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December
それぞれのクリスマス Side 桃華 02話
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車に乗り込むと、蒼樹さんはカーナビの設定を始めた。そして、ルートが表示されると、
「裏道使えば渋滞パスできるかな?」
と、首を傾げる。
「どこへ行くんですか?」
「幸倉運動公園」
「え? 運動公園?」
「地元民しか知らないのかなぁ……? あそこ、毎年凝ったイルミネーションをやるんだ」
「そうなんですか?」
「うん。楽しみにしてていいよ」
そう言って、蒼樹さんはサイドブレーキを下ろした。
車が走りだすなり、
「今日の格好はなんだか大人っぽいね?」
その言葉に心臓が止まりそうになる。
普段、あまり服装の話をしないからなおさらに……。
「……変、ですか?」
「ごめん、そういうつもりで言ったわけじゃないんだ」
蒼樹さんは困ったように頭を掻いて見せた。
「いつもモノトーンの服が多いから、ちょっと意表をつかれた気分。……ボルドーって、クリスマスにぴったりな色だよね。すごくよく似合ってる」
そう言って蒼樹さんは穏やかに笑った。
「でも、今日のドレスを見て確信したんだけど、桃華はピンクが好きだよね?」
「えっ……?」
確かに今日着たドレスはピンクだったし、好きな色もピンクだ。けど、蒼樹さんとのデートではピンクのものを身に着けたことはないと思う。なのにどうして……?
「すごい不思議そうな顔」
言って蒼樹さんは笑う。
「だって、ポーチとペンケースがピンクだし、傘もピンクの水玉。携帯のストラップもピンクのラインストーンだし、ハンカチもたいていがピンクの花柄。違った?」
そこまで言われて唖然とする。
こうやって例に挙げられると、こんなにもピンクのものを持っていたのか、と。
「こんなにピンクが好きなのに、ドレスだってよく似合っていたのに、どうして普段はピンクの洋服を着ないの?」
私は熱くなった頬を手で押さえ、
「以前、男子に言われたことがあるんです。簾条にピンクは似合わないって……。それ以来、なんとなく着られなくなってしまって……」
今日、ピンクのドレスを選んでしまったのは、蒼樹さんに見て欲しいという気持ちがあったから。それ以外の何ものでもない。
その他大勢の男子の目なんて気にもしなかった。
でも、休み明けに言われるだろうか。「ピンクなんて似合わない」と。
――否、わざわざ言いに来ようものなら返り討ちにしてやろう。
そこまで考えてはっとする。
こういうところがピンクが似合わないと言われてしまうゆえんだろうに、私ときたら……。
隣からクスリ、と笑う声が聞こえて我に返る。
「蒼樹さん……?」
「ごめん。たぶんさ、その男子は似合うって言えなくて、似合わないって言っちゃったんだよ」
「……それ、正反対の言葉ですよ?」
「うん。だからさ、照れて言えなかったんだよ。でも何か言いたくて、正反対のこと言っちゃったみたいな? 男子にありがちな好きな子いじめの類だよ」
そういえば、幼稚舎のときの海斗が飛鳥に対してそんな感じだった。でも、私にはそんな心境はわからない。わかるわけがな……――わかっちゃうかも……。
藤宮司を好きだったとき、そんなようなことをしていた自分がいた気がしなくもない。
思わず頭を抱えると、
「どうした?」
「ちょっと、以前の自分を思い出してしまって……」
「以前の桃華……?」
私はコクリと頷き、
「藤宮司を好きだったころ、同じようなことをしていなくもなかった気がして悶絶中です」
「そっか」
蒼樹さんはカラカラと笑って話を流してくれた。
今は想いを真っ直ぐに受け止めてくれる人が相手だからそんなことをする必要はないけれど、人と関わりを持とうとしない藤宮司を相手に片思いをしていたあのころは、そんなふうにしか関わる術がなかった。
