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第二部 外からの誘い
その3 奈津子
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「まあ古い家なんでね、激動の歴史を潜ってきていますし。それなりに『何か』はあると思いますよ」
そろそろ雪囲いを、と電話があり、その翌日に業者を伴って、風山氏がやって来た。
管理会社はこういう部分まで顔を出さなくてはならないのかと、由紀子は思った。なるほど、家主から管理を全て任されているのだから、雪囲いの配慮もしてくれるものなのかもしれないが、それにしても風山氏はこの家を気に掛け過ぎているような気がした。由紀子の中の常識では、こういう場合、庭師の業者だけを寄越し、管理会社の担当は顔は見せないのが普通だと思っている。
次に仕事があるのだろう。今日は風山氏はスーツを纏っていた。
紺の落ち着いたスーツ姿の風山氏は、それなりに貫禄がある。五十にはまだ手が届かないが、四十も半ばという年あいだろう。決して暇ではないはずだった。
庭では年老いた庭師が二人がかりで、せっせとあちこちの庭木の雪囲いをしている。普段ひっそりとした敷地に人がいると、それだけで藪家荘は活気ついたように思えた。
台所で庭師に出す茶と茶菓子を用意し、ついでに風山にもくつろいでもらった。
奥の座敷の縁のほうで、どうぞあがって休んでくださいと菓子の乗った盆を置いて呼びかけてから、由紀子は台所に戻った。風山氏が窮屈そうにスーツ姿でテーブル席につき、お茶を飲んでいる。途中になっている話の続きを、由紀子は聞きたかった。
「美味しいお茶ですね」
と、風山氏がほんわかと言い、それにつられて話題を忘れそうになったが、はっと気持ちを引き締めた。
由紀子の表情を見て、風山氏が一瞬、苦笑いをしたように思われた。ああ、話題を逸らそうとしていたんだ、と、由紀子は直感した。
「明治に建ったお屋敷ですから、そりゃあ、亡くなった人もいるでしょうし、お金持のおうちだから、色々あったんでしょうね」
お茶のおかわりを湯呑に注いで渡しながら、由紀子は話を促した。
「風山さん、この家のこと詳しいでしょう。ここだけの話、藪家荘で療養することになった時点で、この家は良くないって言われたんです」
由紀子にしては思い切った言い方だった。
言ってしまってから、どぎまぎとして風山を見た。風山はごく普通の顔で、旨そうに茶をすすり、ついでに茶菓子の最中を取った。
「良くないって。幽霊でも出るとか言われたんですか」
風山の口調には茶化すような響きがあった。由紀子はそれが悲しく思われた。
「いいえ、詳しくは何も。ただ、良くない噂があるよって、それだけ」
風山は最中を飲み下してから、茶を一気に啜った。由紀子の顔色を伺うような様子だった。何かあるんですよね、教えてください、と、由紀子は小さく呟くように言った。それでも黙っている風山に、由紀子は思い切って言った。
「実は、へんなこともあって。ゆりかごの軋む音が三階から聞こえてきているみたいだし、ありもしないところからボールが転がって来るとか、子供の声が聞こえて来るとか。だから、余計に思うんです。このおうち」
なにか、あったんじゃないかって。
由紀子はじっと風山を見た。
ここで、風山が神経のせいですとか、通院予定は今度いつですとか言い出したら、もう二度と風山には頼らない心づもりだった。
風山も、どう応えるべきか逡巡しているようだったが、やがて庭師が一通りの作業を終えたらしく、風山さん風山さんと大声で呼ぶ声が聞こえてきて、のそりと立ち上がった。渋い顔をしていた。
「家主からは、必要以上に何でも言うなと念を押されているんですが」
ついに、風山は言葉を吐いた。
由紀子はぐっと息をつめた。やはり、なにかがあるらしかった。
「詳しいことを知りたかったら、社までお越しください。資料をお見せしましょう」
ここでわたしが語ったところで、おかしなふうに伝わりかねない。そうなったら、余計に家主さんの思いを裏切ることになりますから。
