最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

フウ

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第12章 深淵の決戦編

199話 静かな怒り

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 突然の乱入者。
 ハスルートを挟み、オルグイユ達と対峙する形で空に浮かぶ謎の美女が放つ強者の気配。

 一目で只者では無いと分かるその存在感に十剣達は後退り、オルグイユとアヴァリスは油断なく鋭い視線で睨みつける。
 そしてメルヴィーは乱入者を排除しようとして……動きを止めた。

「ふふふ、動かない方が賢明よ?」

 乱入者である美女はクスリと微笑みを浮かべる。
 メルヴィー達を捕らえる様に展開される複雑な積層魔法陣。

 十剣達は驚愕に目を見開く。
 自分達ならまだしも、超越者たるオルグイユ達が魔法陣に気付く事が出来なったと言う事実。
 そして、それを容易くやってのけた美女の実力に……

「この程度で私達を始末出来るとでも?」

 しかし、オルグイユ達は動じ無い。
 ルーミエルの眷属である4人に動揺は一切無く、鋭い面持ちで敵を見据える。

「勿論、思って無いわ。
 でも、一瞬の隙を作る事は出来るでしょう?」

「そう言えば、昔から貴女はこの様な小細工が得意でしたね」

「ふふふ、貴女こそその減らず口は相変わらずのようね。
 それにしても久しぶりね、十万年ぶりかしら? 」

 美女は楽し気に、ニヤリと口角を吊り上げる。

「また会えて嬉しいわ、始祖吸血鬼さん」

 その笑みを受けて、オルグイユの顔が不愉快そうに僅かに歪んだ。

「けれど、おかしいわねぇ。
 あの時、確かに始祖吸血鬼さんは仕留めたと思ったのだけれど?」

「あの時、と言うと。
 醜い魔王の側近を始末した直後に挟み撃ちを仕掛けて来たアレの事でしょうか?」

「そうよ、あの時の貴女は間抜けだったわよねぇ」

「残念ですが、あの程度で私を殺す事は不可能です。
 あの時は奇襲を許してしまいましたが……2度目はありませんよ、リーリス」

 オルグイユの忌々し気な視線を浴びて美女……リーリスは愉悦に顔を歪める。

「ふふふ、確かに始祖吸血鬼、九尾、リヴァイアサンの3人に加え超越者に至った原種吸血鬼が相手では勝ち目は無いわね。
 でも……」

 パチンッと、指を打ち鳴らす乾いた音が鳴り……

「この子達がどうなっても良いのかしら?」

 ピチャっ、と地面に滴る血が弾ける音が静まり返った空間に響き渡った。

「「「っ!?」」」

 その光景を見て十剣達が唖然と目を見開き、オルグイユ達ですら目を見開く。

「ふふふ、貴女達、今あの時と同じ様な間抜けな顔よ?」

 リーリスの背後に現れたのは、黒い光によって拘束され、空中に吊るされた2人。 
 身体中の生傷から血を流し、滴る血が地面を打つ。
 尻尾はだらんと垂れ下がり、身に纏うメイド服は裂けて赤く滲む。

 そこにあったのは、凄惨な拷問を受けた様な姿となった双子。
 意識を失い力無く吊るされたノアとシアの姿だった。

「貴女達が少しでも動くと……」

 ヒュンッ!  

 空気を裂く様な音が響き、ノアとシアの頬に血が浮かぶ。

「っ……」

 アヴァリスはその光景を前に苦虫を噛み潰したように顔を歪め、握り締めた手から赤い血が滴り落ちた。

「良い顔だわぁ!」

 オルグイユ達から膨れ上がる殺気を浴びて、リーリスは心底楽し気に笑みを浮かべる。

「じゃあ、ハスルートは連れてっ!」

 その瞬間、言い知れぬ重圧が舞い降りた。
 それはまるで、戦場で大神を前にした時の様な圧倒的な重圧。

 その重圧を放つのは、ゆっくりと無言で歩みを進める白い幼女。
 自身と同等の強さを誇るオルグイユ達すらも凌駕するその重圧。
 リーリスの笑顔が強張り、彼女の頬を一筋の汗が流れ落ちる。

「貴女は……誰、なの?」

 紡がれる声が自然と震える。
 そんなリーリスの言葉を受けて、白い幼女の歩みが止まる。

 向けられた無機質な瞳。
 赤く、宝石の様に美しいその瞳を見た瞬間、リーリスが抱いたのは絶対的な

「っ!?」

 それは只の直感だった。
 感じ取った死の恐怖からの咄嗟の判断が彼女の命を救う事になる。
 リーリスは転移魔法を展開し……

 ドチャっ

 鮮血を撒き散らす、鈍い落下音が鳴り響いた。

「外しましたか」

 鈴を転がす様な可憐な声が静寂が支配する空間に静かに紡がれる。
 その美しくも何の感情も宿さ無い声に、彼女の正体を知っている十剣達ですら恐怖を抱き、体が震えた。

 彼女の、ルーミエルの視線の先。
 そこにリーリスとハスルートの姿は無く、切断されたリーリスの片腕だけが自らの血溜まりに沈んでいた。
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