もっとかわいくアプローチできていたら、何か違っただろうか――
少し考えて頭を振る。
かわいらしく真っ直ぐに、自分の想いを伝える子など山ほどいた。けど、誰もあの男の心に触れることはかなわず、玉砕する女子があとを絶たなかったのだ。
私が素直になったところで、屍が一体増えただけだろう。
あのころの自分が幼稚に思えてなお悶絶したくなる。さらには、現況もあまり変わりない気がしてうっかり唸ってしまいそうな心境だ。
今となっては恋愛感情の「れ」の字もないけれど、対抗心に満ちた対応をしてしまうのはなぜなのか。
「同属嫌悪」と言われることがあるけれど、それだけは認めがたい――
悩んでいると、「さ、到着!」という蒼樹さんの声が軽やかに響いた。
顔を上げると幸倉の、御園生邸の前だった。
「運動公園の駐車場じゃないんですか?」
「この時期、すっごく混むんだ。だから、ここから公園までは徒歩ね」
そう言って、車から降りるよう促された。
三分ほどの道のりを経て公園に入ると、ジョギングコースに植わる桜の木にもLEDライトが巻きつけられていた。
枝にもLEDライトが巻きつけられているため、光のトンネルのようになっている。
数十メートル先に見える光はまるで星のようにキラキラ瞬いて見えるのだ。
「すごい、きれい……」
もっとほかに言葉はないのか――
そうは思っても、あまりにもきれいな光景に月並みな言葉しか出てこない。
「広場へ出ると動物を象ったイルミネーションがあったり、噴水ではライトショーをしてたり、結構見所満載だよ」
蒼樹さんがそう話すだけのことはあり、夕方の公園にしては人の入りが多く、そこかしこでスマホ片手に写真撮影する姿が見られる。
今日が祝日ということもあり、家族で来ている人もいれば、制服姿で仲睦まじく歩く男女もいる。私たちは人にどんなふうに見られているだろう。ちゃんと恋人同士に見えているかな……。
そんなことを考えていると、
「首元寒そう」
「え……?」
蒼樹さんを見上げると、蒼樹さんがしていたグレーのマフラーを首に巻かれた。
「少しはあったかいでしょ?」
「でもっ、蒼樹さんが寒くなっちゃうじゃないですか!」
「少しは格好つけさせてよ」
そう言って、蒼樹さんは笑って見せる。
「じゃ、ありがたく、お借りします……」
蒼樹さんのぬくもりが残るマフラーはとてもあたたかく、ほんのりと蒼樹さんの香りがするからうっかり今日のダンスを思い出して顔が火照ってしまう。
でも、火照った頬には冷たい外気がとても気持ちよく感じた。
写真を撮ったりしながら一時間ほどかけて園内を回り、六時過ぎには御園生邸へ戻ってきた。
蒼樹さんは時計を見て、
「まだ時間あるし、うちであったかいものでも飲もうか」
「はい!」
「裏道使えば渋滞パスできるかな?」
と、首を傾げる。
「どこへ行くんですか?」
「幸倉運動公園」
「え? 運動公園?」
「地元民しか知らないのかなぁ……? あそこ、毎年凝ったイルミネーションをやるんだ」
「そうなんですか?」
「うん。楽しみにしてていいよ」
そう言って、蒼樹さんはサイドブレーキを下ろした。
車が走りだすなり、
「今日の格好はなんだか大人っぽいね?」
その言葉に心臓が止まりそうになる。
普段、あまり服装の話をしないからなおさらに……。
「……変、ですか?」
「ごめん、そういうつもりで言ったわけじゃないんだ」
蒼樹さんは困ったように頭を掻いて見せた。
「いつもモノトーンの服が多いから、ちょっと意表をつかれた気分。……ボルドーって、クリスマスにぴったりな色だよね。すごくよく似合ってる」
そう言って蒼樹さんは穏やかに笑った。
「でも、今日のドレスを見て確信したんだけど、桃華はピンクが好きだよね?」
「えっ……?」
確かに今日着たドレスはピンクだったし、好きな色もピンクだ。けど、蒼樹さんとのデートではピンクのものを身に着けたことはないと思う。なのにどうして……?
