

フウ

文字の大きさ
10 / 375
第1章 深淵の試練編

10話 落ち込みます

しおりを挟む
 俺は今、空を飛んでいる。

 いや厳格に言えば俺が飛んでいるのは地下迷宮の中なので空では無いのだが……そんな事はこの際関係ない。
 大事なのは空を飛ぶ事は素晴らしいと言う事ですから。

 まぁもっと正確に言えば、空を飛んでるのは俺じゃなくて俺が乗っているフェルなんですけどね。
 なぜ俺がフェルの背に乗って迷宮の天井付近を飛んでいるのかを説明しましょう。

 始まりはベッドでの安眠から目覚めて、迷宮攻略を開始してから少しの事でした。

 前の10層とは打って変わり、絶え間なく襲いかかってくる魔物達に、思わず面倒だと愚痴を漏らしました。
 するとフェルが。

「じゃあ吾が、運んであげる」

 と言ったことが事の発端。
 フェルの提案に乗り、今こうしてフェルに跨って飛んでいる訳ですが……これがどうして、全く魔物達が襲って来ない。

 この階層にも前回のアラクネの様に天井を這いずり回っている様な奴も存在する。
 しかしそんな魔物達でさえ、フェルが一定の距離に近づくと、まるで道を譲るかの様に避けて行く。

 当たり前ですがフェルは現在、霊鳥の姿に戻っている。
 人型でも飛べるらしいですけど……流石に自分より幼い少女に乗るのは絵面的にも、俺の精神的にもマズイ。
 そんな訳でフェルには霊鳥型になってもらっています。

「フェル、疲れたらすぐに言って下さいね。
 陸路に切り替えますから」

「ん、わかった」

 フェルは霊鳥型なので直接話している訳では無く。
 何やら念話の様に直接声が聞こえて来ると言う不思議体験を初めてしたのが約2日前の事。

 因みに俺たちは今、第187階層を飛んでいます。
 ここまで来るのに、フェルがいた180階層のボス部屋を出て僅かに2日。

 驚異的なスピードと言っていい速さで攻略が進んでいます。
 何せ俺1人であれば、ボス部屋から7階層進むのに、今までの過去最高記録で体感5日かかってましたからね。

 寝ずの強行を続けてやっとの5日に比べ、休憩や仮眠を十分に取りつつ僅かに2日……俺の今までの苦労は一体何だったのでしょうか。

 普通に凹みますよ、これは。
 しかも、このままの速度で行けば4日目にはボス部屋に着いてしまいますよ……

 まぁこんなに速く進めているのも、魔物達がフェルを避けて行くからなんですけどね。
 それにしても何故、魔物達はフェルを避けて行くのでしょうか?

 仮眠を取っている時も、フェルの事を魔物達が避けるので一度も襲われない。
 お陰でかなり負担が軽減されましたけど、不思議ですね。
 これも魔物特有の生態なのでしょうか?

 そんな事を考えているうちに、次の階層への道が見えて来ました。
 4日目どころか今日中にはボス部屋に到着しそうな勢いですね。

「フェル、まだ飛べますか?」

「ん、余裕」

「じゃあ取り敢えず、次の階層の水辺に降りて休憩を挟みましょうか」

「わかった」

 この迷宮内には何故かどの階層にも一つ大きな地底湖の様なものがあり、そこに行けば飲み水を確保する事ができる様になっています。
 まぁ俺の場合は〝等価交換〟と言うと公式チートがあるので、今までは縁のない場所でしたけど。

 フェルの体を洗いたいし、水辺の方が寝るとき気持ち良いと言う要求を得て、各階層の地底湖に寄る事にしました。

 今まで、この地底湖を活用しなかった理由として〝等価交換〟で補える以外に、魔物が大量に集まって来るからと言うのもありました。

 と言うかこっちが本命です。
 飲み水はあるのに、そんな命がけのリスクを背負ってまで、そんな場所を使う必要はありませんからね。

 しかし!  そんなリスクもフェルがいたら全てが解決!!
 何せ魔物達自身が、蜘蛛の子を散らす様にフェルを避けて行き一切近寄って寄ってこないですからね。

「ここを出たら本当の空を飛んでみたいですね」

「ん、わかった。
 ここを出たら、乗せてあげる」

「それは楽しみです」

 水辺にベッドを出して、その上に寝転んでいるのだが。
 こうしていると、ここが迷宮、それも世界最大級の八第迷宮だとはとても思えませんね。

 因みに休憩の時や仮眠中は、フェルも人型になっています。
 そうしないとベッドに乗る事が出来ませんからね。

 フェルも既に人間が生み出した叡智の結晶たる、ベッドの虜です。
 床で寝るよりもベッドにで寝た方が気持ち良い、とは他ならぬフェルの言葉です。

 フェルを虜にしたベッドは〝等価交換〟で買った、何処ぞの王宮にある様なやつと同等かそれ以上の逸品!
 それなりに痛い出費でしたが、安眠には変えられないので仕方がない事なのです!!




