短編集 free ride(人の褌で相撲を取る)

よん

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9年目のクリぼっち

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 朝が苦手

 低血圧の私は 今でも彼に起こしてもらう

 おはよう、でも、起きろ、でもなく、

 ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ

 何の味気もない 初期設定のアラーム音

 それは9年前に役目を終えた 解約済みの彼の形見

 時代遅れの 折りたたみ式の黒いガラケー

 でもまだ元気に動いてる

 だから私の中で 彼は今も生き続けている

 私も彼とお揃い 折りたたみ式の赤いガラケー

 会うたびに 友達が私に言うの

 そろそろスマホにしなよって

 会うたびに 両親が私に言うの

 そろそろ再婚しなさいって

 いつまで死んだ人間を引きずって生きるのか

 9年目の寡婦わたしには その答えが見つけられない

 だってね

 私は今 十分に幸せなんだよ?

 答えなんてとっくに出てる 

 周囲が求めてるのは 私にとって偽りの答え

 彼が愛しDLした 9年前のヒット曲

 今も黒いガラケーここに詰まってる

 窓の外は ホワイトクリスマス 

 彼のニオイが染みついた ダブダブコートを羽織って公園で聴こう



 花の名 茜空 シャナナ☆ マリンスノウ おしりかじり虫 きみにしか聞こえない



 2007年から ずっと叫び続けてきた

 好き!

 好きなの!

 あなたの全てがずっと好き……絶対に忘れたりしないから!




 私のこの声は 交信器ガラケーを通じて

 きみにしか聞こえない




 
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