「すごい不思議そうな顔」
言って蒼樹さんは笑う。
「だって、ポーチとペンケースがピンクだし、傘もピンクの水玉。携帯のストラップもピンクのラインストーンだし、ハンカチもたいていがピンクの花柄。違った?」
そこまで言われて唖然とする。
こうやって例に挙げられると、こんなにもピンクのものを持っていたのか、と。
「こんなにピンクが好きなのに、ドレスだってよく似合っていたのに、どうして普段はピンクの洋服を着ないの?」
私は熱くなった頬を手で押さえ、
「以前、男子に言われたことがあるんです。簾条にピンクは似合わないって……。それ以来、なんとなく着られなくなってしまって……」
今日、ピンクのドレスを選んでしまったのは、蒼樹さんに見て欲しいという気持ちがあったから。それ以外の何ものでもない。
その他大勢の男子の目なんて気にもしなかった。
でも、休み明けに言われるだろうか。「ピンクなんて似合わない」と。
――否、わざわざ言いに来ようものなら返り討ちにしてやろう。
そこまで考えてはっとする。
こういうところがピンクが似合わないと言われてしまうゆえんだろうに、私ときたら……。
隣からクスリ、と笑う声が聞こえて我に返る。
「蒼樹さん……?」
「ごめん。たぶんさ、その男子は似合うって言えなくて、似合わないって言っちゃったんだよ」
「……それ、正反対の言葉ですよ?」
「うん。だからさ、照れて言えなかったんだよ。でも何か言いたくて、正反対のこと言っちゃったみたいな? 男子にありがちな好きな子いじめの類だよ」
そういえば、幼稚舎のときの海斗が飛鳥に対してそんな感じだった。でも、私にはそんな心境はわからない。わかるわけがな……――わかっちゃうかも……。
藤宮司を好きだったとき、そんなようなことをしていた自分がいた気がしなくもない。
思わず頭を抱えると、
「どうした?」
「ちょっと、以前の自分を思い出してしまって……」
「以前の桃華……?」
私はコクリと頷き、
「藤宮司を好きだったころ、同じようなことをしていなくもなかった気がして悶絶中です」
「そっか」
蒼樹さんはカラカラと笑って話を流してくれた。
今は想いを真っ直ぐに受け止めてくれる人が相手だからそんなことをする必要はないけれど、人と関わりを持とうとしない藤宮司を相手に片思いをしていたあのころは、そんなふうにしか関わる術がなかった。
もっとかわいくアプローチできていたら、何か違っただろうか――
少し考えて頭を振る。
かわいらしく真っ直ぐに、自分の想いを伝える子など山ほどいた。けど、誰もあの男の心に触れることはかなわず、玉砕する女子があとを絶たなかったのだ。
私が素直になったところで、屍が一体増えただけだろう。
あのころの自分が幼稚に思えてなお悶絶したくなる。さらには、現況もあまり変わりない気がしてうっかり唸ってしまいそうな心境だ。
今となっては恋愛感情の「れ」の字もないけれど、対抗心に満ちた対応をしてしまうのはなぜなのか。
「同属嫌悪」と言われることがあるけれど、それだけは認めがたい――
悩んでいると、「さ、到着!」という蒼樹さんの声が軽やかに響いた。
顔を上げると幸倉の、御園生邸の前だった。
「運動公園の駐車場じゃないんですか?」
「この時期、すっごく混むんだ。だから、ここから公園までは徒歩ね」
そう言って、車から降りるよう促された。
三分ほどの道のりを経て公園に入ると、ジョギングコースに植わる桜の木にもLEDライトが巻きつけられていた。
枝にもLEDライトが巻きつけられているため、光のトンネルのようになっている。
数十メートル先に見える光はまるで星のようにキラキラ瞬いて見えるのだ。
「すごい、きれい……」
もっとほかに言葉はないのか――
そうは思っても、あまりにもきれいな光景に月並みな言葉しか出てこない。
「広場へ出ると動物を象ったイルミネーションがあったり、噴水ではライトショーをしてたり、結構見所満載だよ」
蒼樹さんがそう話すだけのことはあり、夕方の公園にしては人の入りが多く、そこかしこでスマホ片手に写真撮影する姿が見られる。
今日が祝日ということもあり、家族で来ている人もいれば、制服姿で仲睦まじく歩く男女もいる。私たちは人にどんなふうに見られているだろう。ちゃんと恋人同士に見えているかな……。
そんなことを考えていると、
「首元寒そう」
「え……?」
蒼樹さんを見上げると、蒼樹さんがしていたグレーのマフラーを首に巻かれた。
「少しはあったかいでしょ?」
「でもっ、蒼樹さんが寒くなっちゃうじゃないですか!」
「少しは格好つけさせてよ」
そう言って、蒼樹さんは笑って見せる。
「じゃ、ありがたく、お借りします……」
蒼樹さんのぬくもりが残るマフラーはとてもあたたかく、ほんのりと蒼樹さんの香りがするからうっかり今日のダンスを思い出して顔が火照ってしまう。
でも、火照った頬には冷たい外気がとても気持ちよく感じた。
写真を撮ったりしながら一時間ほどかけて園内を回り、六時過ぎには御園生邸へ戻ってきた。
蒼樹さんは時計を見て、
「まだ時間あるし、うちであったかいものでも飲もうか」
「はい!」
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