きざみちゃん

よん

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突撃! あなたが晩ごはん

籠る男 3

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 お静かに……そう言ってはみたけれど、お口を塞がれ悲鳴を上げることすらままならないのだ。
 ギョロリとお目々をひん剥き、その標的ターゲットは苦悶の表情を浮かべているもの。
 いけないいけない。
 イケメンかどうかも見定める前に、ついつい奥義――"乙女の喉フィスト"を出してしまったわ。
 きざみのあわてんぼうさん。
 仕方ないわね。
 だって、相手は本当にどうしようもないクズなのだから。
 この際、顔なんて関係ない。
 男は可愛い純白のブラとパンツの匂いを無我夢中で嗅いでいたケダモノなのだし。
 しかも、何故か上半身裸、下もパンツ一丁で股間を膨らませての
 大方、妹の部屋から盗んだものでしょうね。
 それだけで万死に値するわよ。
 お茶碗一杯程度の命なんて軽すぎる。
 人の下着を盗むなんて、許しがたい鬼畜の所業……

 おっと、たった今、きざみの右側頭部に特大ブーメランが突き刺さったわ。
 でもね、あたしが抱く感情はお母様に対する純粋な憧れだからよいのです。
 あたしもお母様の勝負下着を盗んだ直後にした過去が無きにしも非ずだけれども、いいったらいいの!

 この男は違う。
 健全に生きる妹のためにも滅せねばなるまい。

 生憎、今のあたしにできることはその寿命の一部を奪うことだけ。
 けれど、それを繰り返すことによって、人の皮を被った人非人にんぴにんを亡き者に近づけることは可能だわ。

「一体何事かとお思いでしょうね。ご心配には及びませんわ。ずっと食事を取っていないのでで済ませてすぐおいとましますから」

 すぐと言った手前、これ以上は愚図愚図ぐずぐずしちゃいられない。
 こんなところに長居なんてしたくもないし。
 あたしは標的ターゲットの喉奥まで突っ込んだ右腕をと引っこ抜く。

 すると、あら不思議。

 手の平を広げると、そこには一握りの米粒が!

 これぞ、あたしにかけられた呪いを解く米齢時まいれいじ
 喉が自由になってなお、男はいまだ喋ること叶わず。
 自分の体の中からお米が出てきて内心さぞ驚いてるでしょうけど、見た目は完全なノーリアクション。
 そりゃそうね。
 だってたった1年分とはいえ、彼は魂魄の断片を抜かれてしまったのだから。
 当分は意識朦朧のまま、あたしの所作をまんじりと静観するしかできないの。
 猫目は黒猫、砂翁は人としての体をなさずあたかも砂状のアメーバだし、残るもう一人のシモベ――あたしが小脇に抱える空腹丸も炊飯器のまま。
 だからこそ、男はこのあたしだけを注視せざるを得ないのよ。

 ふんふふんふふー♪ 

 これより、きざみの簡単クッキングタイム、スタート!
 とくとご覧あれ。
 まず、ブラポシェットから取り出しましたるはミニサイズのペットボトル。
 中身はタダのお水でござい。
 次に像印の炊飯器の蓋を開けます。
 ポチッとな。
 そこにたったいま標的ターゲットから失敬した米齢時まいれいじとペットボトルのお水を適量注ぎます。
 さすがにお米をぐためのお水までは用意できませんでしたので、米齢時まいれいじは無洗米と見做しての炊飯となりますことご了承ください。
 この際、コンセントを無断拝借しなければなりませんが、そこはそれ。
 電気窃盗など小さいことは気にしちゃいけません。
 だってあたし、それ以前に寿命泥棒だし。……ゲジゲジゲジ!(注:笑い声)
 ここまで至って普通の炊飯器でございました空腹丸、炊飯準備が全て整ったところで異変が起きます。
 何と、早炊きボタンのその横にウルトラスーパー超早炊きボタンがホルモンバランスの乱れによって生じた湿疹の如くボワ~ンと浮き出てまいりました。
 後はこれを押すだけ。
 再びポチッとな。

 と、同時にピピー!

 炊けましたーん。……うーん、ごはんのいい匂い。

 さてさて。

 あたしはブラポシェットから杓文字しゃもじとマイ箸、それにショーツとお揃いのウサちゃん茶碗を取り出し、炊けたばかりのごはんをペタペタよそい、腑抜けた顔の男をこれでもかと直視する。

「よくって? このお茶碗1杯のごはんはあなたの寿命1年分なの。つまり、あなたは予定より1年早く死んじゃうのよ。よろしいわよね? だってあなた、どうしようもないゴミ以下のクズだもの。じゃ、遠慮なく頂くわ」

 意識朦朧ながらも、男はブルブル震えている。
 コレよ、コレが欲しかったの。ゾクゾクするわ!

「メシウマ! メシウマ! クズの泣きべそおかずいらず! あなたのクソみたいに無価値なその命、あたしのIカップの肥やしにしてあげます。涙して感謝なさることね。だって近い将来、クソがお胸へと大出世を果たすのですよ。何ならその暁には10揉みくらい許可してあげてもよくってよ。冗談だけど」

 おなかが空いていたから余計に美味だわ、米齢時まいれいじ
 あっという間に平らげてしまった。
 けれど、さすがに5歳児の胃袋ね。もう限界。

 用も済んだし帰りますか。

 ペットボトルとお箸とお茶碗と杓文字をブラポシェットにしまい、あたしは脚立ではなく、今度こそきちんと階段になるよう砂翁に命じ、それからくるりと踵を返して男の前に立った。
 ……あらあら、すっかり萎えてしまったわね。
 その方が可愛くってよ。

 あたしをを黒のエナメル・パンプスで踏みつけながら言う。

「ご存知? この国の自殺者は3万人と公表されているけれど、実際は10万人を軽く超えているのよ。遺書がなければ自殺とカウントされないためこれだけの開きがあるのだけれど……




あなたは自殺と変死、?」

 

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