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October
紫苑祭準備編 Side 司 01話
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この日、俺は最高潮に機嫌が悪かった。
中等部から一年おきに紫苑祭が行われてきたわけだが、そのたびに団長に、と推薦されてきた。
過去二回においては学年を理由に断わってきたが、今回は同じ理由で断わることができないどころか、今まで断わり続けてきた理由をもってして推薦されている。つまりは、三年最後なのだから、と――
それでも毛頭やるつもりはなく、話し合い半ばで席を立ち図書室へ向かった。
だが、その図書室であっても安息の地とは言えない。
メンバーの顔を見ればわかる。これは間違いなく、姫と王子の出し物の告知をされるのだろう。
今までやらされた数々を思い返せば、どう考えたってくだらないことしかやらされない。
不機嫌丸出しで窓の外を見ていると、翠たちを最後にメンバーが揃った。
翠も何か感じ取ったのか、ドアの前から動かない。
そんな翠を見かねて、
「まぁまぁまぁまぁ、こんなところにいないで席に着こうよ」
海斗が翠の背後に回り、無理やり歩を進ませた。
不自然な笑顔を貼り付けた翠が席に着いたのを確認すると、
「今回の姫と王子のイベントなんだけど、権利取りリレーだから」
朝陽が軽快な物言いをした。
権利取りリレーなんて名前を聞いただけで嫌な予感しかしない。
権利とは、生徒数名に与えられるイベント権利であり、リレーとは、勝敗を決めるためのものでしかない。きっと、組同士を戦わせて勝った組にのみ抽選権などが与えられるのだろう。
「翠葉には悪いけど、姫と王子の出し物って、姫と王子が生贄になる、っていうイベントなのよ。だから、それに準ずるイベントよ」
簾条が向こうにいるからといって油断することができないことは去年の紅葉祭で学んだ。今度はいったい何を企んでいる……?
先を続けろ、という視線を朝陽に向けると、
「何をやるかというというならムカデ競争。各組男女別に三グループずつ形成して計六グループ。このグループでリレーをしてもらう。で、順位に応じてポイントを加算。また、優勝した組にはご褒美が用意されている」
「ご褒美」という言葉を聞いた瞬間、盛大なため息をつきたくなった。
正直聞きたくはない。知りたくもないが訊かないことには話が進まない。
「褒美って……?」
嫌々尋ねると、
「勝った組の人間を抽選で三人選んで、当選者には姫または王子と一緒にお弁当を食べられる権利を発行。それから、全校生徒へ発行するものとして、姫のチア姿、王子の長ラン姿のスチル写真をデジタルアルバムに収録することが決まってる」
「やですっ」
「ごめん被る」
翠と俺はほぼ同時に口にしたが、
「おふたりさん、ごめんね? これ、決定事項だから」
優太はそそくさと競技種目が印刷されたプリントを俺たちの前に差し出した。
手書きじゃない、イコール、決定事項。プラス、各所へ通達済み……。
「基本、姫と王子の出し物って全校生徒に還元されることが前提だし、写真以外に何か案があるなら聞くけど? 正直、前回の紅葉祭よりはいいと思うし、前回の紅葉祭並みに全校生徒に還元できる出し物があるなら提案してくれてかまわないよ? 全校生徒に還元する、という意味で、写真撮影とライブステージを比べれば、写真撮影のほうが企画価値は低いよね。それゆえ、抽選で選ばれた人のみにお弁当タイムを付加したんだけど」
長々と語る朝陽は笑顔を崩さない。
ほぼほぼ隙のないイベント提案に悪あがきをするならば、
「第一、翠が男とふたりで弁当を食べられるとは思えない」
ここにいるメンバーなら、少し考えればわかるはずだ。それがなぜ、こんなにも普通に提案してくる?
朝陽を睨みつけていると、緊張感に欠ける声が発せられた。
「え? なんでですかー? 楽しくお弁当食べるだけですよ?」
頭に花でも咲かせていそうな和やかな発言は飛竜のもの。
イラついたままに睨みをきかせると、
「あの人、面倒なことに男性恐怖症の気がある」
実に面倒くさそうに飛翔が解説した。
「えっ!? そうだったんですかっ!? じゃ、何? 俺とか生徒会メンバーって男って見られてないんですか? あれ? でも、そうすると司先輩はっ!?」
飛竜は翠と俺を見比べ、最後には俺に視線を定めた。その視線を無視していると、
「司も心配性だなぁ……。その点は桃ちゃんがしっかりクリアしてくれてるよ。別にふたりきりで食べろって言ってるわけじゃない。当選した人間への風当たりが強くならないように、当選した人間は友達を五人まで誘っていいことになっているし、姫と王子も五人まで友達を誘っていいことになってる。それにさ、必ずしも姫だけが指名されるとも限らない。当選した人間は、姫と王子の両者を指名することもできる」
ということは、紫苑祭後三日間は憂鬱な昼休みになるということか……。
毎度のこととはいえ、よくもまぁここまで隙のないプランを考える。
多少尊敬の念を覚えなくもないが、それ以上に最悪だという感情が先に立つ。しかし、このイベントをもって姫と王子の出し物からは解放されるわけで――
……だめだ、俺が開放されても翠があと一年紅葉祭の生贄になる。
一昨年までなら自分ひとりが解放されればそれでよかった。でも今は違う――自分が気にかける存在ができた。