風山はそう言うと、すっと台所を出た。庭師と話をしに行くのだろう。
**
風山と庭師が藪家荘を去り、湯呑や菓子皿を片づけながら、由紀子は考えた。
確かにこの家にはなにかいわくがあるのだろうが、風山がここですぐに語らなかったのはどうしてだろう。
(資料って、なんだろう)
もしかしたら、家主の藪家氏から口止めをされているのかもしれない。由紀子からそういう疑問が出ていることを、いったん家主に報告してから打ち明け話をしてくれるつもりなのだろうか。
或いは、口先でぺらぺらと語ってしまったら、軽く受け止められてしまい、怪談として面白おかしく由紀子の口から外部に漏れることを恐れたのかもしれない。
由紀子には、後者として受け取れた。
(資料があるほどの出来事がここであったのなら、どこかに記録が残っているかもしれない)
町には古い図書館があるはずだ。
山を降り、町中に出てしばらく車を走らすと、ツタの張ったコンクリの建物が見えてくる。町立図書館と、重々しい書でかきつけられた看板がかかっており、陰気な照明が窓から漏れている。
何度か買い出しに出かけた時、由紀子は図書館の前を車で通っていた。
町の歴史なら、図書館で調べることができるだろう。
藪家荘は大きな屋敷だし、とても古い建造物だ。かつてここに住んでいた人々は、町の歴史にも幾分かは貢献したはずだから、何らかの記録が残っているかもしれない。
食器を洗ってしまってから、テーブルでお茶を飲んだ。
きい、き。
ゆりかごが軋むような音が、静かに響いてくる。由紀子は目を閉じた。きい、き。この音を聞いていると、下腹がうずくような気がした。かつて、由紀子の胎内のゆりかごに宿った小さな命は、もうとっくの昔に体から流れ落ち、此の世から消え去っている。だけど、その切ない軋み音を聞いていると、あの時の、異物が体にいる感触が蘇るように思うのだった。
いつのまにか由紀子は、うとうとしていた。
飲みかけの湯呑を置いて、テーブルにつっぷしていた。はっと気づいた時、携帯が着信音をけたたましく立てていた。由紀子は起き上がると、携帯を取った。妹の奈津子からだった。
「姉ちゃん、そっちどうおー。お化け屋敷に住んだって聞いてるんだけど」
ぱっと大輪の夏の花が咲くような元気の良い声が耳に飛び込んだ。
奈津子は由紀子より二つ年下だが、由紀子より先に結婚している。来年小学校にあがる女の子が一人いて、由紀子が実家でうだうだと暮らしている間、よく娘を連れて遊びに来ていた。
「お化け屋敷ってなによ。普通の家よ」
と、由紀子は言い返した。
そうだ普通の家だ。物音や、ボールが転がるくらい、何だというのだろう。
派手なポルターガイストや不気味な姿の幽霊が現れるとかいうのなら、立派にお化け屋敷だけど。
そう思ったとたん、はっと、先日の浅香の死が蘇って、由紀子はぐっと息を飲んだ。
浅香の死がこの家の見えない住人と何か関係があるわけでもない。由紀子は必死にこの件から目をそらそうとした。
「実は今、旦那出張中なのよ。香代美連れて、そっちにお泊りしにいってもいーい」
ごく気軽に、奈津子は言った。
小学校に行ったら、こんなふうに気安くお休みすることはできない。親の気まぐれに子供を突き合わせることができるのは、保育所の間だけだ。
お母さんも姉ちゃんの事心配してるし、顔を見にいくがてら、何日かステイさせてよ、家事くらいするからさあ。
奈津子はそう言ってねだった。昔から一度こうと決めたら、それが叶うまでしつこいのが奈津子だった。
由紀子は苦笑いしながら、「部屋ならいっぱいあるからいいよ」と答えた。やったあ、と、電話の向こう側で、奈津子がはしゃいだ声をあげた。
そこに子供がいるのだろう。楽しそうな声で奈津子が、香代美、大昔のお屋敷にお泊りにいくよ、と言っているのが聞こえた。香代美がなんと答えたのかは分からなかったが、微かにけらけらと笑う声が耳に入って来た。
「じゃあ、早速、明日そっちに行くね。準備とかいらないから。こっちで全部支度してくから構えないでいてねー」
と、奈津子は言うと、電話を切った。
**
奈津子はフットワークが軽い。
思いついたらすぐに行動する。
