世界が壊れた夜、私は祈り踊る

紫咲

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第七話

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「り…ゆ……?」
少女は噛みしめるように自分の名前となったその言葉を呟く。
ぴくりと、律紀は反応する。正気か?と言うような表情で光樹を見る。他のメンバーも驚いて光樹を見る。
そんなメンバーをニヤリと見て、光樹は口元の笑みを浮かべたまま凛雪に言う。
「そう、凛雪。君の名前だよ、凛雪。」
凛雪と名付けられた少女は輝くような瞳を光樹に向ける。
「ありがとう、ございます!」
光樹は微笑む。心からの笑みだ。


少しして…
「あ、 Wǒ午後から授業あるよ」
凱亜がふと言う。
再见Zàijiàn
と去っていく。それに続いて由弦、詩音、悠真と帰っていく。
「律紀は帰らなくて大丈夫そうなの?」
1人残った律紀に光樹は問う。
「このあと特に予定はないかな。それより光樹、話したいことがある。リビングを貸してほしい。」
真剣な眼差しで光樹を見る律紀。
それを見て愉快そうに笑みを浮かべる光樹。
はたから見たら異様なその光景に、凛雪は異様だという感情を抱いていなかった。
不思議そうに、様子を伺うように、2人を見ている。
「凛雪。治っているとはいえ君は怪我人だ。この部屋から出ないでくれ。必要なことがあればこの端末でここにメッセージを送ってくれればすぐに行く。」
興味深そうに端末を触っている凛雪を見て、2人はやはり教会の子なのかと考える。
2人が出ていった部屋で1人、凛雪はつぶやく
「クレアツィオーネ様…。これは運命の試練ですか?それともわたくしが引き寄せた奇跡なのですか?」
誰もいない部屋。しかし彼女に同調するように風が吹く。
「皆様…私はどうしたら…」

一方リビングでは光樹と律紀が神妙な面持ちで向き合っていた。
「それで、なんだい?話ってのは。」
そう言う光樹を律紀は睨む。
「わかっているくせに。なんであの子に凛雪という名前をつけた?そのっ…名前は…」
辛そうに言葉を詰まらせる律紀。そんな律紀を目の前に光樹は言う。
「凛とした声。雪のように白い髪…」
「そうじゃなくて!」
光樹の声を律紀が声を荒げて遮る。
「僕が聞きたいのは、なんであの子の名前をつけたのかってこと」
あの子とは誰なのか。それは詳細を語らなくとも伝わる存在。もうここにはいない存在。
「凛雪は…お前の妹は…お前にとっても僕にとっても唯一だったじゃん!まさか…重ねているの?」
律紀の顔は歪んでいた。悲痛に後悔に苛まれて。
光樹の顔もまた、歪んでいた。
「彼女がなんであれ、今度こそ守る。だからこそ、妹と同じ名前をつけた。だか…お前の言う通り、重ねていたのかもしれない。」
光樹の言葉わ聞いて、律紀は黙り込む。そんな律紀を見て、光樹は言葉をかさねる。
「一度保護したからには今度こそ、最後まで守り抜く。お前も協力してくれないか。」
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再见→ばいばい
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