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【詩】晩夏の海にて
しおりを挟む青い海、潮の香り、打ち寄せる波の音
海辺に来て最初に感じるのは大体その三つだろう
しかし、それだけではない景色がそこにある
海面を跳ねる大小の魚
波打ち際を歩く名も知らぬ小さな鳥
獲った魚をくわえ
トンビは大空を舞い
水鳥は波間を漂う
姿を変えながら流れて行く雲
背にした山々から聞こえる蝉や鳥の声
海に投げたまつぼっくりは時間をかけて
ゆっくりと沖へ流されていく
入江と漁港では漁船が
沖では貨物船や客船が行き交い
飛行機は空高く飛び
電車は海辺の街を走る
遠浅の海で人々は潮干狩りを楽しみ
波打ち際で物思いに耽ったり
夏休みの大学生は本を開いている
夕方になると散歩中の犬達が波打ち際ではしゃぎ
虫取り網を持った幼児が波打ち際で
「波が怖い」と泣いて父親を困らせている
空はゆっくりとオレンジ色に染まり
カップルが波打ち際で肩を寄せ合う
流されていった雲が集まり
やがて積乱雲となり
中央で雷がチカチカと光る
漁港に灯りがともり
釣り人達が
暗い波間に糸を垂らす
背にした山々からは
蝉からバトンを受けた
秋の虫達の合唱が聞こえ
赤い月がぽっかりと浮かび
夜の帷が降り
海辺はやがて闇に包まれる
季節によって
日によって
時間によって
海は姿を変える
それは晩夏の海辺の
胸を打つようなとても美しい光景だった
イヤホンから流れる
フジファブリックの若者のすべて
目の前の景色にあまりにも似合い過ぎて
私は思わず涙した
絶え間なく打ち寄せる波を見つめて
私はふと思った
私の中にある心臓と同じだと
それは私が
この世に生を受けた瞬間から
今日まで一度も休む事なく動き続けている
海も同じように誕生した瞬間から
波は満ち引きを繰り返している
生命は海から生まれたと言われている
単細胞として誕生し
時間をかけて
ゆっくりと進化し
やがて現在の姿になったという
人間の心臓と波の満ち引き
似ているという私の考えは
あながち間違いではないのかもしれない
私は心の不調を感じると必ず海に行く
それはある意味現実逃避でもある
だが、海は私に教えてくれる
「我々海は君と同じ
生命あるものなのだ」と
その度に実感する
「私は確かに生きているのだ」と
そして思う
「これからもこの生命を
絶やさずに生きていくのだ」と
雨の日も風の日も
嵐の日も雪の日も
どんなに厳しい日があろうとも
絶え間なく打ち寄せる波のように
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