由紀子は笑いながら携帯をテーブルに置いた。
そろそろ雪囲いを、と電話があり、その翌日に業者を伴って、風山氏がやって来た。
管理会社はこういう部分まで顔を出さなくてはならないのかと、由紀子は思った。なるほど、家主から管理を全て任されているのだから、雪囲いの配慮もしてくれるものなのかもしれないが、それにしても風山氏はこの家を気に掛け過ぎているような気がした。由紀子の中の常識では、こういう場合、庭師の業者だけを寄越し、管理会社の担当は顔は見せないのが普通だと思っている。
次に仕事があるのだろう。今日は風山氏はスーツを纏っていた。
紺の落ち着いたスーツ姿の風山氏は、それなりに貫禄がある。五十にはまだ手が届かないが、四十も半ばという年あいだろう。決して暇ではないはずだった。
庭では年老いた庭師が二人がかりで、せっせとあちこちの庭木の雪囲いをしている。普段ひっそりとした敷地に人がいると、それだけで藪家荘は活気ついたように思えた。
台所で庭師に出す茶と茶菓子を用意し、ついでに風山にもくつろいでもらった。
奥の座敷の縁のほうで、どうぞあがって休んでくださいと菓子の乗った盆を置いて呼びかけてから、由紀子は台所に戻った。風山氏が窮屈そうにスーツ姿でテーブル席につき、お茶を飲んでいる。途中になっている話の続きを、由紀子は聞きたかった。
「美味しいお茶ですね」
と、風山氏がほんわかと言い、それにつられて話題を忘れそうになったが、はっと気持ちを引き締めた。
由紀子の表情を見て、風山氏が一瞬、苦笑いをしたように思われた。ああ、話題を逸らそうとしていたんだ、と、由紀子は直感した。
「明治に建ったお屋敷ですから、そりゃあ、亡くなった人もいるでしょうし、お金持のおうちだから、色々あったんでしょうね」
お茶のおかわりを湯呑に注いで渡しながら、由紀子は話を促した。
「風山さん、この家のこと詳しいでしょう。ここだけの話、藪家荘で療養することになった時点で、この家は良くないって言われたんです」
由紀子にしては思い切った言い方だった。
言ってしまってから、どぎまぎとして風山を見た。風山はごく普通の顔で、旨そうに茶をすすり、ついでに茶菓子の最中を取った。
「良くないって。幽霊でも出るとか言われたんですか」
風山の口調には茶化すような響きがあった。由紀子はそれが悲しく思われた。
「いいえ、詳しくは何も。ただ、良くない噂があるよって、それだけ」
風山は最中を飲み下してから、茶を一気に啜った。由紀子の顔色を伺うような様子だった。何かあるんですよね、教えてください、と、由紀子は小さく呟くように言った。それでも黙っている風山に、由紀子は思い切って言った。
「実は、へんなこともあって。ゆりかごの軋む音が三階から聞こえてきているみたいだし、ありもしないところからボールが転がって来るとか、子供の声が聞こえて来るとか。だから、余計に思うんです。このおうち」
なにか、あったんじゃないかって。
由紀子はじっと風山を見た。
ここで、風山が神経のせいですとか、通院予定は今度いつですとか言い出したら、もう二度と風山には頼らない心づもりだった。
風山も、どう応えるべきか逡巡しているようだったが、やがて庭師が一通りの作業を終えたらしく、風山さん風山さんと大声で呼ぶ声が聞こえてきて、のそりと立ち上がった。渋い顔をしていた。
「家主からは、必要以上に何でも言うなと念を押されているんですが」
ついに、風山は言葉を吐いた。
由紀子はぐっと息をつめた。やはり、なにかがあるらしかった。
「詳しいことを知りたかったら、社までお越しください。資料をお見せしましょう」
ここでわたしが語ったところで、おかしなふうに伝わりかねない。そうなったら、余計に家主さんの思いを裏切ることになりますから。
風山はそう言うと、すっと台所を出た。庭師と話をしに行くのだろう。
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風山と庭師が藪家荘を去り、湯呑や菓子皿を片づけながら、由紀子は考えた。
