発達障害者の私が就労施設に通ってみて思ったこと。

星名雪子

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5、B型施設に通ってみて思ったこと。

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作業所に通ったのは5月のGW明けから9月末までの約4ヶ月間だった。

結論から言うと、とても楽しくて充実した4ヶ月間だった。ようやく仕事が決まり、作業所を卒業すると決まった時は寂しくなってしまったぐらいに。

工賃関係などの先に挙げたデメリットはもちろん常に悩みの種ではあったが、作業内容、環境、人間関係は良好で通うのが全く苦にならなかった。

作業所はあくまでも働く為の訓練を行う所なので、これまで働いてきた会社と比べるものではないかもしれないが、個人的には一番良い就業場所だったように思う。私は今までほぼ全ての仕事を体調不良を理由に辞めているのでいつも後味が悪く、会社はもちろん同じ部署の人達には迷惑をかけっぱなしだった。「立つ鳥、後を濁さず」どころか「立つ鳥、後を濁しまくり」である。

だから、作業所では最後まで通い切り、職員と利用者みんなにきちんとお別れとお礼を言って気持ちよく辞めたいと強く思った。「辞める」というよりも「卒業」という感覚だ。なので、最後の一週間はとにかく体調を崩さず最後まで通い切ることを目標に過ごした。

そして目標通り、最後まで通い切ることが出来た。最終日の終業後、職員や利用者が次々に祝福の言葉を掛けてくれた。

「おめでとう!」
「元気でね!」
「最初は大変だろうけど頑張って!」
「(拍手)」

中には、体調が優れないのに「今日を逃したら会えなくなると思って頑張って来たんだよ!」と、言ってくれる人までいて思わず涙が出そうになってしまった。

しかし、私が何より嬉しかったのは

「大変だったらいつでも戻っておいでよ!」

という言葉だった。この作業所は仕事をする為の訓練をする場所なので利用者にとっては社会に出て一般企業で働くまでの「通過点」に過ぎない。だから本来は「戻ってきてはいけない場所」なのである。しかし、そうやって声を掛けてくれるということは皆が私のことを「仲間」として受け入れて認めてくれているということだ。

こんな私にも「居場所」があること。「いつでも戻っておいで」と言ってくれる「仲間」がいること。

約4ヶ月間通った私がこの作業所で得たもの。それはもちろん工賃や経験など目に見えたり、成果を感じるものでもあるが、何よりもそういう「目には見えないもの」が一番大きかったように思う。

作業所とは直接関係ないが、最終日の朝にこんな出来事があった。

駅に着きホームのベンチに座って電車を待っていると、電車から降りてきた中年リーマンが、バッグに付いてるヘルプマークと私の顔をじろじろと見てきた。その顔は明らかに私のことを小馬鹿にしたり、見下すような「悪意」があり、凄く嫌な気分になった。ヘルプマークは自分を守ってくれるだけではない。時にはそういう「目」で見られる事もあるのだ。以前、エッセイにも書いたが、酷い時には暴言を浴びせられたり、危害を加えらることもあるらしい。ヘルプマークを付ける際は注意を払う必要があることを改めて実感した。

私が通った作業所は元々コンビニだったらしく、表がガラス張りで中の様子が見える。だから、中で作業をしていると歩行者から視線を感じることがあるが、それは大半がそういう「視線」である。仕方がないことなのは分かってはいるが、「障害者」ということを言わなければ、また、ヘルプマークを出していなければ、障害者かどうかは分からないのに障害を可視化するだけで色んな意味で「見る目」が変わってしまうのは複雑なところだと私は思う。

しかし、そんな私もかつては「定型」「あちら側」の人間だったのだ。だから、今頃になって自分に発達障害があると分かり、作業所に通い始めた時は「障害を持った人達と上手くやっていけるだろうか」と不安になった。

しかし、通い慣れて職員や利用者達と信頼関係を築き上げていく内にその「不安」はいつしか「安心」に変わっていった。体調が悪い時は無理せずに休み、出来ない作業は職員に正直に相談する、助けて欲しい時は声を挙げることで職員と他の利用者が手を差し述べてくれる。障害の度合いは違っても「相手の痛みや辛さが分かる」それが「助け合い精神」に繋がっているのだ。

日本全国にはありとあらゆる障害者福祉施設が存在する。中には利用者を虐待したり、いじめがあったりと目を疑うような場所もあると聞く。悲惨な無差別殺人事件があったことも記憶に新しい。そう考えると、私が通ったこの作業所はとても良い所だったのだということが改めて分かり、私は本当に全てに恵まれたのだと心から思う。

それと同時に、障害者になって初めて「障害者側」の気持ち(辛いこと、嬉しいことも全部)が理解できるようになったと思う。

今までは「一般人」だった自分が「障害者」として生きていくことは決して容易ではないだろう。社会に出た時にそういう「目」で見られ、理不尽な差別を受けるかもしれない。しかし、

自分は決して一人ではない。
理解して受け入れてくれた仲間がいる。

そのことを思い出し、また作業所でお世話になった職員や利用者のみんなに感謝しながら、私はこれから新たな道を突き進んでいこうと思うのである。
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