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世界の終焉~序曲~
暗闇から生まれた天使
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神様はどうして私をお創りになられたのだろう。口ずさんだ歌声はこの暗闇に浮かんでは、星になり、光を放ち死んでいく。
神様、泣かないで。貴方様の創られた世界は誠に美しい世界。神様、やめてお願い。
この世界を消さないで。
大雨が降り注がれたその大地は、水に覆われた。その大水は獣や人をも呑み込み、大地共々全て消え失せた。人のうめき声が波にのまれて、辺りは静かになった。
一つの船が、ただ浮かんでいた。人が乗っていて、獣も乗っていた。神様に選ばれた者たちだ。太陽が雲の狭間から顔を出しその光が辺り一面を覆った時、舟から青い鳥が飛び放った。
私はその青い鳥がもう一度見たくて、待っていた。眠りこけていたので、何日かして青い鳥が帰ってきたことも、そのくちばしに木の実が挟まれていたことにも気づかなかった。
「なんてつまらない世界なの」
乾いた大地が目の前に広がるのを見て、私は口に出した。白い翼を手で梳いて、音もなく落ちた羽に自らの血を垂らして平らな石に言葉を書いた。私の物語、私の夢見た世界をもう一度。
///////
「甦れ、甦れ、素晴らしい大地よ。人よ、憎みなさい。怒りなさい、泣きなさい。争いを起こし、愛するものだけを守りなさい」
俺はその歌を口ずさんでいた。魔法使いのおばあさんに、その歌は外では歌うなと言われたので庭に駆け出して大声で歌った。
「不気味な歌」
外からヤジが聞こえる。小さい奴の声だ。
「しっ、やめなさい。審問官に問い詰められるでしょう」
母親の声がして、その場は全く静かになった。
俺は歌った。
「吹き荒れろ、吹き荒れろ、強き風よ」
途端に草原に大風が吹き、草木がうなり声をあげた。カラカラと木の葉が地面を転がる。
「こらっカイン!」
怒鳴り声が聞こえて、俺はすぐさま屋根裏部屋に飛び込んだ。
「ひゃっはー、危なかったぜ。尻蹴りくらうところだった」
「ほんとよねー、そうなってたら面白かったのに」
「何言ってんだよ、痛いだろう」
そこまで言って謎の声に気付き後ろを振り返ると、真っ黒の服を着た女が立っていた。髪は透き通って白く、目はオパールのように輝いている。
「天使!?」
女は俺と同じくらい、いやもっと若く見えた。
「お、俺。カイン・アダム。20歳、お前は?」
「えー、歳?何歳だろう、知らなーい」
「知らないって、いつ生まれたんだよ」
「えー、わかんなーい。気付いたらここに眠っていて、下手な歌声が聞こえるから起きたら君が入ってきたんだよ」
下手な歌声ってなんだよ。俺は言ってやりたくなって、口を開けようとした。
「でもね、すごく心地の良い歌声だったんだ」
「は」
何言ってんだろうか、こいつは。俺の歌を聴けばみんな口をそろえて不気味というのに。
「ねえねえ、その歌、どこで知ったの? 私も歌えるかしら」
「これはな、我が家で伝わる先祖代々の歌なんだ。なんだって、最初にこの歌を歌った先祖様は『空から石が降ってきた』って言ったらしいんだぜ」
人に説明をさせときながら、少女は気持ちよさそうに目を閉じて鼻歌を歌っていた。
「はぁ、まぁいい。待ってろ、タペストリーを持ってくるから」
俺は鼻歌を歌う女の所に、壁にかかったタペストリーを取って持ってきた。そこには歌が刻まれている。女はそれを見ると、笑って息を吸い込んだ。
「ある日愛する世界は終わり、世界は何もない大地になった。泣かないで、泣かないで神様。あの世界はそんなに悪いところじゃないの」
一瞬、時間が止まった。
その歌声に聴きふうけっていたのに気付き、俺はわざと馬鹿にするように笑った。
「へーんな歌、歌ってやんのー」
「.......そう?でもその歌の詩編よ」
「詩編? 」