確かにこの家にはなにかいわくがあるのだろうが、風山がここですぐに語らなかったのはどうしてだろう。
(資料って、なんだろう)
もしかしたら、家主の藪家氏から口止めをされているのかもしれない。由紀子からそういう疑問が出ていることを、いったん家主に報告してから打ち明け話をしてくれるつもりなのだろうか。
或いは、口先でぺらぺらと語ってしまったら、軽く受け止められてしまい、怪談として面白おかしく由紀子の口から外部に漏れることを恐れたのかもしれない。
由紀子には、後者として受け取れた。
(資料があるほどの出来事がここであったのなら、どこかに記録が残っているかもしれない)
町には古い図書館があるはずだ。
山を降り、町中に出てしばらく車を走らすと、ツタの張ったコンクリの建物が見えてくる。町立図書館と、重々しい書でかきつけられた看板がかかっており、陰気な照明が窓から漏れている。
何度か買い出しに出かけた時、由紀子は図書館の前を車で通っていた。
町の歴史なら、図書館で調べることができるだろう。
藪家荘は大きな屋敷だし、とても古い建造物だ。かつてここに住んでいた人々は、町の歴史にも幾分かは貢献したはずだから、何らかの記録が残っているかもしれない。
食器を洗ってしまってから、テーブルでお茶を飲んだ。
きい、き。
ゆりかごが軋むような音が、静かに響いてくる。由紀子は目を閉じた。きい、き。この音を聞いていると、下腹がうずくような気がした。かつて、由紀子の胎内のゆりかごに宿った小さな命は、もうとっくの昔に体から流れ落ち、此の世から消え去っている。だけど、その切ない軋み音を聞いていると、あの時の、異物が体にいる感触が蘇るように思うのだった。
いつのまにか由紀子は、うとうとしていた。
飲みかけの湯呑を置いて、テーブルにつっぷしていた。はっと気づいた時、携帯が着信音をけたたましく立てていた。由紀子は起き上がると、携帯を取った。妹の奈津子からだった。
「姉ちゃん、そっちどうおー。お化け屋敷に住んだって聞いてるんだけど」
ぱっと大輪の夏の花が咲くような元気の良い声が耳に飛び込んだ。
奈津子は由紀子より二つ年下だが、由紀子より先に結婚している。来年小学校にあがる女の子が一人いて、由紀子が実家でうだうだと暮らしている間、よく娘を連れて遊びに来ていた。
「お化け屋敷ってなによ。普通の家よ」
と、由紀子は言い返した。
そうだ普通の家だ。物音や、ボールが転がるくらい、何だというのだろう。
派手なポルターガイストや不気味な姿の幽霊が現れるとかいうのなら、立派にお化け屋敷だけど。
そう思ったとたん、はっと、先日の浅香の死が蘇って、由紀子はぐっと息を飲んだ。
浅香の死がこの家の見えない住人と何か関係があるわけでもない。由紀子は必死にこの件から目をそらそうとした。
「実は今、旦那出張中なのよ。香代美連れて、そっちにお泊りしにいってもいーい」
ごく気軽に、奈津子は言った。
小学校に行ったら、こんなふうに気安くお休みすることはできない。親の気まぐれに子供を突き合わせることができるのは、保育所の間だけだ。
お母さんも姉ちゃんの事心配してるし、顔を見にいくがてら、何日かステイさせてよ、家事くらいするからさあ。
奈津子はそう言ってねだった。昔から一度こうと決めたら、それが叶うまでしつこいのが奈津子だった。
由紀子は苦笑いしながら、「部屋ならいっぱいあるからいいよ」と答えた。やったあ、と、電話の向こう側で、奈津子がはしゃいだ声をあげた。
そこに子供がいるのだろう。楽しそうな声で奈津子が、香代美、大昔のお屋敷にお泊りにいくよ、と言っているのが聞こえた。香代美がなんと答えたのかは分からなかったが、微かにけらけらと笑う声が耳に入って来た。
「じゃあ、早速、明日そっちに行くね。準備とかいらないから。こっちで全部支度してくから構えないでいてねー」
と、奈津子は言うと、電話を切った。
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思いついたらすぐに行動する。
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