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森の妖精
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「うわぁぁぁあ!!またやってしまったぁぁぁあ!!」
頭を抱えて転げ回る僕。
何て事をしてしまったのかと言う自責の念に苛まれている最中だ。
「(なんだよこれぇぇぇ!!完全に化け物じゃないか僕!!)」
ある人は言う、『精神は肉体に引かれる』と。
僕がアンデッドとして転生してしまったがために、スキルだけではなく種族の特性として【食肉衝動】とでも言うべきモノが備わっているのではないか。
「はぁ…まあいいか…」
───しかし最も恐怖すべき事は、生き物のグロテスクな死を目撃して「まあいいか」で片付けてしまった自分の精神状態にあったことを、この時の僕はまだ知らない───
「あ、そうだ。顔とか治ってんのかな」
水辺に向かい、写った自分の顔を眺める。
顔立ちは生前とほぼ変わらないらしい。
低めの鼻、二重の睫毛が長い目、ほっそりとした線の細い顔立ち。
髪は短髪で、色は黒だ。
「…顔でも洗うか。」
いや、体ごと洗っちまおう。
僕は風呂が好きなんだ!!
着ているものを全て脱ぎ捨て、川にダイブした。
体を擦ると、垢は出なかったが泥や体液の汚れが流れて消えていく。
「おお~キモチィー!」
ワシャワシャと水中で頭を濯ぐ。
「くぅーっ!!こいつぁ石鹸が欲しいとこだぜ!!」
「…どうぞ…」
「お、ありがと……え″」
そんなことを呟くと、初めからそこに居たかのように、裸の女の子が僕に石鹸を渡してきた。
女の子は特に思うところも無いようで、僕が石鹸を受けとると、タオルで自分の体を洗い始めた。
「え!?ちょちょ、えぇ!?」
慌てて背中を向ける。
「…何…?」
「いやそんな風に首をかしげられても…」
いや、おちけつおちけつ…って落ち着けるかァーーーーッ!!!
彼女いない歴=年齢、恋人は右手と画面の向こうにいる女の子だけの俺が!!出来るわけ無いやろ!!
おっと…クールになれカズ…先ずは名前を…
「き、君の名前は何て言うにょ?」
はい噛んだーー噛みましたー!!
「…クラリス…」
…え?それだけ?
「…どこに住んでるの?」
よし、噛まなかったぞ。
「…すぐそこの…家…です…」
「そ、そうなんだ~…はは…」
だからそれだけかよ!?
話つづかねぇぇぇ!?
「…あな、たは…?」
「え?僕?」
おお、やっと話を振ってくれた…
「えっと…僕はカズって言います。一人で旅をしてて…はい。えっと…そんな感じです…。」
はい限界ーーっ!!
話振ってくれってお願いしたのに続けらんなくてすいませんでしたァァァァァア!!
二人とも黙りこくってしまう。
「……」
僕はちらりと彼女に目を向けた。
新雪のように透き通った白い肌、しっとりと濡れた金糸の髪、深い紫紺の瞳。
彫刻のような完璧なプロポーション。
前の世界では先ずお目にかかれないような美女、彼女を形容するとすれば、それは『妖精』と言う言葉を置いて他に無いだろう。
尖った耳もまた可愛らし…耳?
も、もしやこの子はエルフっ娘なのか…!?
「…冒険者…ですか?」
「え?あっ…冒険者…では無いです。」
そして冒険者と言う職業もあるのか。
なるっきゃ無いな。
「……」
再びの沈黙。
髪の毛を泡立てていると、いつの間にかアフロのようになっていた。
「…石鹸…返して…ください…」
「あ、はいはい石鹸ね…」
渡そうとすると、ぬめりのせいか僕の手から石鹸がすっぽ抜けてしまう。
「あわわわ!!」
流されていく石鹸を追い掛け手を必死に伸ばす。
「ふぅ…ヒヤヒヤしたぜ…はい。」
今度こそしっかり手渡した。
「…ありが…とう…です…」
そしてまた沈黙。
どのタイミングで川から上がれば良いのか分からない。
何も言わずに上がったら失礼だし…かといってはいさようなら、もなんか寂しいしな~…
と、初対面の女の子にありもしない運命を感じてしまう童貞丸出しフルスロットルの思考。
「あの」
僕はその言葉でハッと彼女を見た。
「今晩…どこに泊まる…とか、ある…?」
──バクンと跳ね上がる心臓。
「え?あっ…その、適当な木のうろとかで寝ようかなって…」
こっ、このパティーンはもしや…
「私の…家…きます…か?」
キタァァァァア!!