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「つ、着いてしまった…」

「コウキ、何をしている?」

 休憩を終え、再びフェルに跨がり出発してから数時間後。
 俺たちは無事に第190階層ボス部屋前まで辿り着いた。

 そう、辿り着いてしまったのだ。
 俺が本気の強行を行なっても、恐らく2週間はかかるであろう道のりを経ったの3日で……

 よって俺は今、四つん這いになって項垂れていると言う訳です。
 フェルはそんな俺を無気力な目で見詰めながら首を傾げています。
 俺が、この俺がこんな醜態をを晒す事になるとは思いもしませんでした……

 父はいつも、「強くあれ、それが成功の秘訣だ」と教訓を語っていました。
 しかし俺は今、その教訓をとても守れそうにありません。

「よしよし」

 フェルが俺の頭を慰める様に優しく撫でる。
 幼女と言っても過言では無い少女に頭を撫でて慰められる。

 側から見れば途轍も無くシュールな光景だと思うのは俺だけだろうか?
 これがまた俺に多少のダメージを与えている事にフェルは気付いてい無い。

「もう、今日はダメだ、何も出来る気がしない」

「コウキ、大丈夫?」

「フェル、今日はもう寝るぞ」

 ベッドを〝無限収納〟から取り出し、もぞもぞと布団の中に潜り込む。
 その俺の後をフェルも付いて来て、いつもの様にベッドに寝転ぶ。

 そのまま目を瞑るが、隣から感じる視線にふと目を開けると……フェルがいつもの無気力な瞳で俺の顔をジッと見詰めていた。

「どうした?」

「コウキ、いつもと口調が違う」

 端的に言うフェルのその言葉にハッとなる。
 どうやら、またやってしまった様だ。

「どうしたの?」

「すみません、気を悪くしたのなら謝ります」

 俺は何かショックを受けたりすると、無意識的に言葉遣いが素になる事があるのです。
 小さい頃からこの容姿のせいで周囲からイジメられていた事もあり、一時期俺はかなりグレてしまいました。

 中学に上がり、両親から言われて荒い口調を直そうと奮闘した結果、今の口調になったのですが。
 激しく動揺したりすると、無意識の内につい素の口調が出る様になってしまったらしいのです。
 これもまた、両親からはよく注意されましたが、治る事なく未だにこの通り……

「ん、別にいい。
 コウキが、楽な方で、話せばいい」

「ありがとうございます。
 今後も素の口調が出る事があると思いますが、その時は俺を宥めて下さいね」

「ん」

 そう言って頷くフェルには感謝しなければなりませんね。
 俺の口調の変化について詮索してこないのですから。
 尤も、本当に興味が無いだけかも知れませんが。

 別に理由を言いたく無い訳でも無いですけど、これと言って特に人に言いたいとも思いませんからね。
 全く、厄介な癖がついてしまったものです。

 ため息をつきつつ、隣を見ると。
 俺に抱き着きながらフェルはもう既に寝息を立てていた。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「フェル、そろそろ行きますよ」

 装備を整えて、未だに眠たそうにしているフェルに声をかける。

 本当にフェルが羨ましいです。
 俺はこの迷宮での経験で新たな癖がついてしまった様で。
 寝ていても脳のどこかは必ず起きている、と言うイルカみたいな状態になる事ができる様になりました。

 そのせいで、未だに真の意味での安眠はこの世界に来てから一度もした事がありません。
 それに比べてフェルの安眠ぶりときたら……羨ましい限りです。

「ん」

 欠伸を噛み殺したフェルが頷き、俺の方に駆けて来ました。

「さて、次は一体どんな奴がいるんでしょうね?」

「吾、知ってる」

 したり顔で言うフェル。
 どうやらフェルは、ここの階層ボスを迷宮の創造者に頼まれた際に他のボス達の事を聞いた事があるらしいです。
 聞いても教えてくれませんでしたけど。

「鬼が出るか蛇が出るか、楽しみですね」

 もうお馴染みの黒い扉に手を当てる。
 いい加減、見飽きて来た光景を目にしながら中に入り、そして。

「ここで来ますか……」

「どう、驚いた?」

 いつも無気力なフェルが珍しく楽しげに、いたずらに成功した子供みたい聞いて来る。
 こう言うところを見ていると、普通の少女にしか思えませんね。

「ええ、驚きました。
 まさか、こんな所でフラグが回収されるとは……予想外です」

 視線の先、ボス部屋の中央には。
 俺たちをジッと睨む様に見詰める巨体。
 漆黒のドラゴンが押しつぶす様な威圧を放ちながら座していた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...