スノードロップ

春夏冬 秋

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素直になりたいのに…

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電車が行く音がする。
なんで私は…

朝のホームルームで先生が話している。
聞き流しながら外を見ていると隣の男の子が

「家の事情で転校することなった。あと少ししたらさようならだ。やっと離れられるな」

と憎まれ口をたたく。
私はびっくりした。幼馴染で毎回テストで競ってきて、今回のテストは勝てると思っていた。
そんな日々が続くと思っていた。ずっとずっと。

「そうなんだ。今回のテストは私の不戦勝ね」

と、心にもないことを言ってしまう。

「いや、テストまではギリギリいるから。今回は賭けをしないか?勝ったほうが相手のお願いを1つ聞く。どうだ?」

私は今になって何を始めるのかと思ったが最後の思い出に何か奢ってもらおうと考えた。

「良いわよ。その代わり後になってやめるとか言わないでよね」
「当たり前~♪」

それからいつもと変わりなく過ごしていた。
テスト明けの1日目。彼は家族と一歩遅れて行くと言っていた。多分テストのためだろう。
そろそろ電車が出発する時間…
私は何故か彼に会うだけなのに足が進まなかった。ゆっくり行くと彼が辺りを見渡していた。

「あ、やっと来たな。テストの結果どうだだった?」
「なんでそんなこと、こんな時に限って。」
「こんな時だからだよ。」

彼は珍しく真剣な顔つきになって、私はびっくりした。
そして、私の手を持つと何かを握らせた。

「これ、新しい住所。」
「なんで…」
「会いにこいよ。会いに行くから。これが俺の願い。」
「まだ君が勝っただなんて決まったわけじゃあないよ?」
「俺の勝ちだよ。絶対にな!」

彼はいつもの彼のように元気よく笑った。

「わかった。会いに行くから。だから…その、」
「あ、ごめん。そろそろ電車乗らねぇと」
「そっか、良いの。メールとかでも大丈夫だからさ」
「じゃあ、元気でな!」

彼は急いで電車に乗る。
なんで私はこんな時素直になれないんだろ。
自分で自分を叱咤する。
彼の温もりが消えそうな手を開く。そこには番号の羅列と…

”好きだ”

私は何で自分から言えなかったんだろうと思った。

家に帰る途中で見送りが私以外誰1人いなかったことに気がついた。人気者の彼が転校するのに誰1人として。

あれから数日後
彼と久しぶりの再会。 
テストの点数はやっぱり負けていた。彼は彼なりに勉強したんだろう。だって、すべて最高得点だから。
あともう少しで着く。
落ち着いて、ちゃんと言おう。彼は言葉にしてくれた。なら私はその言葉を口にして返したい。
ガチャリ
扉が開く音がする。

数年経った今お茶を入れながら何で私だけだったの?と聞いたら彼はあの頃のように笑って、お前が来てくれれば良かったからさと言う。
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