世界が壊れた夜、私は祈り踊る

紫咲

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第六話

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少女は考え込むようにして黙る。
やがて、ゆっくりとその口を開けた。
「わたくし、は…」
(どうしましょうか)
少女は焦っていた。必死にこの状況の打開策を思考している。
「クレアツィオーネ様……」
ふと、少女の口からでた名前。
(あ、もしかしてやらかしてしまったのでは…)
少女がそう思ったときにはもう、遅かった。
「どうして、その名前で呼んでいるの?」
律紀は訊く。優しく、けれど鋭さが垣間見える。
「大抵…人…恐れ多い…から……名前…呼ばない…」
詩音が口を開く。無口な彼が口を開くほど、この疑問は全員にとって重要なことだった。
(どうしましょう…!)
少女の焦りは大きくなっていく。
「わたくしは……クレアツィオーネ様が、大切で…とても…大好きで…」
少女の口は止まらない。自制できない。
それほどに感情がとめどなく溢れていた。
「私の支えだったのに……なんで、どうして、」
涙もとめどなく流れゆく。
やがて少女は泣きつかれて眠ってしまった。光樹は小声で話し出す。
「なぁ、みんなはどう思う?」
悠真、凱亜、詩音、由弦が話を聞こうと光樹に近づく。
律紀はただ一人、少女のそばから動かなかった。じっと少女を見つめている。慈しむように。悲しむように。
小律Xiǎo lǜ?」
凱亜の声にハッとしたように律紀は振り向く。
「だいじょぶ?どしたよ?」
心配そうな凱亜達に、安心させるように律紀は笑みを浮かべる。
「ごめん、大丈夫。」
律紀も光樹の方へと向かう。
そして、話し合いは始まった。
「改めて言うね、みんなはどう思う?」
光樹の問いに由弦が答える。
「虐待痕は見当たらなかった。それらしい荷物も見当たらなかったし家出の可能性は低いと思う。」
その言葉に思い出したように詩音が呟く。
「傷跡……消えてた…?」
「オレが手当した跡は残っていたのにな。」
光樹は不思議そうに呟く。
「ねぇ」
律紀が顔を上げ、声を出す。
「あの子、聖職者だったりしない?」
シーンとなる。誰もが納得したからだ。
「I see.そうなると創造神様の名前を知ってるのも納得できるし、傷が治ったのも"祝福"のおかげだということで納得できるね。」
悠真が言う。
「なんで……記憶…ない?」
詩音が心底わからないといったように首をかしげる。
「神殿内で揉め事があったのか…一応警察で探っておく」
由弦が言ったのと同時に少女は目を覚ます。
見慣れない部屋に疑問を持ったのか首をかしげるが、光樹たちを見て思い出したように慌てる。
「皆様、先程は取り乱してしまい申し訳ございませんでした。」
そんな少女に光樹は近づいていく。
「君に名前をつけるよ。君の名前は凛雪りゆだ。」
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小律→律君
I see→なるほど

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