人生初の女の子からのお誘い。
僕は考えもせずに
「是非お願いします。」
と答えていた。
頭を抱えて転げ回る僕。
何て事をしてしまったのかと言う自責の念に苛まれている最中だ。
「(なんだよこれぇぇぇ!!完全に化け物じゃないか僕!!)」
ある人は言う、『精神は肉体に引かれる』と。
僕がアンデッドとして転生してしまったがために、スキルだけではなく種族の特性として【食肉衝動】とでも言うべきモノが備わっているのではないか。
「はぁ…まあいいか…」
───しかし最も恐怖すべき事は、生き物のグロテスクな死を目撃して「まあいいか」で片付けてしまった自分の精神状態にあったことを、この時の僕はまだ知らない───
「あ、そうだ。顔とか治ってんのかな」
水辺に向かい、写った自分の顔を眺める。
顔立ちは生前とほぼ変わらないらしい。
低めの鼻、二重の睫毛が長い目、ほっそりとした線の細い顔立ち。
髪は短髪で、色は黒だ。
「…顔でも洗うか。」
いや、体ごと洗っちまおう。
僕は風呂が好きなんだ!!
着ているものを全て脱ぎ捨て、川にダイブした。
体を擦ると、垢は出なかったが泥や体液の汚れが流れて消えていく。
「おお~キモチィー!」
ワシャワシャと水中で頭を濯ぐ。
「くぅーっ!!こいつぁ石鹸が欲しいとこだぜ!!」
「…どうぞ…」
「お、ありがと……え″」
そんなことを呟くと、初めからそこに居たかのように、裸の女の子が僕に石鹸を渡してきた。
女の子は特に思うところも無いようで、僕が石鹸を受けとると、タオルで自分の体を洗い始めた。
「え!?ちょちょ、えぇ!?」
慌てて背中を向ける。
「…何…?」
「いやそんな風に首をかしげられても…」
いや、おちけつおちけつ…って落ち着けるかァーーーーッ!!!
彼女いない歴=年齢、恋人は右手と画面の向こうにいる女の子だけの俺が!!出来るわけ無いやろ!!
おっと…クールになれカズ…先ずは名前を…
「き、君の名前は何て言うにょ?」
はい噛んだーー噛みましたー!!
「…クラリス…」
…え?それだけ?
「…どこに住んでるの?」
よし、噛まなかったぞ。
「…すぐそこの…家…です…」
「そ、そうなんだ~…はは…」
だからそれだけかよ!?
話つづかねぇぇぇ!?
「…あな、たは…?」
「え?僕?」
おお、やっと話を振ってくれた…
「えっと…僕はカズって言います。一人で旅をしてて…はい。えっと…そんな感じです…。」
はい限界ーーっ!!
話振ってくれってお願いしたのに続けらんなくてすいませんでしたァァァァァア!!
二人とも黙りこくってしまう。
「……」
僕はちらりと彼女に目を向けた。
新雪のように透き通った白い肌、しっとりと濡れた金糸の髪、深い紫紺の瞳。
彫刻のような完璧なプロポーション。
前の世界では先ずお目にかかれないような美女、彼女を形容するとすれば、それは『妖精』と言う言葉を置いて他に無いだろう。
尖った耳もまた可愛らし…耳?
も、もしやこの子はエルフっ娘なのか…!?
「…冒険者…ですか?」
「え?あっ…冒険者…では無いです。」
そして冒険者と言う職業もあるのか。
なるっきゃ無いな。
「……」
再びの沈黙。
髪の毛を泡立てていると、いつの間にかアフロのようになっていた。
「…石鹸…返して…ください…」
「あ、はいはい石鹸ね…」
渡そうとすると、ぬめりのせいか僕の手から石鹸がすっぽ抜けてしまう。
「あわわわ!!」
流されていく石鹸を追い掛け手を必死に伸ばす。
「ふぅ…ヒヤヒヤしたぜ…はい。」
今度こそしっかり手渡した。
「…ありが…とう…です…」
そしてまた沈黙。
どのタイミングで川から上がれば良いのか分からない。
何も言わずに上がったら失礼だし…かといってはいさようなら、もなんか寂しいしな~…
と、初対面の女の子にありもしない運命を感じてしまう童貞丸出しフルスロットルの思考。
「あの」
僕はその言葉でハッと彼女を見た。
「今晩…どこに泊まる…とか、ある…?」
──バクンと跳ね上がる心臓。
「え?あっ…その、適当な木のうろとかで寝ようかなって…」
こっ、このパティーンはもしや…
「私の…家…きます…か?」
キタァァァァア!!
人生初の女の子からのお誘い。
僕は考えもせずに
「是非お願いします。」
と答えていた。
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