不思議なことしか言わない女だった。女は名前を持たないので、エバと名付けた。
この女が世界の救世主だとは夢にも思わなかった。
神様、泣かないで。貴方様の創られた世界は誠に美しい世界。神様、やめてお願い。
この世界を消さないで。
大雨が降り注がれたその大地は、水に覆われた。その大水は獣や人をも呑み込み、大地共々全て消え失せた。人のうめき声が波にのまれて、辺りは静かになった。
一つの船が、ただ浮かんでいた。人が乗っていて、獣も乗っていた。神様に選ばれた者たちだ。太陽が雲の狭間から顔を出しその光が辺り一面を覆った時、舟から青い鳥が飛び放った。
私はその青い鳥がもう一度見たくて、待っていた。眠りこけていたので、何日かして青い鳥が帰ってきたことも、そのくちばしに木の実が挟まれていたことにも気づかなかった。
「なんてつまらない世界なの」
乾いた大地が目の前に広がるのを見て、私は口に出した。白い翼を手で梳いて、音もなく落ちた羽に自らの血を垂らして平らな石に言葉を書いた。私の物語、私の夢見た世界をもう一度。
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「甦れ、甦れ、素晴らしい大地よ。人よ、憎みなさい。怒りなさい、泣きなさい。争いを起こし、愛するものだけを守りなさい」
俺はその歌を口ずさんでいた。魔法使いのおばあさんに、その歌は外では歌うなと言われたので庭に駆け出して大声で歌った。
「不気味な歌」
外からヤジが聞こえる。小さい奴の声だ。
「しっ、やめなさい。審問官に問い詰められるでしょう」
母親の声がして、その場は全く静かになった。
俺は歌った。
「吹き荒れろ、吹き荒れろ、強き風よ」
途端に草原に大風が吹き、草木がうなり声をあげた。カラカラと木の葉が地面を転がる。
「こらっカイン!」
怒鳴り声が聞こえて、俺はすぐさま屋根裏部屋に飛び込んだ。
「ひゃっはー、危なかったぜ。尻蹴りくらうところだった」
「ほんとよねー、そうなってたら面白かったのに」
「何言ってんだよ、痛いだろう」
そこまで言って謎の声に気付き後ろを振り返ると、真っ黒の服を着た女が立っていた。髪は透き通って白く、目はオパールのように輝いている。
「天使!?」
女は俺と同じくらい、いやもっと若く見えた。
「お、俺。カイン・アダム。20歳、お前は?」
「えー、歳?何歳だろう、知らなーい」
「知らないって、いつ生まれたんだよ」
「えー、わかんなーい。気付いたらここに眠っていて、下手な歌声が聞こえるから起きたら君が入ってきたんだよ」
下手な歌声ってなんだよ。俺は言ってやりたくなって、口を開けようとした。
「でもね、すごく心地の良い歌声だったんだ」
「は」
何言ってんだろうか、こいつは。俺の歌を聴けばみんな口をそろえて不気味というのに。
「ねえねえ、その歌、どこで知ったの? 私も歌えるかしら」
「これはな、我が家で伝わる先祖代々の歌なんだ。なんだって、最初にこの歌を歌った先祖様は『空から石が降ってきた』って言ったらしいんだぜ」
人に説明をさせときながら、少女は気持ちよさそうに目を閉じて鼻歌を歌っていた。
「はぁ、まぁいい。待ってろ、タペストリーを持ってくるから」
俺は鼻歌を歌う女の所に、壁にかかったタペストリーを取って持ってきた。そこには歌が刻まれている。女はそれを見ると、笑って息を吸い込んだ。
「ある日愛する世界は終わり、世界は何もない大地になった。泣かないで、泣かないで神様。あの世界はそんなに悪いところじゃないの」
一瞬、時間が止まった。
その歌声に聴きふうけっていたのに気付き、俺はわざと馬鹿にするように笑った。
「へーんな歌、歌ってやんのー」
「.......そう?でもその歌の詩編よ」
「詩編? 」
不思議なことしか言わない女だった。女は名前を持たないので、エバと名付けた。
この女が世界の救世主だとは夢にも思わなかった。
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