自分に訪れた変化が未だに信じられないこともある。それでも、出逢えたのだ。たったひとり、大切だと思える人間に――
中等部から一年おきに紫苑祭が行われてきたわけだが、そのたびに団長に、と推薦されてきた。
過去二回においては学年を理由に断わってきたが、今回は同じ理由で断わることができないどころか、今まで断わり続けてきた理由をもってして推薦されている。つまりは、三年最後なのだから、と――
それでも毛頭やるつもりはなく、話し合い半ばで席を立ち図書室へ向かった。
だが、その図書室であっても安息の地とは言えない。
メンバーの顔を見ればわかる。これは間違いなく、姫と王子の出し物の告知をされるのだろう。
今までやらされた数々を思い返せば、どう考えたってくだらないことしかやらされない。
不機嫌丸出しで窓の外を見ていると、翠たちを最後にメンバーが揃った。
翠も何か感じ取ったのか、ドアの前から動かない。
そんな翠を見かねて、
「まぁまぁまぁまぁ、こんなところにいないで席に着こうよ」
海斗が翠の背後に回り、無理やり歩を進ませた。
不自然な笑顔を貼り付けた翠が席に着いたのを確認すると、
「今回の姫と王子のイベントなんだけど、権利取りリレーだから」
朝陽が軽快な物言いをした。
権利取りリレーなんて名前を聞いただけで嫌な予感しかしない。
権利とは、生徒数名に与えられるイベント権利であり、リレーとは、勝敗を決めるためのものでしかない。きっと、組同士を戦わせて勝った組にのみ抽選権などが与えられるのだろう。
「翠葉には悪いけど、姫と王子の出し物って、姫と王子が生贄になる、っていうイベントなのよ。だから、それに準ずるイベントよ」
簾条が向こうにいるからといって油断することができないことは去年の紅葉祭で学んだ。今度はいったい何を企んでいる……?
先を続けろ、という視線を朝陽に向けると、
「何をやるかというというならムカデ競争。各組男女別に三グループずつ形成して計六グループ。このグループでリレーをしてもらう。で、順位に応じてポイントを加算。また、優勝した組にはご褒美が用意されている」
「ご褒美」という言葉を聞いた瞬間、盛大なため息をつきたくなった。
正直聞きたくはない。知りたくもないが訊かないことには話が進まない。
「褒美って……?」
嫌々尋ねると、
「勝った組の人間を抽選で三人選んで、当選者には姫または王子と一緒にお弁当を食べられる権利を発行。それから、全校生徒へ発行するものとして、姫のチア姿、王子の長ラン姿のスチル写真をデジタルアルバムに収録することが決まってる」
「やですっ」
「ごめん被る」
翠と俺はほぼ同時に口にしたが、
「おふたりさん、ごめんね? これ、決定事項だから」
優太はそそくさと競技種目が印刷されたプリントを俺たちの前に差し出した。
手書きじゃない、イコール、決定事項。プラス、各所へ通達済み……。
「基本、姫と王子の出し物って全校生徒に還元されることが前提だし、写真以外に何か案があるなら聞くけど? 正直、前回の紅葉祭よりはいいと思うし、前回の紅葉祭並みに全校生徒に還元できる出し物があるなら提案してくれてかまわないよ? 全校生徒に還元する、という意味で、写真撮影とライブステージを比べれば、写真撮影のほうが企画価値は低いよね。それゆえ、抽選で選ばれた人のみにお弁当タイムを付加したんだけど」
長々と語る朝陽は笑顔を崩さない。
ほぼほぼ隙のないイベント提案に悪あがきをするならば、
「第一、翠が男とふたりで弁当を食べられるとは思えない」
ここにいるメンバーなら、少し考えればわかるはずだ。それがなぜ、こんなにも普通に提案してくる?
朝陽を睨みつけていると、緊張感に欠ける声が発せられた。
「え? なんでですかー? 楽しくお弁当食べるだけですよ?」
頭に花でも咲かせていそうな和やかな発言は飛竜のもの。
イラついたままに睨みをきかせると、
「あの人、面倒なことに男性恐怖症の気がある」
実に面倒くさそうに飛翔が解説した。
「えっ!? そうだったんですかっ!? じゃ、何? 俺とか生徒会メンバーって男って見られてないんですか? あれ? でも、そうすると司先輩はっ!?」
飛竜は翠と俺を見比べ、最後には俺に視線を定めた。その視線を無視していると、
「司も心配性だなぁ……。その点は桃ちゃんがしっかりクリアしてくれてるよ。別にふたりきりで食べろって言ってるわけじゃない。当選した人間への風当たりが強くならないように、当選した人間は友達を五人まで誘っていいことになっているし、姫と王子も五人まで友達を誘っていいことになってる。それにさ、必ずしも姫だけが指名されるとも限らない。当選した人間は、姫と王子の両者を指名することもできる」
ということは、紫苑祭後三日間は憂鬱な昼休みになるということか……。
毎度のこととはいえ、よくもまぁここまで隙のないプランを考える。
多少尊敬の念を覚えなくもないが、それ以上に最悪だという感情が先に立つ。しかし、このイベントをもって姫と王子の出し物からは解放されるわけで――
……だめだ、俺が開放されても翠があと一年紅葉祭の生贄になる。
一昨年までなら自分ひとりが解放されればそれでよかった。でも今は違う――自分が気にかける存在ができた。
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